箱庭
幼い頃、イギリスは一人ぼっちだった。
兄たちには疎ましがられ、隣国とは喧嘩ばかりで、優しくされたこともなければ、可愛がってもらった記憶もなかった。
妖精たちや動物たちはいつも傍にいてくれた。
だから寂しくないはないのだとイギリスはそう言っていたが、それがただの強がりで、本当は寂しいのだと言うことは、認めたくはなかったが幼いイギリス自身がよくわかっていた。
弟にはそんな思いはさせたくはない。
だからイギリスは忙しい中時間を作っては弟に会いに新大陸を訪れた。
イギリスが新大陸を訪れると弟は、来てくれたんだね!うれしいよ、とはじけるような笑顔を見せてくれる。
その笑顔を見たくて、弟に寂しい思いをさせたくなくて、イギリスはたくさんのお土産と、とっておきの紅茶をもって弟に会いに行くのだった。
「うわぁ、イギリス!来てくれたんだね!!」
久しぶりに訪れた新大陸では、可愛い弟が変わらない笑顔でイギリスを迎えてくれた。イギリスに飛び付く、というオプション付きで。
思わぬ衝撃にイギリスは思わずよろめいた。しばらく会わないうちに弟はまた成長したようだった。
「なかなか来られなくてごめんな。元気だったか?」
イギリスは弟に向かって笑いかけた。不思議と弟に対しては自然と笑顔になれる。
「元気だぞ!会いに来てくれるだけでうれしいよ。」
弟はとても素直で優しい。ヨーロッパでは近隣の国との付き合いから荒んだ気持ちになることの多いイギリスだったが、弟といればそんな気持ちは忘れられた。
「お前に会えて俺も嬉しいよ。今回はいつもより少し長く居られそうなんだ。たくさん遊んでやるからな。」
「本当!?向こうにきれいな花が咲いてるんだ。一緒に見に行こうよ。あと川に魚がたくさんいるから魚とりがしたいんだ。お茶も一緒にしてくれる?そうだ、寝る時に本を読んでよ。朝まで一緒に寝てくれないといやなんだぞ。」
次々にお願いを言ってくる弟を見て、ずいぶんと寂しい思いをさせてしまったらしい、とイギリスは思った。弟のお願いは何でもない事ばかりだったが、いつもは時間がなくてしてやれないことばかりだった。弟が願うことはできるだけ叶えてやりたいとイギリスは思う。
「ああ、わかったよ。全部やろうな。とりあえずお茶にしないか?お前の大好きな紅茶を持って来たんだ。」
「うん!さっきナニーがクッキーを焼いてくれたんだ。明日はイギリスが作ってね。イギリスの作ったお菓子が食べたいんだ。」
「よし、明日はスコーンを焼いてやるよ。美味しいジャムもあるぞ。」
「うわぁい!イギリス大好きだぞ!」
「俺もだよ。さあ、お茶にするぞ。手を洗ってこいよ。」
「うん!」
芳醇な紅茶の香りに、甘いクッキーの匂い。弟の笑顔。
イギリスの求めるものがそこにあった。