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僕らは電脳世界で恋をする!@3/19更新

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恋する女の子はみんな可愛いのです。




時をかける杏里こと通称時かけは、すーはーと何度も深呼吸を繰り返していた。それは緊張を解す為でもあり、そろそろ来るであろう存在に会う為のちょっとした意気込みみたいなものだ。
しかし何度繰り返しても創られた心臓がばくばくと音をたてて静まらないし、顔は何時までも紅く火照っていて、このままだと逆に心配かけてしまうのは確実だ。
どうしようどうしようと考えている間に時間は過ぎて、とうとうポンっとした軽い音と共に来客を示す画面が現れた。
(きちゃったきちゃったどうしよう!でもはやくはいってもらわなきゃへんにおもわれちゃうしっ、ええっと許可のボタンは、)
パニックになってしまった時かけは、


「おーけーでちゅっ!」


語尾を噛んでしまった。



「こんにちは、時かけさんんんん!?ど、どうしたのそんなに落ち込んで・・・?!」
「・・・あながあったらうまりたいです・・・むしろじぶんでほってうまってしまいたい・・・」
「え?え?よく分からないですけど、大丈夫ですよ時かけさんは出来る子!だから本当に埋まっちゃ駄目ですからね!」
それから暫くの間、ずぶずぶとリアルに沈んでいく時かけを必死で引き止める学人の姿があった。






「ごめんなさい、がくとさん・・・。わざわざきてくださったのに、あんなおはずかしいところみせてしまって・・・」
しょんぼりと肩を落とす時かけの頭を学人は何時もより丁寧に撫ぜてあげた。優しい手つきに沈んでいた時かけの心がふわりと浮き上がる。現金だとわかっていても嬉しいものは嬉しい。だって時かけは学人が好きで、人間の言葉で表すといわゆる初恋のお相手なのだ。
時かけのマスターは時かけのモデルにもなっている園原杏里という少女で、制作者である竜ヶ峰帝人が園原杏里に時かけを贈ったのだ。なのでアップロードをするために、帝人は時かけのオリジナルである学人を定期的に時かけの元へと送っている。今日はそのアップロードの日になっていた。
時かけはこの日をいつも心待ちにしてた。だって憧れてて大好きなひとに会えるのだから。その分緊張も凄いけど、それはもうしょうがない。
「そんなことないですよ。それに、こう言っては時かけさんに失礼かもしれませんが、可愛かったなって思いました」
「か、かわっ」
突然の言葉に時かけの顔はぼんっと赤くなる。しかしとうの本人は気付く様子もなく、楽しそうに告げる。
「だって時かけさんは他の子達よりもしっかりしてて、一番精神的にも大人ですから。年相応なところもあるんだって安心しちゃいました。すみません」
「い、いいえ!べつにがくとさんがあやまることじゃないです!」
指を組み、時かけは心臓をどきどきさせながら精一杯応える。いくらプログラムである自分達でも言葉にしなきゃ伝わらないことだってあるのだ。
「その、がくとさんにそういってもらえて、・・・うれしい、です」
「そう?」
「はい!」
時かけにしては珍しい力強い肯定に、学人はレンズの向こうの目を数度瞬かせて、照れ臭そうに笑った。
「そうだ、あとですね、時かけさんに渡したいものがあるんです」
「わたしたいもの、ですか?」
はい、と学人は頷き、掌を上に向け何かしらのパスワードを唱えた。すると彼の掌の上に、ぽん、とリボンで可愛く包装された箱が現れる。
「時かけさんにプレゼントです」
「わ、わたしにですか・・・!?」
差し出されたそれを、両の掌で抱えるように慎重に受け取る。
開けてみていいですか?と伺ってから、そろそろとリボンを外す。包装紙も丁寧に剥がして、ちょっとだけ震える指でゆっくりと箱を開けてみると、そこには可愛らしい花があしらった髪留めが入っていた。
「これ見た時、時かけさんに似合うだろうなぁって思って。ついつい買っちゃったんです」
時かけの頬がふわりと赤くなった。
どうしようどうしよう、すごく嬉しい!!
「大したものじゃあないんですけど」
「い、いいえうれしいです!ありがとうございます!!」
いつにない大きな声で応えた時かけに、学人は優しく微笑んでくれた。
「喜んでもらえて良かった。それじゃあ、メンテナンスに入りましょうか」
「はい!」
大事そうにプレゼントを抱えながら、今度は自分が学人に何かを贈りたいなと時かけは強く想った。その表情はどこか大人びて、しかしとても可愛らしいものだったと、実は見ていた時かけのマスターは後で学人のマスターに楽しそうに告げるのであった。