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国城 龍耶
国城 龍耶
novelistID. 24182
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東方無風伝 1

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 白色の雲が点々と浮かぶ空。快晴とは言い難いが、晴れているとは十分に言える空模様だ。
 そんな青い空に似つかわしくない、黒い点が一つ。
 それは高速で移動していた。
 それは人だった。
 先が曲がった黒のとんがり帽子に、黒の服に白のエプロン、肩甲骨に届きそうなほど伸びた金色の髪。対称的な色合いをした少女だ。
 箒に跨って空を飛ぶ少女のその姿は、まさに魔女そのものだった。

「うー、さみさみ。早く温かいお茶でも飲みたいもんだぜ」

 そう言う少女の視界には鬱蒼と茂った森の木々しか入っていない。
 木々に積もった雪と、自然の緑。
 そんなたった二色のコントラストの中に、三つ目の色を見つける。
 黒色の点だ。黴(かび)のように白の中にじんわりと浮かぶ黒色に、彼女は目を奪われた。
 彼女は考える。
 多分、あれは生き物だろう。
 あれがもし人間ならば、助けてやらないと。
 人間以外ならば?例えば、猛獣。例えば……。
 答えは単純。もし自分に害をなそうとするモノならば、何時ものように退治すれば良いだけのこと。

「じゃあちょいと寄り道してみますかな」

 箒の先を掴み、少女は黒い点へと進路を変えた。
 風を切って降下する少女。その勢いで帽子が取れないように片手で押さえていた。

「到着!」

 それはあっという間の出来事だった。
 少女は地面に降り立つとその
黒い何かへと近づいた。

「人間か」

 そして少女は漸く黒い点の正体を知る。
 それは自分と同じように黒い服に身を包んだ人間だった。

「おい、生きてるか」

 黒い人間に近づきながら少女は問う。

「へんじはない。ただのしかばねのようだ。なんてな」

 と返事をしない人間の反応を見て感想を漏らす少女。
 死んでいるだろうと思いながらも、少女は人間に近づき、首元に手を当てる。

「うわ、まるで氷だぜこれは。でも、まだ脈は有るな」

 少女のその手に、僅かながらでも脈が動いているのを感じた。
 まだ、生きている。

「おい、目を開けろ。死んでもいいのか」

 ぺちぺちと頬を叩きながら人間に言うが、相変わらず返事はない。

「やれやれだぜ」

 仕方がない、乗りかかった船だ。

「だけど、この恩は高くつくぜ」

 少女は返事をしない人間に言った。
 白色の雲が点々と浮かぶ空。快晴とは言い難いが、晴れているとは十分に言える空模様だ。
 そんな青い空に似つかわしくない、黒い点が一つ。
 それは高速で移動していた。
 それは人だった。
 先が曲がった黒のとんがり帽子に、黒の服に白のエプロン、肩甲骨に届きそうなほど伸びた金色の髪。対称的な色合いをした少女だ。
 箒に跨って空を飛ぶ少女のその姿は、まさに魔女そのものだった。

「うー、さみさみ。早く温かいお茶でも飲みたいもんだぜ」

 そう言う少女の視界には鬱蒼と茂った森の木々しか入っていない。
 木々に積もった雪と、自然の緑。
 そんなたった二色のコントラストの中に、三つ目の色を見つける。
 黒色の点だ。黴(かび)のように白の中にじんわりと浮かぶ黒色に、彼女は目を奪われた。
 彼女は考える。
 多分、あれは生き物だろう。
 あれがもし人間ならば、助けてやらないと。
 人間以外ならば?例えば、猛獣。例えば……。
 答えは単純。もし自分に害をなそうとするモノならば、何時ものように退治すれば良いだけのこと。

「じゃあちょいと寄り道してみますかな」

 箒の先を掴み、少女は黒い点へと進路を変えた。
 風を切って降下する少女。その勢いで帽子が取れないように片手で押さえていた。

「到着!」

 それはあっという間の出来事だった。
 少女は地面に降り立つとその
黒い何かへと近づいた。

「人間か」

 そして少女は漸く黒い点の正体を知る。
 それは自分と同じように黒い服に身を包んだ人間だった。

「おい、生きてるか」

 黒い人間に近づきながら少女は問う。

「へんじはない。ただのしかばねのようだ。なんてな」

 と返事をしない人間の反応を見て感想を漏らす少女。
 死んでいるだろうと思いながらも、少女は人間に近づき、首元に手を当てる。

「うわ、まるで氷だぜこれは。でも、まだ脈は有るな」

 少女のその手に、僅かながらでも脈が動いているのを感じた。
 まだ、生きている。

「おい、目を開けろ。死んでもいいのか」

 ぺちぺちと頬を叩きながら人間に言うが、相変わらず返事はない。

「やれやれだぜ」

 仕方がない、乗りかかった船だ。

「だけど、この恩は高くつくぜ」

 少女は返事をしない人間に言った。
作品名:東方無風伝 1 作家名:国城 龍耶