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『ようせいさんの、かんきょうせいび』人類は衰退しました二次

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 ……また、その中がプログレッシブというかアグレッシブというか。
 三角四角の幾何学的な形の物質から異端の法則性を感じるビザールな形の物まで、全てが上手いこと配置され、壁を形作っております。
「これは、妖精さんたちが作ったので?」
「くるまにまかせままた」
「お車ですか」
 先ほど、わたしたちを運んだような車のことでしょうか。
「おくるまだー」
 そう言えば、壁を避けながら進む間に障害物を拾ってゆく機械があったような?
「なるほど、ケペラロボットか」
 後ろから声。祖父でした。その背後にはカメラを構え珍しく喜色を浮かべた助手さんの姿。
「ぇらぃ突然ぁらゎれましたね」
 驚いてイントネーションがおかしくなるわたし。
「実は、もう一通投書があってな。ふむ……謎の車について調査していたのだが、どうやら出所が同じようだ」
「ところで、ケペラロボットとは?」
「キャスターのついた前輪と固定された後輪、それに障害物を引っ掛けるフックと、壁となる障害物を視認する光電セルで構成された車のことだな。壁を避け進むうちに障害物を引っ掛け、再配置する。やがてはその障害物で壁をつくり、迷路的な環境を構築する指向性のロボットだ。無論、今回のバージョンは妖精の意匠によるオリジナリティーが随所に垣間見えるわけだが……」
 こころなしか、おじいさんも思索顔で好奇心に溢れているご様子。対照的なのは、緊張している様子の妖精さん御一行。やはり彼らも人間が増えるとあまり落ち着かないみたいです。
 ……御一行? 彼ら?
「ひー、ふー、みー……増えてますね」
「まあ、ここは妖精の住居のようだからな、増えることもあるだろう」
「人間の数に合わせることで、場の妖精度を調節する、と」
「そういうことだ」
 妖精さんたちはいつの間にか点呼を始めていました。
 矯めつ眇めつされる妖精さん御一行。やがて先ほどの一人が、首を傾げて言いました。
「……いじめる?」
 そんな妖精さんボディを指先でつんつん突つきます。
「やーん」
 嬉しそう。カメラに収める助手さん。すると、もう二人の方も近づいてきます。次々とつんつんしてゆくわたし。
「もっともっと」「おくまでつついて」
 身体をくねらせ、悦びを示す妖精さん御一行。祖父もこれには興味深げです。
「おい、おまえ」
 後方からおじいさんが声をかけます。
「なんでしょう?」
「また妖精が増えたようだ」
 おじいさんの言葉に、周囲に目をやれば、また両手で足りないほどの妖精さんたちが、列を作ってわたしの前に並んでおりました。先ほどの妖精さんは列の整理をしているご様子。
「つっついてもらいたいわけですか」
「愚かな孫娘の行動で、場の楽しい度が上がったわけだな」
「……なるほど」
 仕方が無いので、ひとまずつんつんを続けます。
「ほんと、あなたたちってぷよぷよしてますね」
 突く側としては心地よいわけですけれども。
「ぼくらよっつならぶときえるです?」「げんみつにはよこにおなじのふたつあればだいじょぶ」「じんせいはげーむ」「むしろきえたい」「やがてきえゆくわがみなら」「きえてゆくのもわるくはないです」「むしろほんもう」
 わたしの言葉に反応して、ざわつく御一行。そういえばこの感覚も随分久しぶり。
「しかし、わざわざ人間に近づいているところをみると、この建造物の楽しい度はもう高くないようだな」
「そうかも知れませんね」
 見てみると、妖精さんが集まる場所としては少し物寂しいご様子。旧人類サイズで作ってしまったのが、一つの要因なのでしょうか。
「ぼくらここおいてゆくです」
 一通りざわつきが収まると、列の整理をしていた妖精さん(便宜的に一号さんと呼ばせていただきます)が、わたしに述べました。
「あら、どうしてですか?」
「せっしゃはろまにー、またながれるでござるよ」
 流浪の民の悲哀を滲ませつつ妖精さん。
「そうですか」
「集合離散の性質だな。この場所はどうするつもりだね?」
 おじいさんが妖精さんに質問します。
「あめふれば、つちにかえりますゆえー」
「しかし、仕組みまでよく出来てますね」
「かんぜんかんきょうとしですので」
「では、こちらのお菓子を餞別にどうぞ」
 わたしは持ってきた、お菓子袋の中身を妖精さんたちにプレゼントします。
「おー!」「おかしいっぱい」「そんなおかしなことがあるものか」「おかしくってもいいじゃない」「ちょこー」「ちょこをたべるとちょーこうふく」
 満足していただけたようです。
「ふむ……今回は、たいした問題も起きなかったようだな。帰るとしようか」
 とおじいさん。
「では、内部の調査は放っておくので?」
「先ほどの車がまだ走っているとすれば、調査しているうちに中身が再配置されかねん。テクノロジーの調査は惜しいが迷うだけだろう」
「なるほど、ミイラ取りがミイラと」
アリババの兄のようになってしまいかねないわけですか。
「そういうことだ。行くぞ」
「了解しました」

「……あれ?」
 わたしたちが先ほどの入り口から外に出ようとしたところ、事務所に出てきました。
「ワープ、か?」
 おじいさんも納得のいかない表情。
 助手さんはスケッチブックにヘンテコな砂時計上の絵を書きます。絵のタイトルは『事象の地平そば』。
「これは……ワームホールですか?」
 こくこくと頷く助手さん。
 まさかねえ、と思いつつ椅子に座り、机の上に残してきたお菓子を一口。
「うーん、しあわせ」
「そう言えば……」
 思案していた様子だったおじいさんが口を開きます。何か気づいたのでしょうか。
「おまえ、今日は車に乗ったりワープしたり、ほとんど運動になってないな」
「……はっ」
 次のお菓子を掴もうとした手は徒に宙を舞うのでした。

おしまい。