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過去作品を晒してみよう、の巻。

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 3.ガンダムW 五飛×ヒイロ







 本日の任務を終え、やれやれと溜息を吐きながら談話兼休憩室へと足を踏み入れた五飛は、非常に珍しいモノを目にした。

(ねっ、寝て・・・る・・・のか?)

 今一つ疑いがちになってしまうのは、いくらこの時間人が出払っていると言えど、
 誰が来るとも知れぬ場所で、眠りに落ちているなどと言うその異常事態が全くもって信じ難いからだ。

 机上に紙コップを置いて、椅子を背凭れにして寝ている。

 本人とてまさか本当に寝るつもりでは無かったのだろう。

 いまだ中身は入ったままである。

 慎重に室内へと入るが、余程深いのか、起きる気配さえ見せない。

 そろりと、直ぐ傍まで近づいてみたが、眼を覚まさなかった。

 普段より人の気配に敏感で、ただでさえ人との接触を嫌い、その上少し近寄っただけで毛を逆立てた猫のような反応を示すのに、どうした事だろうか。
 
(・・・そう言えば、ここ数日激務であったと言っていたな。)

 同僚の世間話に、その話題が出ていた事は、記憶に新しい。

 どの道自分も一息吐きに来たのだと、同じ空間に居るにも関わらず全く起きる様子の無いのを見て、
 これならば居ても大丈夫だろうとの判断を下し、静かに椅子を引いた。



 ふっ、と意識が戻った。

 寝ていたのか、らしくも無い、と、自身に苛立ちながら大きな溜息を吐く。

 すればその反動で、肩から何かが擦り落ちた。

(何だ?コレは・・・)

 そう思い、ソレを手にしようとした処で・・・

「漸くお目覚めか。」

 誰かの声が掛った。

 驚いて声の主を探すと、その人物は己の目の前に座してコーヒーを啜っていた。

「・・・・・・・・・五、飛、・・・」

「もう良いのか?あまり時間は経って無いぞ。まぁどれ位から寝ていたかは分からんがな。」

 だが、カップの外身が汗を掻いていたのだから、俺が来る少し前から寝ていたのだろうな。

 そう冷静に言われ、自身の失態と甘さに愕然とした。

「・・・・・・」

「睨まれる筋合いは無い。ヒイロ。疲れているのだろう?連日激務があったと聞いたが。」

 思い切り舌打ちしたい気分で、しかし彼の言っている事も正しく、再び大きく溜息を吐く事に留めた。

「・・・・・・この上着はお前か。」

「あぁ。どうにも薄着だったのでな。空調管理がされているとは言え、風邪をひいても知らんぞ。」

「・・・感謝する。」

「不服そうに言われてもな。まぁ、その言葉は受け取っておこう。」

 そう言って、見ていた書物に目を向けた。


 本当は、誰かが入って来た事に、気付いてはいたのだ、とヒイロは思う。

 誰かが確かに入って来て、自分は起きねばならない、とも考えた。

 しかし、何故かその考えとは裏腹に、心では妙な安心感か満足感か判別の付け難い良く分からない感情が渦巻き、
 体がこの人物を敵だと認識しなかったのだ。自身でも理解不能だが。

 近くまで寄られた時も、ぼんやりとした意識はあったものの、その霞む意識の中をたゆたったままでいたのは、
 そうする必要が無いからと、覚醒しない意識が勝手にそう判断したからだ。

 確かに五飛は仲間なのだし、警戒する事も無いのだろうが、どうにも釈然としない想いを抱えて五飛をチラリと見れば、
 丁度彼もヒイロを見ていたようで、真正面から視線がかち合った。

「・・・・・・・・・何だ。」

「・・・・・・・・・否・・・」

 途切れる会話。

 どちらともなくふい、と視線を逸らし、気拙そうに視線を泳がせている。

 そうして再び、相手を盗み見れば、双方同じ事を考えていたのか、やはりまた目が合った。

 今度も誤魔化すのは、少し困難にも思われる。

「・・・・・・あー、ヒイロ。」

「・・・何だ。」

「今日はもう、何も無いのか。」

「・・・無い、な。任務自体は全て終わらせた。少なくとも2・3日は入らない、と思うが。」

「なら、一緒に食事でもどうだ?話でもしよう。」

「・・・構わない。」

 気拙い空気も無事払拭されて、まだ少しぎこちないながらも、2人は揃って席を立った。

 空になった紙コップが2つ、机上に残されていた。