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こらぼでほすと アッシー3

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甘えておけ、というハイネからの指示に、年少組も従っているが、今のところは見舞いに行くぐらいしかすることがない。悟空も休みの日に、本宅へ出かけるぐらいのことで、過ごしている。
「それで、繕い物に呼び出すって、どういうことなんですかね? 三蔵。」
「しょうがねぇーだろ? そんなカギ裂き、俺にどうこうできるわけがねぇ。」
 仕事着の黒の袈裟の袖に、大きなカギ裂きができている。ちょいと、バイクのハンドルにひっかかったのを強引に引っ張ったら、そうなったのだが、さすがに、それを着ているわけにもいかないから、繕い物ができる八戒を休日に呼び出したのだ。
「捨てりゃいいだろ? 」
 女房への呼び出しに、同行してきた悟浄が呆れたように吐き出す。
「こりゃ、まだ新品なんだよ。」
 この間、新調した袈裟だから捨てるのは、さすがに勿体無いと、坊主でも思うらしい。
「目立たない程度に繕っておきますよ。それより、なんだか、雑然としてますね。ロックオンがダウンしてから、まだ一ヶ月も経たないっていうのに。」
 ロックオンがフェルトと一時的に戻ってきていた時は、綺麗に片付いていたが、それからトダカ家に、お里帰りしてから、二週間ほどのことだ。その間に、寺のほうは、かなり荒れている。以前の寺の状態に戻った、というのが正しいのかもしれない。
「俺が、あそこまでマメだったら気持ち悪いと思わないか? 八戒。」
「確かに、気持ち悪いです。」
「けど、三蔵、あんまりこき使うのは感心しないぜ? ママニャン、あんまりよくないんだろ? 」
 悟浄たちも、先日、親猫の体調については説明されている。少しずつ弱っていくから、それを気付かせないようにフォローしてくれ、とは言われているのだ。
「何も命令したわけじゃない。勝手にやってんだ。」
 三蔵が、何か言う前に、どんどん掃除したり片付けてしまうので、こき使っているわけではない。動くな、とは言えないから、適度に動いてもらうのはいい。動かないと、余計なことを考えるから、ある程度、疲れて眠れる労働は必要ではあるのだ。
「そこいらの匙加減が難しいとこですけどね。・・・はい、これでいかがです? 」
 さくさくっとカギ裂きを繕って、八戒が差し出す。近寄れば、縫い目はわかるが、普通にしていればわからないというところまで復元されている。
「今夜は、こっちで食べますよ。悟空にも栄養補給させないといけませんからね。」
 ただいま、本宅に出向いているが夕方には戻って来る悟空のことを考えて、八戒が夕飯の作成を宣言する。ある程度、ロックオンが作り置きをしていたらしいので、それで賄っているが、どうしても生野菜は不足する。そこいらの補給は、八戒の仕事だ。以前は、頻繁に、こちらで一緒に食べていたが、ロックオンが住むようになって激減した。そういう意味では、八戒の母親業というのは減っているのだ。
「何かリクエストあります? 」
「酒のツマミを頼む。おい、カッパ、買出しに行くなら、ビールをケースで調達してこい。そろそろ切れる。」
「わかった。エビスでいいか? 」
「おう、それで頼む。」
 お前、本当に聖職者か? というツッコミは不要だ。本当に、某宗教界トップクラスの坊主であることは、事実だからだ。ついでに、破戒者としても有名だ。
 じゃあ、買出ししてきましょうか、と、八戒が、そこいらのスーパーのチラシをチェックしていたら、まだ、おやつ前だというのに悟空が戻って来た。
「どうした? 」
「あーなんていうかさ。ママがな、うちへ帰るって言ったら、ドクターがキレてさ。別荘へ移動させられたっていうーか、そういうとこ。」
 食事も摂れるようになったから、そろそろ帰ってもいいですよね? と、ロックオンがドクターに進言したところ、堪忍袋の緒が切れたのが聞こえそうな勢いで、ドクターがハイネを呼びつけて移動を命じたらしい。もちろん、その場には、悟空とシン、レイも居た。
「シンとレイは、一緒に別荘のほうへ行ったんだけどさ。今から行くと帰るのが遅くなるだろ? だから、俺は帰ってきた。」
「また無謀なボケを・・・・さすが、ママニャン。」
「自覚症状がないから厄介ですね。」
 当人は、起き上がれるようになった段階で回復したと思っているわけだが、そういうもんじゃない。まだ、身体のほうを休めておいたほうがいい状態なのだが、自覚症状はないから、そういう齟齬が引き起こされる。
「元気そうなんだけどなあ。」
 悟空からすれば、そう見える。今日だって、のんびりとDVD鑑賞をして、全員で喋っていたのだ。具合は良さそうだったから、ママが、『帰る』と、言ったことも当然だと思っていた。
「年少組がいると具合は良いんだと思いますが、ちゃんと回復したわけではないですからね。今日は、僕が晩御飯を作りますけど、悟空はリクエストありませんか? 」
「酢豚と八宝菜とチンジャオロースを山盛り。やっぱ、中華は八戒のが美味いんだよな。」
「当たり前だ。生粋の西洋人が和食を習得しているだけでも珍しいんだ。中華まで完璧になったら驚くぜ。」
「結構、美味いんだぜ? 悟浄。」
 ただ、悟空の舌は、八戒の味のほうに馴染んでいるから、どうしても八戒の料理のほうが美味しいとは思ってしまう。
「そりゃ、日夜、そこの五月蝿い鬼畜生臭坊主に文句を言われるんだからな。上手くもなるだろうよ。」
 ちょっとでも味が合わなければ、いらんと言う三蔵を満足させているのだから、上手くもなるというものだ。お陰で、和食はかなりのレパートリーを持っている。
「早く帰ってきて欲しいな。俺、ママのオムライス好きなんだ。」
「ああ、刹那君の好物ですね。まあ、悟空、クリスマスには、どうにかなると思いますよ。それまで、我慢してください。」
 とりあえず、おやつにオムライスをしますよ、と、八戒が立ち上がる。元々、オムライスは八戒の持ちネタメニューだったのだが、刹那が気に入ったから、レシピをロックオンに渡したものだ。それが、さらにパワーアップして、悟空に振る舞われているから、こういうことになっている。




 訳がわからない、と、ロックオンは頭を捻っているのだが、他のものは、ドクターがキレた意味がわかる。とりあえず、ヘリで有無も言わさず運ばれてしまったので、居間に陣取っている。
「いきなり、寺はまずかったんだよ、ロックオン。せめて、父さんとこにしとけば、許可が降りたと思うぜ。」
「でもさ、シン。そろそろ戻らないと、部屋がとんでもないことになってると思ってさ。」
「それはわかるけど、いきなり全開で動いたら、ヤバいんじゃない? 」
「そうですよ、ロックオン。トダカ家で静養していて具合が悪くなったんだから、やはり、まだ静養していないと。」
 シンとレイが宥めているのだが、親猫に納得はされていない。そうこうしていたら、別荘の使用人が人数分のお茶を運んできた。
「まあ、落ち着いてお茶でもさ。」
 用意されている茶器は、四個だ。ここには、三人しかいない。人数を間違えたのか、と、思っていたらハイネがやってきた。
「シン、レイ、おまえら泊まるのか? 」
「明日、朝から送ってくれるんなら泊まれる。」
「じゃあ、今、送ってやるよ。トダカさんとこへ行け。」