こらぼでほすと アッシー6
数日して、騒々しい足音と共に、大明神様が、親猫の部屋を急襲した。のんびりと雑誌を捲っていたロックオンは、いきなり飛びつかれて、びっくりだ。
「たっだいまぁーママ。ひっさしぶりぃーんっっ。」
なぜ、大明神様は毎度毎度、力一杯タックルをかましやがるんだ? と、呆れつつ雑誌を丸めて叩く。
「・・・・おかえり、キラ。・・・痛いんだがな? 」
「あ、お土産あるよー。僕の母さんがね、ロックオンさんのお見舞いにって和菓子を作ってくれたんだ。食べる? ねぇー食べよう。白玉なんだっっ。すっごいおいしいからっっ。」
キラは、実家で、現在、寝込んでいる親猫について話した。いつもは、ママの代わりしてもらってるんだーと説明したので、実のママのカリダは、それならお見舞いになるものを、と、用意してくれたらしい。
「しらたま? 」
アイルランド人には馴染みのない名称だ。
「うん、喉越しがつるっとしてて、食欲なくても入るんだ。あとね、黄味餡の入ったお団子と、バナナシフォンケーキもあるよ? とりあえず、白玉ね。あれは、今日までだから急がないと。」
食欲のないロックオンのために、あっさりしていて栄養のあるものをカリダは考えているところが、本物のママだ。居間に用意してもらってるから、行こうと引き摺りだされた。そこには、虎たちも居て、みんなでティータイムになっている。
「お疲れさん、アスラン。」
「ただいま戻りました、ロックオン。少し顔色が良くなりましたね? 」
準備しているのは、もちろんアスランだ。キラにさせたら、せっかくのお菓子が台無しになる。そこには、いろんなお菓子が用意されていて、お茶も日本茶というキラの出身地域のものだった。
「まあ、召し上がってください。カリダさんの作るお菓子は絶品なんですよ。」
「すごいなあーこれ、全部手作りか? 」
「ええ、そうです。」
俺も彼女には敵いません、と、アスランも微笑む。アスランの料理も、基本はカリダの料理のコピーだ。長いこと食べていたお袋の味というものだから、カリダの作るものが一番おいしいと感じる。
「カリダさん、張り切ったなあ。」
ヤマト家と親交のある鷹は、卓の上を眺めて笑っている。おもてなし大好きなので、鷹が顔を出しても、こんな感じで振舞ってもらっている。
「おい、俺たちだけで消費して、シンとレイが怒らないか? 」
「大丈夫ですよ、虎さん。あいつらの分は、確保してあります。」
そして、なぜか、こういう場面には参加しているはずの歌姫様の姿がない。おや珍しいとロックオンが尋ねる。
「ラクスは?」
「今、ちょっと手を離せないので、後で来ます。」
「ラクスのは、ちゃんとあるから、ほら、ママ。白玉っっ。」
キラが小鉢に分けた黒蜜のかかった白玉を、親猫に手渡す。あーん、しようか? と、フォークで、白玉を突き刺して、親猫の口に運ぶ。パクリと口にしたら、じんわりと甘い味と、もちもちした食感が新鮮なものだ。
「どう? 」
もちもちの食感をちょっと噛むと、するりと喉へ落ちていく。確かに食べやすい。
「・・うん・・うまい。」
「えへっ、そうでしょ? 僕の母さん、料理得意なんだ。」
そして、なぜか、その息子は破壊的に下手だ。というか、作るもの全てが毒物になるのは、なぜなんだろうとダコスタは苦笑する。
ラボでは、キラの実家からのお土産を、イザークとディアッカ、ラクス、メイリンというコーディネーターたちで味わっていた。さすがに、全員が、ラボを離れるわけにはいかないので、留守番をしている。
「カリダさんのお菓子は、なぜ、こう懐かしいと感じるんだろうな? ディアッカ。」
一流のものしか召し上がらないセレブなイザークでも、カリダのお菓子は賞賛に値するらしい。いつも、それだけは口にして感慨深く言葉にする。
「懐かしいっていうか、愛情一杯って感じなんだろうな。キラが、のーてんきぽやぽやの理由が解る気がする。」
もぐもぐとディアッカも、黄味餡の団子を食べながら苦笑する。天下無敵の大明神様を構成しているものが、こういう愛情一杯のものだというのは頷ける。こういうものを食べていたから、キラは温かくて強いんだろうと納得できるのだ。
「こういうのは新鮮ですね? プラントにはありません。おねーちゃんに写メしたら、本気で羨ましがってました。」
メイリンも白玉をもぎゅもぎゅと食べつつ、うんうんと頷いている。プラントにも様々な人種はいるのだが、やはり極東の一部地域のお菓子なんてものは、あまりない。特区に来てから、メイリンも知った。これが日持ちがしないから、姉のルナマリアのところへ送ってやれないというのが、ちょっと残念だ。
