雪解け
「愛してるぜ、真田幸村。アンタの熱い魂が俺を狂わせやがる」
顔を朱に染める幸村のうるんだ瞳が售眼を映す。
「政宗殿・・・。某も、貴殿のことを・・・」
分かっていると言わんばかりに、どちらからともなく目を閉じ、唇を重ねた。否。唇が重なろうとした時、幸村は男を突き飛ばしていた。
「いってぇ・・・」
「違う・・・。やはり政宗殿ではござらぬ」
「Ah?どこが違う?見目変わらねーだろ」
「違うのだ。言っていること、仕草、すべて政宗殿でござる。しかし、政宗殿の香りが、香なのか、それとも政宗殿自身のものなのかわからぬが・・・いつも某の鼻腔をかする香りがしないのだ」
「香り、か。そうだな」
售眼の男は一瞬、黒い靄のようなものに包まれた。次の瞬間現れたのは、幸村の従者である佐助だった。
「俺様に香りがついちゃ仕事ができないんでね。それに、そこまでやったら旦那が溺れちゃうでしょ」
「・・・うむ。俺の気を紛らわすためとはいえ、何度もすまぬ、佐助。だが、もうしないでくれ。たとえ見目変わらずとも、佐助は佐助でござった。誰にも政宗殿の代わりなど出来ぬ。佐助に慰められるたびにここが空しくなるのだ」
言いながら、幸村は自身の胸の前で拳を作った。
「そう、分かった。まぁ旦那のためってのもあったけど・・・俺様のためでもあったんだけどね」
最後の一言は幸村に届かないほど小さかった。幸村は首をかしげた。
「どうした、佐助?」
「いや、何も。・・・俺様は旦那に幸せになってもらいたいだけだよ」
笑みを浮かべ、幸村の肩に手を置くと、何枚かの黒い羽根を残して佐助は姿を消した。
「幸せ、か。政宗殿・・・逢いとぉござる」
顔を朱に染める幸村のうるんだ瞳が售眼を映す。
「政宗殿・・・。某も、貴殿のことを・・・」
分かっていると言わんばかりに、どちらからともなく目を閉じ、唇を重ねた。否。唇が重なろうとした時、幸村は男を突き飛ばしていた。
「いってぇ・・・」
「違う・・・。やはり政宗殿ではござらぬ」
「Ah?どこが違う?見目変わらねーだろ」
「違うのだ。言っていること、仕草、すべて政宗殿でござる。しかし、政宗殿の香りが、香なのか、それとも政宗殿自身のものなのかわからぬが・・・いつも某の鼻腔をかする香りがしないのだ」
「香り、か。そうだな」
售眼の男は一瞬、黒い靄のようなものに包まれた。次の瞬間現れたのは、幸村の従者である佐助だった。
「俺様に香りがついちゃ仕事ができないんでね。それに、そこまでやったら旦那が溺れちゃうでしょ」
「・・・うむ。俺の気を紛らわすためとはいえ、何度もすまぬ、佐助。だが、もうしないでくれ。たとえ見目変わらずとも、佐助は佐助でござった。誰にも政宗殿の代わりなど出来ぬ。佐助に慰められるたびにここが空しくなるのだ」
言いながら、幸村は自身の胸の前で拳を作った。
「そう、分かった。まぁ旦那のためってのもあったけど・・・俺様のためでもあったんだけどね」
最後の一言は幸村に届かないほど小さかった。幸村は首をかしげた。
「どうした、佐助?」
「いや、何も。・・・俺様は旦那に幸せになってもらいたいだけだよ」
笑みを浮かべ、幸村の肩に手を置くと、何枚かの黒い羽根を残して佐助は姿を消した。
「幸せ、か。政宗殿・・・逢いとぉござる」