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『ようせいさんの、かんきょうせいび』人類は衰退しました二次

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 助手さんはおじいさんが借りるとのことなので、今日はソロでのミッションとなります。しかし、この外の眩しさ。最近、事務所と家にこもりがちだったせいか、光量に視覚が追いついておりません。
 以前向かったゴミ山の方へ足を向かわせるとほどなく、遠くからでも異変を視認することが出来ました。
「おっきい……」
 荒涼たる風が吹く丘の上に、天を衝かんばかりの巨大な建造物が出来ています。
 それはもう、ピラミッド級の。
 もっと近づいてゆくと、その全景やディテールが少しずつ明らかになり、妖精さんたちの途方も無い技術力に嘆息することとなります。
「えっと、これは……ハイパービルディング?」
 学舎で教わったことを一つ思い出します。わたしたち旧人類がご隠居する以前に計画され頓挫した建造物に、《ジッグラト》というものがありましたが、眼前にあるのはまさにその完成予想図そのもの。
「確か、エネルギーを自足する完全環境都市というふれこみだったような」
 兵どもが夢のあと。破かれた計画書の山の向こうに、衰退を迎える前の人類のエネルギッシュさが垣間見えます。
 しかし、これほど大きいと、いくら歩いても建造物に近づいている気がしません。なにやら疲れてきたみたいで、車輪の作動する音のような、妙な耳鳴りもしてきました。そろそろ足が重くなってきたわたしは、一度手ごろな岩の上に腰かけ、休憩をとります。
 妖精さんの菓子不足を危惧して詰め込んできたお菓子袋を開けると、うーん、我ながらかぐわしい香り。さすがにチョコレートを原料から作ることは出来ませんが、一手間加えるだけで、大きく風味が変わるあたりは作る側としても結構楽しいものです。
 銀紙の包装を開け、一口頬張ればやはり芳醇な味わい。
「しやわせ……」
 この清濁併せ呑むビタースウィートの奔流。もはや、言葉にするのも上手くゆかないしあわせの味です。
 やはりお菓子をうまく作れない妖精さんは可哀相だなーと思いつつ……って、あれ?
 顔を上げてみれば、先ほどより、建造物の姿が近づいている気が?
「床が動くくらいなら、やってくれそうですね」
 妖精さんたちのとんでも科学力なら、もっと凄いことをやらかしそうではありますが。ひとまず、お菓子補給の続きをしようとしたところで……お菓子袋の上には、お行儀良く座っていらっしゃる妖精さんの姿。
「あら、どうされました?」
「しさくひん、つくてきままた」
 そういって、妖精さんサイズでは身体一つ分入りそうな大きな箱を差し出します。どうやって持ってきたのかという些細な疑問は、この際するりと忘れておきます。
「どういったものですか?」
 以前妖精さんが作ったような、ヘンテコグッズでございましょうか?
「おかしなものです」
 箱の上には『しゅれでぃんがあなちょこ』と記されております。
 何となく展開が読めてきた気がしますよ……
「中身はチョコレートですか」
「ふたをあけるまでちょこっとわからぬです」
「妖精さんが開けてみられては」
「きがすすみませぬゆえー」
「どういう仕組みなので?」
「りょうしりょうりというやつでー」
 量子クッキングですか。
「にんげんさんあけます?」
「いえ、遠慮しておきます」
 動物が中で死んでいても困りますしね。
 そんな話を続けているうちに気づいたのですが、先ほど岩と思って腰掛けたものは、どうやら何か機械的な車の後部フックのようなものらしく、それに引っかかるように建造物の方へと運ばれています。
「本来はもっと驚いたり、危機感を抱くべきなんでしょうねー」
 そうならないのは恐らく妖精さんの手による機械だと思われること、そしてこの車が先ほどから上手いこと障害物を避けて建造物に近づいているからです。
「この程度なら、慣れっこですかねー」
 素直に喜べない慣れだとは思いますけれど。
 さて、車は建造物の壁に近づいたところで、対象を障害物として認識したのか、急旋回。わたし達はフックから放れ、車に置いてかれるようにように、ぽてりと。
「さて、ひとまずおじいさんに連絡するべきでしょうか……」
 しかし再度往復するリスクは重荷と言えます。最近、とみに深窓の令嬢ゲージが上昇していたこの身、体力低下著しいのです。おじいさんも用事があるようなので、上手く連絡がつかない可能性もありますし。ともあれ、本日は自分の力を信用してみることとしましょう。頼りになる新人類さんもお一人いらっしゃることです。
 そんな相棒の姿を、じつと見つめてみると、
「……いじめるです?」
 相棒はつぶらな瞳で首を傾げます。どこか齧歯類の趣でわたしの嗜虐心が刺激されますが、ひとまずここはこらえました。
「入り口はどこでしょうね」
 建物の周りを渉猟するも、入り口の姿をありません。
「割とそばにあるものだと思ったんですが」
「ここなどいかがか」
 妖精さんが指示する先を見てみると、建造物の壁に『そば、はじめました』の張り紙。
「定番メニューを急に開始した印象ですね」
 まるでわたしの発言に合わせたような。
「そばの意味も違いますし、扉もありませんよ」
「おーぷんすとりんぐ、いっていただけたらー」
「ゲージ粒子の力で扉がスピンするわけですか」
「ちょうそばりろん」
 確かに蕎麦もひも状ですが。
 さておき、秘密の洞窟に入るアリババの気分で声を出します。
「おーぷんすとりんぐー」
 が、無反応。
「こえ、ちいさいです?」
「……深窓の令嬢でしたからね」
断じて、ひきこもりではなかった……はず。深呼吸をして仕切りなおします。
「おーぷんすとりんぐ!」
 言い終えるや、音も無く眼前の空間に人間サイズの扉が顕れ、その奥に明るい通路の続く様子が見えます。相も変らぬ無駄テクノロジーの蝟集体。ツッコミを入れるのも今更と言うものでしょう。
「さて、行きましょう」
 調査開始のため、ハイパービルディングの内部へと足を踏み入れるのでした。