前夜
ちゅっと可愛い音がした。
目の前にいる神は呆然としている。
「何を……。」
「好きだ。」
「しかし、私は男で……。」
「そんなの分かってる。」
今度は違う音がした。
泉が溢れてくるような柔らかい音。
豊穣の神・フレイは困惑していた。
人間の男に愛を囁かれるなど思ってもみなかったからだ。
ラーンやブリュンヒルデの心はそれとなくは感じていたが、まさかシグムンドから思われていたとは……。
シグムンドは顔にこそ出さなかったが、その甘い感触に酔いしれていた。
ずっと触れたいと思っていた。
村に巨神が来た時、フレイを初めて見た時、目を奪われた。
見た事もない美しさだった。
戦場に咲く花とはまさに彼の事だと思った。
優雅に剣を振るう姿は舞い踊るようだった。
その見ず知らずの美しい男に、シグムンドは一瞬で心を奪われたのだ。
しかし、このラグナロクの刻、皆必死で戦っているこの時分に、その思いは伏せられるようになっていった。
「は……、やめ……。」
「すまない、止められん……。」
口づけはどんどん深くなって行く。
紅い頬に手を添えて、あやすように優しく言葉を掛ける。
そう、もう止められないのだ。
世界が終わることも、この思いを留めておくことも。
だからこそ、欲しかった。
最期の刻だからこそ、この美しい神を、自分のモノに。
目の前にいる神は呆然としている。
「何を……。」
「好きだ。」
「しかし、私は男で……。」
「そんなの分かってる。」
今度は違う音がした。
泉が溢れてくるような柔らかい音。
豊穣の神・フレイは困惑していた。
人間の男に愛を囁かれるなど思ってもみなかったからだ。
ラーンやブリュンヒルデの心はそれとなくは感じていたが、まさかシグムンドから思われていたとは……。
シグムンドは顔にこそ出さなかったが、その甘い感触に酔いしれていた。
ずっと触れたいと思っていた。
村に巨神が来た時、フレイを初めて見た時、目を奪われた。
見た事もない美しさだった。
戦場に咲く花とはまさに彼の事だと思った。
優雅に剣を振るう姿は舞い踊るようだった。
その見ず知らずの美しい男に、シグムンドは一瞬で心を奪われたのだ。
しかし、このラグナロクの刻、皆必死で戦っているこの時分に、その思いは伏せられるようになっていった。
「は……、やめ……。」
「すまない、止められん……。」
口づけはどんどん深くなって行く。
紅い頬に手を添えて、あやすように優しく言葉を掛ける。
そう、もう止められないのだ。
世界が終わることも、この思いを留めておくことも。
だからこそ、欲しかった。
最期の刻だからこそ、この美しい神を、自分のモノに。