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うわさのサチコ

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「ねぇねぇ、獄寺君の右手の中指に嵌ってる指輪知ってる?」
「獄寺君たくさん付けてるじゃん、指輪。何かいつも違うのしてる気がするし」
「ううん、中指の指輪だけいつも同じなんだよ」
「へー、そうなんだ。お気に入りなのかな」
「その指輪、ちょっと変わったデザインでさぁ、ファンの子が同じの探したらしいんだけど売ってなかったんだって」
「特注とか? やだ、ありそー」
「でもそれがさー、最近、同じようなの持ってるひと見たって子がいてさ」
「えっ、それって、お揃いってこと?」
「そうみたい」
「えー、それってカノジョいるってこと? やだー、なんかショック」
「アンタ獄寺君狙いだったっけ?」
「そういうんじゃないけどー、獄寺君って女子のこと全然相手にしないじゃん? 女子とか興味ないのかなって思ってたのに。しかもお揃いの指輪とか、そういうのしなさそうなのに。なんか本命って感じ? やだー」
「たしかに。お願いしても付けてくれなそうだよねお揃いなんて」
「あー、なんか想像するとよけいブルーかも。ってか、見た子いるってことはうちの学校ってこと!? えー、いったい誰よ!」
「武」
「…………へ?」
「野球部の山本武! 知ってるでしょ?」
「そりゃ知ってるけど……なーんだ、カノジョじゃないじゃん。脅かさないでよもー。たまたま獄寺君に借りてたんじゃないの? 武、普段指輪なんてしないじゃん」
「それが最近してるんだって。しかも指じゃなくて首からぶら下げてんの!」
「……見間違いじゃないの?」
「そんなことないって! あんな変わったデザインの間違える訳ないじゃん」
「うーん、それならダメツナとかもしてるんじゃない? あの三人、なんか仲いーじゃん」
「沢田も首から指輪ぶら下げてるけどデザイン違うよ」
「……なんでダメツナのまで知ってんのよ」
「アンタと同じようなこと思った子いたんじゃん? それよりこっそり制服の下で付けてるなんて、なんかマジっぽくない?」
「えーー、でも、獄寺君と武って……ええー……」
「外国ってそういうの多いんでしょ? 獄寺君イタリアの血入ってるし」
「関係あんの? それ」
「二人ともモテるのに全然女の子に興味ないのもそれでなのかなって、二人のファンの子達の間では噂になってんの」
「それ、誰か確かめたの……?」
「そんなん聞ける訳ないじゃん! 男子の耳にも入らないようにしてんのに」
「へ? なんで?」
「だって男子の耳になんて入ったらかわいそうじゃん! 隠したいんだろうしさ」
「え、訳分かんないんだけど」
「馬鹿な男子共に獄寺君とか武のこと悪く言われるのとかむかつかない?」
「……なんか、私には分かんない世界みたい」

作品名:うわさのサチコ 作家名:高梨チナ