もみのき そのみを かざりなさい
彼の声は、嫌いというわけでは、ない。
では、毛布を引き剥がそうとする彼の声、は?
ふるふるとリーマスは頭を振る。そんな難しい問題、簡単に答えを口にはできないよ。
だってまだ眠いし、寒いし。と誰にも聞こえるはずのない言い訳を繰り返す。
信用ならないのはいつだって、彼ではなく、自分自身なのだ。
油断すると歩きながらでも瞼が閉じてくる。そういえば昨日は壁に頭をぶつけたな、と思い返すリーマスの腕を、シリウスが引っ張る。何事かと顔を上げると、目の前には大きなクリスマスツリー。
「起きろ。」
「はい。」
その謎は森の奥深くに隠しておこう、とリーマスは思う。
賢いフクロウがどこからかやってきて、その謎をあっさりと解いてしまっても、そうしておけば雪解けまでは他の誰にも見つからない。
やっぱり往生際が悪いのかなぁ僕は、と思うと、なんだかおかしくなって、リーマスはふふっとちいさく笑った。シリウスがそれを見咎める。まだ寝ぼけてるんだろう、と言うから、リーマスは笑いながら答えた。
うん、まだ寝ぼけてる。
作品名:もみのき そのみを かざりなさい 作家名:雀居