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こらぼでほすと アッシー2

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 軍人では足がつく。だから、民間人から登用したのだ。それに訓練を施してしまえば、軍人と大差はない。プラントのような統制された国家から登用されていないのは、そこから追跡されることを忌避したからだろう。だから、コーディネーターはいないのだ。
「・・・・こんなに無力になるとは思わなかった。戻りたいのに戻れない。」
 ぽつりと漏らされた言葉に、ハイネの胸は痛む。自分が、こうなったら、かなり落ち込むだろう。けど、そう思わせてはいけない。
「無力? おまえさんの抜群の家事能力は、そのままあるじゃないか。どこへでも嫁にいけるぜ? 」
「三蔵さんが貰ってくれたから、あそこでいい。」
「俺が貰ってやろうか? 」
「ノンケのくせに何言ってやがる? 」
 へっと鼻で笑って、ロックオンは、「ありがとう。」 と、微笑んで目を閉じた。気落ちさせない配慮を感じて、そう言ったのだ。人の気遣いに敏感な親猫は、とても厄介だ、と、ハイネが苦笑したのは言うまでもない。



 それを思い出していたら、鷹が、「おまえも、その口か? 」 と、問う。ママという存在が欲しい子供か? という意味だから、ハイネは笑い飛ばす。
「無茶言うな、鷹さん。俺は、それほどガキじゃない。」
「じゃあ、年上のお兄さんとして、支えてやるんだな。抱擁は、俺が受け持つけどな。」
「あんた、いつか刺されるよな? その現場を目撃したいぜ。」
「まあ、それはないな。俺は、落としたりしてないから。・・・ママニャンのことは、じじいーずでもフォローは考えているが、同年代組も参加してくれ。」
 親猫の体調については、スタッフは説明を受けている。気付かせないように、というのが、基本だから、それとなく、誰かが張り付いているのが望ましい。トダカが、お里と称して、ロックオンを家に滞在させているのも、その一環だ。
「間男としては、そこいらは、オーナーからも指示されているよ。しばらくは、張り付くつもりだ。」
「そうしてくれ。どうも、独りにしておくと、碌なことをしない。」
 そうなるのが、わかるだけに優しくしてやりたいんだよなあ、と、鷹は言うのだが、別の意味を含んでいそうな言葉に邪推できてしまうのは、鷹の日頃の行いの所為だろう。
「しばらくは、間男稼業に精を出すから、ラボのほうはサボらせてもらうんで、よろしく。」
「はいはい、そっちは、俺と虎さんで、どうにかするから、おまえは間男してなさい。」
 いつもは、MSの整備関係がハイネの担当なのだが、そこいらは、虎と鷹、ダコスタでやっておくことになった。ハイネは、基本的に遊撃担当だから、こういう場合が多々あるから、シフトは問題ない。
「ディアッカが、俺の代わりをしてくれるって連絡があった。近いうちに降りてくる。」
「そりゃ有り難いな。今、独立治安維持部隊の情報収集で、どうしても人手が欲しいとこだった。」
「なら、イザークも誘わせるよ。あいつらも、そっちには興味があるだろう。」
 少しずつ連邦の内部で組織されていた治安維持部隊が活動を開始している。どうも、まともではないという噂が流れていて、現在、『吉祥富貴』でも事実確認をしている最中だ。もちろん、治安を維持するための武力衝突は仕方のないことだが、それだけではないらしいのだ。その辺りを、キラが危惧している。使用する火器の威力が生半可ではないからだ。
「厄介な奴らが台頭してきた。あいつら、せつニャンたちと確実にバッティングするだろうな。」
 組織が再興されて、紛争が起こったら、また、武力介入は行われる。その際に、敵対するのは、この治安維持部隊であるのは間違いない。だから、そのためにも、情報収集を怠るわけにはいかない。下手をすれば、こちらへも敵対行為に出て来るかもしれないからだ。
「うちのことはも見て見ぬフリのつもりだろう。さすがに、うちへ攻め込むほど連邦もバカじゃないだろう。」
「それは、まだわからんな。・・・・こちらの火力だけを考えたら、優勢なのは、あちらということになる。」
 その会話に参入してきたのは、虎だ。背後にはダコスタもいる。どうやら、趣味のコーヒーブレンドをやってきたらしい。いい香りのコーヒーが虎から渡された。
「火力だけならな。」
「連邦の現在のトップは、かなり強硬派だ。傘下へ入れと言ってくる可能性はある。」
「でも、隊長。うちには、オーヴやプラントが控えているのも知られているはずです。さすがに、非加盟国へ強制は難しいんじゃないですか? 」
 ダコスタが、まともな意見をぶつけてくる。連邦に参加していない、または、参加すら認められない国というのが存在する。オーヴやプラントなど、コーディネーターが住んでいる国は、ほとんどが参加していないし、中東は連邦側から参加を認められなかった。それらに対しての強制力というのは、連邦のトップといえどない。
「残念ながら、うちは国家ではないからな。ただの歌姫の私的組織という括りに入る。そうなると、逆に、連邦に盾突くテロリストという括りには簡単に入れられるわけだ。情報操作すれば、証拠を捏造するなんて訳も造作もない。それをやられたら、オーヴやプラントは俺たちを切り捨てるしかなくなる。」
 そうしなければ、反逆国ということで、非難を浴びるからだ。自国の人間からも、突き上げられることは確実だ。そうならないためにも、今は水面下で動くしかない。こちらへ意識を向けられては困るからだ。
「キラが、そこいらの調整はやってるはずだ。うちへ噛み付く前に、どこかで重大な事件が起こる。だから、今のところは安全だがな。」
 続けて、鷹も虎に同意するような言葉を吐く。天下の歌姫様だから、と、胡坐を掻いていられるわけではない。気楽に考えてると痛い目をみるぞ、と、虎が注意するようにダコスタに視線を送る。
「まあ、ダコスタ、そう深刻になるな。そういうことになったら、エターナルで逃亡すれば済むことだ。」
 そこへ、ハイネが助け舟だ。
「プラントですね。」
「ああ、できれば避けたい事態だが、その段取りもしておくか。」
 なんだか忙しいなあ、と、ハイネは苦笑する。『吉祥富貴』は、スタッフも少数精鋭だから、何役も仕事をこなしている。
「そっちは、アスランとやるから、おまえは、ママのほうを監視しとけ、ハイネ。俺は、あれが寝込むと気になって仕方がない。」
 アイシャも心配するからな、と、虎が、ハイネの仕事を、アスランに振り分けた。虎も、ロックオンのことは心配している。先の三ヶ月の状態が酷かったから、余計に気になるのだろう。
「ヘリのほうは、アイシャがやると言ってたから、運転手も返上だ。」
「え? そこまで取り上げられたら、俺のやることが少なすぎないか? 虎さん。」
「バカ言え、あのグダグダボコボコのママの相手は大変なんだぞ? おまえも引き摺られて、うつ病になるなよ? ハイネ。」
 上っ面じゃないとこは、真っ暗だからな、と、虎に言われて、ハイネも頷いた。あの外面は、本当に、よくできた仮面だ。どういう心理状態でも、ほとんど、穏やかな顔はしていられるのだから、根性はあると思う。ただ、ぽつりと漏らされた本音は、確かに引き摺られてブルーになりそうなものだったのは事実だ。
「そこいらはわかってるつもりだ。」