東方無風伝 1
白色の雲が点々と浮かぶ空。快晴とは言い難いが、晴れているとは十分に言える空模様だ。
そんな青い空に似つかわしくない、黒い点が一つ。
それは高速で移動していた。
それは人だった。
先が曲がった黒のとんがり帽子に、黒の服に白のエプロン、肩甲骨に届きそうなほど伸びた金色の髪。対称的な色合いをした少女だ。
箒に跨って空を飛ぶ少女のその姿は、まさに魔女そのものだった。
「うー、さみさみ。早く温かいお茶でも飲みたいもんだぜ」
そう言う少女の視界には鬱蒼と茂った森の木々しか入っていない。
木々に積もった雪と、自然の緑。
そんなたった二色のコントラストの中に、三つ目の色を見つける。
黒色の点だ。黴(かび)のように白の中にじんわりと浮かぶ黒色に、彼女は目を奪われた。
彼女は考える。
多分、あれは生き物だろう。
あれがもし人間ならば、助けてやらないと。
人間以外ならば?例えば、猛獣。例えば……。
答えは単純。もし自分に害をなそうとするモノならば、何時ものように退治すれば良いだけのこと。
「じゃあちょいと寄り道してみますかな」
箒の先を掴み、少女は黒い点へと進路を変えた。
風を切って降下する少女。その勢いで帽子が取れないように片手で押さえていた。
「到着!」
それはあっという間の出来事だった。
少女は地面に降り立つとその
黒い何かへと近づいた。
「人間か」
そして少女は漸く黒い点の正体を知る。
それは自分と同じように黒い服に身を包んだ人間だった。
「おい、生きてるか」
黒い人間に近づきながら少女は問う。
「へんじはない。ただのしかばねのようだ。なんてな」
と返事をしない人間の反応を見て感想を漏らす少女。
死んでいるだろうと思いながらも、少女は人間に近づき、首元に手を当てる。
「うわ、まるで氷だぜこれは。でも、まだ脈は有るな」
少女のその手に、僅かながらでも脈が動いているのを感じた。
まだ、生きている。
「おい、目を開けろ。死んでもいいのか」
ぺちぺちと頬を叩きながら人間に言うが、相変わらず返事はない。
「やれやれだぜ」
仕方がない、乗りかかった船だ。
「だけど、この恩は高くつくぜ」
少女は返事をしない人間に言った。
白色の雲が点々と浮かぶ空。快晴とは言い難いが、晴れているとは十分に言える空模様だ。
そんな青い空に似つかわしくない、黒い点が一つ。
それは高速で移動していた。
それは人だった。
先が曲がった黒のとんがり帽子に、黒の服に白のエプロン、肩甲骨に届きそうなほど伸びた金色の髪。対称的な色合いをした少女だ。
箒に跨って空を飛ぶ少女のその姿は、まさに魔女そのものだった。
「うー、さみさみ。早く温かいお茶でも飲みたいもんだぜ」
そう言う少女の視界には鬱蒼と茂った森の木々しか入っていない。
木々に積もった雪と、自然の緑。
そんなたった二色のコントラストの中に、三つ目の色を見つける。
黒色の点だ。黴(かび)のように白の中にじんわりと浮かぶ黒色に、彼女は目を奪われた。
彼女は考える。
多分、あれは生き物だろう。
あれがもし人間ならば、助けてやらないと。
人間以外ならば?例えば、猛獣。例えば……。
答えは単純。もし自分に害をなそうとするモノならば、何時ものように退治すれば良いだけのこと。
「じゃあちょいと寄り道してみますかな」
箒の先を掴み、少女は黒い点へと進路を変えた。
風を切って降下する少女。その勢いで帽子が取れないように片手で押さえていた。
「到着!」
それはあっという間の出来事だった。
少女は地面に降り立つとその
黒い何かへと近づいた。
「人間か」
そして少女は漸く黒い点の正体を知る。
それは自分と同じように黒い服に身を包んだ人間だった。
「おい、生きてるか」
黒い人間に近づきながら少女は問う。
「へんじはない。ただのしかばねのようだ。なんてな」
と返事をしない人間の反応を見て感想を漏らす少女。
死んでいるだろうと思いながらも、少女は人間に近づき、首元に手を当てる。
「うわ、まるで氷だぜこれは。でも、まだ脈は有るな」
少女のその手に、僅かながらでも脈が動いているのを感じた。
まだ、生きている。
「おい、目を開けろ。死んでもいいのか」
ぺちぺちと頬を叩きながら人間に言うが、相変わらず返事はない。
「やれやれだぜ」
仕方がない、乗りかかった船だ。
「だけど、この恩は高くつくぜ」
少女は返事をしない人間に言った。