発展
※声優×マネージャー1
今日は居間流行の乙ゲーの収録だった。
舞台は修学旅行で行くことになった南の島。あるタイプの違う四人の美形男子たちに攻められながらバカンス気分を楽しんでいく、という攻略ゲームだ。
『俺は君が好きだ』
俺はその四人の中で一番攻略が難しい(らしい)“浩史”の役を演じている。
聞けば性格も俺に似てるって言うじゃないか、これはやりやすい。
『だから君も俺を好きになってよ』
理系を得意とするソイツは容姿は良いが中身は最悪な八方美人な設定で、欲しいものを手に入れるには卑怯な手を使うくせに主人公に怒られると簡単に縮こまる。その上、変態らしい。
あれ、これって本当に俺に似てるの?俺って、こんなん?
『俺だけを好きでいてよ』
……まあ、いっか。
「帰ろっか」
そう言って今日も滞りなく仕事を終えて後ろを振り向けば、愛しい愛しい恋人が自分を無表情で見ていた。
いつも通りの反応だったけど、伊達に何年も付き合っていない彼女の僅かに見えた表情の変化が嬉しくて、幸せを噛みしめた。
波江の手を取って、エレベーターに乗り込むと我慢できなくなって壁に彼女の体を押しつけた。
眉を顰めた彼女になにか文句を言われる前に言った。
「キスしてもいい?」
「…そう、馬鹿なのね」
わあ、馬鹿って言われちゃった。そんでもって物凄い可哀想なものを見る目で見られてるね…と、まあこんな感じに俺の彼女はクールな美人さんです。
辛口なとこもすごい可愛く見えちゃう俺ってやばいね。そんだけ波江に惚れてるんだ。
なんだか誇らしいや。