「休暇に降りていらっしゃるようにおっしゃれば、いかがです? メイリン。」
散々っぱら、キラと再会の抱擁を済ませた歌姫様は、そうおっしゃる。ルナマリアもスカウトしたのだが、現役続行します、と、彼女だけザフトに残っているので、お菓子で釣ろうと、よからぬことを考えたらしい。
「ラクス様、これ以上、ザフトの貴重な戦力は削がないでもらえませんか? ルナマリアまで、こっちに来たら、議長がなんかしでかすぜ? 」
「ほほほほ・・・・しでかされたら報復すれば済みますわ、ディアッカ。」
ザフトのエースパイロットを、ごそっとスカウトしちゃったので、ただいま、シンたちの年代のトップエリートは、他の年代より能力が低い。ただでさえ、少なくなっているザフトレッドの、これ以上の実力低下は勘弁してもらいたいとディアッカは言っているが、そんなものは、歌姫様はスルーだ。
「中東が、ちょっとややこしいことになっているんだが、黒猫が戻って来るコース上になる。警告しておくほうがいいだろう。」
おやつを食べつつ、イザークがパネルに映し出されているポイントを、歌姫に説明する。刹那は、こちらへの帰還コースには入っているのだが、地球を半周するので、数日はかかる。そのコース上に、ただいま、独立治安維持部隊が展開している地域があるのだ。
「刹那のことですから、情報は掴んでいると思うのですが・・・確認してくるつもりではありませんか? 」
こちらもサポートとして、刹那に逐一、新しい情報は送っている。わざわざ、そのコースを選んだということは、そういうことではないだろうか、と、歌姫は返事した。アフリカ大陸を迂回するより、太平洋を進むほうが安全なコースなのに、そちらに進路を取らなかったからだ。
「だが、見つかるとマズイ。エクシアの存在が補足されたら、組織が活動していることが明るみになって、そちらの捜索も厳しくなる。」
「ハイネが中東に出向いておりますね? そういう事態にならないようにフォローさせるために接触させてはいかがですか? イザーク。」
今はまだ、かなりの距離があるが、ハイネに接触させれば、そのフォローは容易い。伊達に、フェイスではないから、ハイネならエクシアを発見させるようなヘマはしない。
「それ、いいんじゃないか? イザーク。下手に俺らが動くより、そのほうが迅速に接触できる。」
「そうだな。俺が出ようかと思っていたが、ハイネなら問題ないだろう。」
「たっだいまぁーママ。ひっさしぶりぃーんっっ。」
なぜ、大明神様は毎度毎度、力一杯タックルをかましやがるんだ? と、呆れつつ雑誌を丸めて叩く。
「・・・・おかえり、キラ。・・・痛いんだがな? 」
「あ、お土産あるよー。僕の母さんがね、ロックオンさんのお見舞いにって和菓子を作ってくれたんだ。食べる? ねぇー食べよう。白玉なんだっっ。すっごいおいしいからっっ。」
キラは、実家で、現在、寝込んでいる親猫について話した。いつもは、ママの代わりしてもらってるんだーと説明したので、実のママのカリダは、それならお見舞いになるものを、と、用意してくれたらしい。
「しらたま? 」
アイルランド人には馴染みのない名称だ。
「うん、喉越しがつるっとしてて、食欲なくても入るんだ。あとね、黄味餡の入ったお団子と、バナナシフォンケーキもあるよ? とりあえず、白玉ね。あれは、今日までだから急がないと。」
食欲のないロックオンのために、あっさりしていて栄養のあるものをカリダは考えているところが、本物のママだ。居間に用意してもらってるから、行こうと引き摺りだされた。そこには、虎たちも居て、みんなでティータイムになっている。
「お疲れさん、アスラン。」
「ただいま戻りました、ロックオン。少し顔色が良くなりましたね? 」
準備しているのは、もちろんアスランだ。キラにさせたら、せっかくのお菓子が台無しになる。そこには、いろんなお菓子が用意されていて、お茶も日本茶というキラの出身地域のものだった。
「まあ、召し上がってください。カリダさんの作るお菓子は絶品なんですよ。」
「すごいなあーこれ、全部手作りか? 」
「ええ、そうです。」
俺も彼女には敵いません、と、アスランも微笑む。アスランの料理も、基本はカリダの料理のコピーだ。長いこと食べていたお袋の味というものだから、カリダの作るものが一番おいしいと感じる。
「カリダさん、張り切ったなあ。」
ヤマト家と親交のある鷹は、卓の上を眺めて笑っている。おもてなし大好きなので、鷹が顔を出しても、こんな感じで振舞ってもらっている。
「おい、俺たちだけで消費して、シンとレイが怒らないか? 」
「大丈夫ですよ、虎さん。あいつらの分は、確保してあります。」
