嘲笑と嘆息の間で
「せっかくキャプテンに許可貰ったのに、こいつらあっさりしててつまんなかったよね」
「……」
それまでずっと前線に出てくることもなく立っていた鬼道が前へ出た。
豪炎寺の肩を叩き、声をかける。
「行くぞ。退屈しのぎにはなったか」
それに豪炎寺が、足を振り上げてシュートを放った。
なんでもない、ただのノーマルシュート。
土煙を舞い網が引きちぎられボールはゴールのはるか向こう、俺たちの校舎まで飛んでいった。
崩れ落ち、地面を揺らす爆音。
あっけなく、たった一つのサッカーボールで、俺たちの校舎は瓦礫の山と化したのだ。
「…つまらん」
にっこりと吹雪が嗤った。
風丸が溜息をつくと、鬼道が先に、何も言わず歩きだした。
豪炎寺の表情からは何も読み取れない。
ここに来たときと、同じ顔だった。
俺たちを痛めつける時だって、校舎を壊した時だって、監督に、ボールをぶつけた時だって、いつだってあいつの顔に何の痛みも映らなかったんだ。
ただ一人、円堂だけ。
やって来た車のボンネットに優雅に足を組み愉快そうに俺たちを見続けていた円堂。
豪炎寺はそれを、最後に振り返った時に、微笑んだだけだった。
ああ、ちくしょう。
悔しくてたまらないのに。
悲しくて涙が止まらない。
「西垣…!!」
一之瀬の、声が聞こえた。
気をつけろよ、あいつらにはきっと別の目的があるぞ。
ただの破壊だけで、あんなに悲しい目にはならない。
俺はそう、呟いて目を閉じた。
正直もう二度と目を開けたくなかった。
*
「見つからないね」
「ああ」
「どこにいるのかな」
「なにがだ」
「…さあ?」
わからないというよりは、どうでもいいという顔。
こくりと首を傾けて、アフロディは羽根を散らして消えた。
ああ、つまらない。
嘆息と嘲笑の間で
--------------------------------------------------------------------------------