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うわさのサチコ

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 最近、獄寺君と山本は仲良しだ。
 獄寺君が転校してきた頃はそれこそ山本のことを目の敵のようにしていたので、常々仲良くしくれたらなぁと思っていたオレとしては凄く喜ばしい。

 今だって放課後の教室でこうしてオレを置いてきぼりに出来るぐらい、二人の会話は弾んでいる。内容がちょっとアレなんだけど。
 意外なことにオレには分からない笑いのツボみたいなものが二人は一致してるらしく、時々良く分からない会話で笑い合っている。


「お前そういや最近サチコとどーよ」
「それがサチコ束縛きびしくってさー」
 獄寺君の問いに、山本は神妙な顔つきで返事をした。
「マジかよ。もっと縛られときゃいーんだよテメーなんか」
「獄寺ひでぇ。友達としてもっとなんかこうねーのかよ」
「あー? んじゃ、今度オレにサチコ貸せよ」
「ええーーー? うーん、まぁ、でも獄寺だったらしょーがねぇか。すぐ返せよ?」
「おう、返す返す」
 そう言った後、ぎゃははと二人は笑う。
 最近二人はサチコネタがお気に入りなのだ。唐突にスイッチが入って、良く分からないサチコの話が繰り広げられる。

 オレ自身は二人のこういう会話も微笑ましいし、聞いてて訳が分からなすぎて面白いから好きなんだけど、こういう会話を漏れ聞いて心穏やかでいられない人達もいる訳で。

 あー、今、入り口付近にいた子が顔真っ赤にして行っちゃったよ。これでまた噂に拍車がかかるんだろうなぁ。オレは半ば達観したような心持で遠ざかる足音を聞いていた。

(二人は自分たちがデキてるとかって噂されてるの知らないんだろうなぁ……)

 実はけっこう前からオレは二人が噂されてるのを知ってるんだけど、本人達に言うべきかずっと悩んでいる。
 せっかく最近二人が仲良くしてくれるようになったんだ、オレとしてはこのままがいい。でも山本はともかく獄寺君はそんな噂を聞いたら絶対に怒り狂って犯人を締め上げ所構わず爆破させ、あげく山本とは口も利かなくなるかもしれない。オレとしてはそんなことは絶対に避けたいのだ。
 幸いなことに噂は女子の間だけっぽくて、怖がって誰も本人達に真相を確かめられないから噂だけが一人歩きしてる状態で、放っておいても本人達の耳には入らなそうではある。
 まぁ、獄寺君と山本じゃ怖がられてる理由が違うんだろうけど。
 獄寺君は純粋に言ったら殺されそうというのがあるだろうけど、山本はきっと笑顔で肯定されたらどうしようって言う怖さだと思う。

 しかし噂の大元がボンゴレリングのせいなんだから、オレとしては心を痛めない訳にはいかない。

「あー、もうホントどうしよっかなぁ」
 思わず漏れた言葉に二人して笑っていた獄寺君と山本が反応する。
「十代目、何か悩み事ですか?」
「どうしたんだ、ツナ? 何かあったらオレ達にそーだんしろよ?」
「そうっスよ。この野球バカはともかく、オレは全身全霊十代目のお悩み解決に全力を尽くします!」
「オレだってツナのためなら何だってするぜー?」
「はは……っ、あ、ありがとう。でも、大丈夫だよ」
 まさか君達の関係について悩んでますなんてとても言えないよ。オレには言えない。
 オレのことを真剣に案じてくれる二人の親友に嘘をつく心苦しさを味わいながら、オレは引きつった笑みを浮かべることしか出来なかった。





2009.06.21
作品名:うわさのサチコ 作家名:高梨チナ