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『ようせいさんの、かんきょうせいび』人類は衰退しました二次

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 暇の多い生涯を送ってきました。
 このところ妖精さんたちにまつわるトラブルの噂も無く、事務所にお菓子と紅茶を持ち込んではのんべんだらりと暮らす日々です。
「かし……うま……」
 最近とみに脳が溶けている気もしますが、糖分は頭の働きによいので大丈夫と思われます。
 テーブルの上に広げたお菓子の海はまさにラビリンス。チョコレートのピラミッドがクッキーのストーンヘンジに囲まれ、今にも宇宙へアクセス出来そうな雰囲気を醸しております。
 ああ、壊されるべきでない大切な時間……これを守るためにわたしは日々暮らしているとすら思えます。
「おい孫、事件だ」
 大切な時間はおじいさんの一言で打ち砕かれました。
「わたしにだって崇高な生きる理由があることを察して欲しいものですね」
「殺することは得意だが」
 祖父は手に持った銃火器を掲げます。ティータイムに手にするものでこれほど不似合いな物質も無いでしょう。
「とにかく、お前に投書が来ている」
「投書?」
 受け取ります。宛名は『調停官様』、はて?
「《調停官》ってなんでしたっけ?」
 記憶のどこかにはありますが、なかなか出てきてくれません。
 わたしの言葉を聞いておじいさんは頭を抱えます。そして口を開くのも億劫そうな顔で、呆れたような声で答えました。
「お前の仕事だ」
 ……あー。言われてみると、そんな名前だった気が。
「冗談ですよ。ほほほ」
「超諦観してるから気にするな。さっさと読め」
 さて、投書の中身を拝謁します。中身を要約すると『最近、里のはずれのごみ山付近で、非常に大きな建物を見かけた。妖精に関わるもののようなので、危険か調査して欲しい』といったもの。
「行って来い。よかったな、前にあった案件と比較的近い」
 おじいさんはかったるそうにわたしを手で払おうとします。
「腹ごしらえしてからでよろしいですか?」
「働いてなくても腹が減るのか?」
 猛烈な嫌味を言われます。
「将を射んとすればまず美味いものを食わねば戦が出来ぬです」
「最近、体形が横に伸びてるぞ」
「行ってきます」
 口論ではどうもおじいさんが一枚上手のようです。
「じじいは仕事しないので?」
「私の仕事は速過ぎるからな、愚鈍なお前には見えないだろう」
 おじいさんは悪口を皮肉で返すと、わたしを事務所から追い出しました。まったくもう。