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こらぼでほすと アッシー3

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「そういうことだろ? だから、悪い見本とはいえ、見本は、おまえしかいないんだから、元気でいないとマズイって言うんだ。」
「ほんと、悪い見本だよなあ、俺。」
 組織を裏切るように私怨に走ったのだから、マイスター組リーダーとしては、最悪の見本だろう。私情に流されることや、恨みを連鎖させていった結果、ロックオンは、ここに居るのだから、それは刹那の生きている悪い見本としては、非常に分かり易いものだ。
「俺もさ、それを理解するのに、すっげぇー時間がかかったよ、ママ。憎しみで戦うと、また、その連鎖に引き摺られるっていうのがさ。」
 シンも、口を開く。そうやって、恨んだり憎んだりした結果、自分は凝り固まって動けなくなったのだ。
「俺も、そうですよ、ママ。何かひとつが絶対に正しいのだと思ってはいけないのだと、キラさんから教わりました。」
 自分の保護者の命じることに疑問すら持たないで生きていたから、結果として保護者を撃つ事態を引き起こした。何が正しいとか、自分はどうしたいのか、そういうものを脇に追いやっていたから、そうなったのだと理解したのは、キラの言葉と態度からだった。
「キラも強いよな。あいつ、普段はのほほんとしてるけど、ちゃんと考えてるもんな。」
 キラは、自分の願うことに忠実に生きている。自分ができる範囲も知っている。だから、刹那のために、ロックオンたちを助けた。そこから世界を牛耳ろうとしないのは、そこがキラの限界だからだ。世界をひとつにして維持できる力まではないから、それを増進させる役目のある組織を助けている。
「だから、俺らも、経験を積みたいと思って、こっちのアカデミーに入り直したんだ。いろんなことを考えて、ちゃんと自分で進む道をみつけたら、そこへ行くつもりだ。もしかしたら、刹那たちに賛同するかもしれないし、敵対するかもしんない。でも、それでいいんだと思う。」
「刹那が、どうするのか、俺たちにもわかりませんが、今のところは、助けたいと思っています。刹那は強いので、俺たちのできることは限られているのでしょうが。」
 シンとレイも、自分たちの過去を顧みて、そう吐き出した。そこに到達するには、手痛い経験が必要になる。ただ、少しでも、それを理解していれば手痛い部分は緩くなるはずだ。
「そういうのを経験するにしたってさ、やっぱり、ママが元気だと違うと、俺は思うんだ。だから、身体を回復させて欲しい。父さんも心配してたから。」
「・・うん・・・」
「俺たちは、週に何度か見舞いには来ますから、なんでも言ってください。使いっパシリは慣れてます。」
「・・・うん・・・」
 『吉祥富貴』のスタッフというのは、そういうことを経験してきたものが多い。連鎖する憎しみに囚われてしまったから、それから抜け出すのに苦労もしている。それらを考えたら、シンたちも強いな、と、ロックオンは苦笑する。自分は、そこに行き着くまでに終わってしまったからだ。
「そうだな、次代のリーダーになってもらうには、悪い見本がぴんぴんしてなきゃダメだよな? 」
「うわぁー自虐的。別に、そこじゃないだろ? 待っていてくれるママが安全な場所で元気でいるっていうのが重要なことだ。わかったら、部屋で転がってろ。俺は、こいつらを送ってくる。」
「まだ、いいだろ? ハイネ。」
「ダメだ。おまえら、ママばっかり構ってないで、パパも構わないと拗ねるぞ? トダカさん、今日は一人のはずだから戻って、一緒にメシ食ってやれ。ママは俺が見てるから問題ない。」
 休日なのに、トダカーズラブの面々は、午前中で引き上げた。だから、今頃、独りで居るはずだ。ハイネは、それを知っていたから、強引に送り出すことにしたのだ。
「それなら、勝手に帰ります。ハイネは、ママのほうを。」
「おう、そうしてくれると有り難い。さあ、ママニャン、間男と楽しいことでもしようじゃないか? 」
 レイが勝手に帰ると言うので、ハイネも頷く。ただし、余計な台詞を言ったもんだから、レイとシンに一発ずつ蹴りを見舞われた。
「ママに何かあったら、俺らだけじゃないからな? ハイネ。」
「たぶん、悟空とキラさんのダブルアタックも食らいます。」
「当たり前だ。俺は、ノンケだよっっ。そういう脅しは、鷹さんにしろ。」
 一番危険なのは、鷹だ。他は相手があるか、ノンケだから、そういう意味の危険はない。
「あ、俺、今、非常に危険? 」
 鷹に押しかかられたら、さすがに撃退は難しいと、ロックオンも気付いた。現役軍人じゃないが現役みたいな鷹と戦っても、体力が続かない。
「危険じゃんっっ。ハイネ、鷹さんは近寄らせるなよっっ。」
「わかってるよ。」
「ママ、防犯ブザーでも持ってきましょうか? 」
「いや、レイ。そこまでしなくても、とりあえず逃げるから。」
「レイ、いくらなんでも、鷹さんだって弱ってるママに無理強いはしないと思うぞ。」
 てか、今、それをやったら寝込むどころでは済まないわけで、そんな状態のロックオンに、それはしないだろうとハイネは思う。当人が聞いていたら、えらい言われようだ、と、顔を顰めたことだろう。



 わーわーと大騒ぎして、シンたちは帰った。マイスター組用の部屋に引き取ってから、ロックオンが噴出す。
「俺、それほど弱ってんだな? よくわかった。」
 シンたちの心配さ加減が、自分の弱り加減のバロメーターでもある。抵抗できないほど弱っているから、心配されるのだ。
「いや、さすがに、今はやらかさないさ。たぶんな。・・・・しばらく、ナマケモノモードで頼むぜ。」
 内線で食事を頼んだハイネが、そう言って、ベッドの横に座り込む。着替えも用意してくれ、と、頼んだから、それも届く手筈だ。
「で、間男は何して遊んでくれるんだ? 」
「なんでも応じるぜ? なんなら、せつニャンの代わりの添い寝でも? 」
「いらねぇーよ。それなら、ライブラリーで、なんかお勧めの本でも選んできてくれ。」
「色気ねぇーオーダーだな。まあ、いいや。」
 しばらく、独りにするぐらいは構わない。とりあえず頼まれたものを探しに行くことにした。食事の時間に戻るつもりで、出たものの、ちょっと行って引き返した。ジャンルを確認するのを忘れたからだ。だが、すでに、ロックオンは寝ていて、答えは聞けなかった。
・・・・ほらな、あれぐらいで疲れるんだよ、おまえさん・・・・
 ヘリの移動とシンたちとの会話で疲れて眠り込むのだ。そんな人間が日常生活を送れる道理はない。、
 しばらく、重点的にママニャンの管理をしろ、と、言われているのも、そのためだ。トダカや虎、鷹には弱音を吐くらしいが、ハイネには吐かない。この間、たまたま聞いたのが初めてだったほどだ。悪足掻きでしかないのに、それすら判らない。いや、判るはずがない。負のGN粒子を浴びている後遺症について、何ひとつ知らされていないからだ。知らせても、良い結果はないのだから、隠すしかない。