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もみのき そのみを かざりなさい

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 がっくりうなだれるリリーの前で、リーマスはにこにこと笑っている。ツッコミどころ満載の一連の発言に、それをひとつひとつ正していきたくはあったのだけれど、彼の笑顔を前にその気持ちは風船がしぼむようにしゅるしゅると音を立てて萎えた。
 
「あなたがそれでいいなら、いいのよ」

 絞り出すようにようやくそう言うと、リーマスは頷いて、もちろん、と言った。
 リリーはソファに足を上げ、きゅっと膝を抱いた。

「覚えていてね」

 彼が穏やかな表情でいるから、リリーもそれにふさわしい口調を選ぼうと思うのだけれど、ついつい語感がきつくなってしまう。それを自覚して、彼女は振り払うようにちいさく頭を振った。

「覚えていてねリーマス。私、あなたのことがとても好きよ」

 彼はリリーと同じようにソファに足を上げた。

「うん。僕もリリーのことが好きだよ」
「これからもずっと好き」
「うん」
「泣かされるようなことがあったら、真っ先に私に言うのよ」
「うん、覚えておく」
「死んだ方がましと思うような目に遭わせてやるから」
「あー、うん、期待してる」
「しあわせになるのよ」

 彼は声をあげて笑い、それから、うん、と言った。

「リリーもしあわせになるんだよ」
「もちろん。なるわよ。負けないわよ」

 膝を抱いたまま、顔を見合わせる。髪が触れ合うほどの距離にいながら、彼女と彼は指先さえ触れ合わせることもなく、ただソファで毛布にくるまる。雪に凛と凍る空気を吸い込んで、遠くの星に思いをはせる。ひときわ明るい惑星は数千年の時を超えて今夜も光る。昔読んだ絵本さながら。彼は彼女の隣で笑う。強く優しい大切な、大切な、ともだち。
 
「クリスマスの朝に、頭にリボン結んでツリーの下に立ってるような真似しないでね。そんなことしてたら、誰より先に私があなたを部屋に連れて帰っちゃうから」
「胸にプレート下げて宛名を書いておけばいいって」
「誰がそんなバカなこと…あ、いいわ、聞きたくない」
「あはは、やっぱりバカなことだよねえ、僕もちょっとそう思ったんだ」
「ちょっと!?ちからいっぱいバカよ!あなたも気付きなさいよ!」

 リリーはぷりぷりと怒り、リーマスはおかしそうに笑った。博士たちが見つけた星は、今夜は誰を導くのだろう。天にみさかえ、地には平和。敬虔な気持ちなどひとつもないけれど、祈りを灯火に右手を掲げる。どうか彼の行く手に明るい指標がありますように。彼が笑っていてくれますように。

 クリスマスプレゼント、リリーの分はもう用意してあるよ、とリーマスが言う。頭にリボン結んで立っててよ、とリリーが言うと、そんなものより喜んでもらえると思うよ、と彼は言った。何かしら。それは秘密でしょ。いいじゃない教えなさいよ。ダメだよ、当日のお楽しみ。わかった、楽しみにしてる。膝を抱いて笑い合うと、毛布の中はそれだけで暖かい。窓の向こうで星が回る。雪明かりに淡くほどける夜は、奇跡の形をふたりの胸に宿らせる。
 あなたのことがとてもすき、と、口に出さずにそっと思う。彼が彼女のベターハーフではないことはずいぶん早くから認識していたし、また彼にとって自分がそうでないことも自覚していた。だから彼のしあわせを祈ることに少しの異存もないのだけれど。

 よりによって、なぜあの男。

 その思いが、拭えないわけではない。
 
 そりゃ、顔は確かにちょっときれいめなのは認めるけれど。
 そのことがリーマスの判断に少しの影響も与えていないことが分かるから、
 余計に納得がいかないじゃないの。

 口に出さずにそっと思ったはずだったのだけれど、表情には出てしまったのか、隣でリーマスがくすりと笑った。何がおかしいの。別に、何も?彼は笑う。窓の向こうで星が回る。

 
 あなたがそれでいいなら、いいのよ。ほんとうよ。