そして、なぜか、こういう場面には参加しているはずの歌姫様の姿がない。おや珍しいとロックオンが尋ねる。
「ラクスは?」
「今、ちょっと手を離せないので、後で来ます。」
「ラクスのは、ちゃんとあるから、ほら、ママ。白玉っっ。」
キラが小鉢に分けた黒蜜のかかった白玉を、親猫に手渡す。あーん、しようか? と、フォークで、白玉を突き刺して、親猫の口に運ぶ。パクリと口にしたら、じんわりと甘い味と、もちもちした食感が新鮮なものだ。
「どう? 」
もちもちの食感をちょっと噛むと、するりと喉へ落ちていく。確かに食べやすい。
「・・うん・・うまい。」
「えへっ、そうでしょ? 僕の母さん、料理得意なんだ。」
そして、なぜか、その息子は破壊的に下手だ。というか、作るもの全てが毒物になるのは、なぜなんだろうとダコスタは苦笑する。
ラボでは、キラの実家からのお土産を、イザークとディアッカ、ラクス、メイリンというコーディネーターたちで味わっていた。さすがに、全員が、ラボを離れるわけにはいかないので、留守番をしている。
「カリダさんのお菓子は、なぜ、こう懐かしいと感じるんだろうな? ディアッカ。」
一流のものしか召し上がらないセレブなイザークでも、カリダのお菓子は賞賛に値するらしい。いつも、それだけは口にして感慨深く言葉にする。
「懐かしいっていうか、愛情一杯って感じなんだろうな。キラが、のーてんきぽやぽやの理由が解る気がする。」
もぐもぐとディアッカも、黄味餡の団子を食べながら苦笑する。天下無敵の大明神様を構成しているものが、こういう愛情一杯のものだというのは頷ける。こういうものを食べていたから、キラは温かくて強いんだろうと納得できるのだ。
「こういうのは新鮮ですね? プラントにはありません。おねーちゃんに写メしたら、本気で羨ましがってました。」
メイリンも白玉をもぎゅもぎゅと食べつつ、うんうんと頷いている。プラントにも様々な人種はいるのだが、やはり極東の一部地域のお菓子なんてものは、あまりない。特区に来てから、メイリンも知った。これが日持ちがしないから、姉のルナマリアのところへ送ってやれないというのが、ちょっと残念だ。
「休暇に降りていらっしゃるようにおっしゃれば、いかがです? メイリン。」
散々っぱら、キラと再会の抱擁を済ませた歌姫様は、そうおっしゃる。ルナマリアもスカウトしたのだが、現役続行します、と、彼女だけザフトに残っているので、お菓子で釣ろうと、よからぬことを考えたらしい。
「ラクス様、これ以上、ザフトの貴重な戦力は削がないでもらえませんか? ルナマリアまで、こっちに来たら、議長がなんかしでかすぜ? 」
「ほほほほ・・・・しでかされたら報復すれば済みますわ、ディアッカ。」
ザフトのエースパイロットを、ごそっとスカウトしちゃったので、ただいま、シンたちの年代のトップエリートは、他の年代より能力が低い。ただでさえ、少なくなっているザフトレッドの、これ以上の実力低下は勘弁してもらいたいとディアッカは言っているが、そんなものは、歌姫様はスルーだ。
「中東が、ちょっとややこしいことになっているんだが、黒猫が戻って来るコース上になる。警告しておくほうがいいだろう。」
おやつを食べつつ、イザークがパネルに映し出されているポイントを、歌姫に説明する。刹那は、こちらへの帰還コースには入っているのだが、地球を半周するので、数日はかかる。そのコース上に、ただいま、独立治安維持部隊が展開している地域があるのだ。
「刹那のことですから、情報は掴んでいると思うのですが・・・確認してくるつもりではありませんか? 」
こちらもサポートとして、刹那に逐一、新しい情報は送っている。わざわざ、そのコースを選んだということは、そういうことではないだろうか、と、歌姫は返事した。アフリカ大陸を迂回するより、太平洋を進むほうが安全なコースなのに、そちらに進路を取らなかったからだ。
「だが、見つかるとマズイ。エクシアの存在が補足されたら、組織が活動していることが明るみになって、そちらの捜索も厳しくなる。」
「ハイネが中東に出向いておりますね? そういう事態にならないようにフォローさせるために接触させてはいかがですか? イザーク。」
今はまだ、かなりの距離があるが、ハイネに接触させれば、そのフォローは容易い。伊達に、フェイスではないから、ハイネならエクシアを発見させるようなヘマはしない。
「それ、いいんじゃないか? イザーク。下手に俺らが動くより、そのほうが迅速に接触できる。」
「そうだな。俺が出ようかと思っていたが、ハイネなら問題ないだろう。」
作品名:こらぼでほすと アッシー6 作家名:篠義