東方無風伝 1
「じゃあ霊夢、後は頼んだ」
「あ、炊けた?」
「多分」と霊夢に後のことは任せて弾幕ごっこを見に行く。
音がした方向から大体の位置は掴んでいる。
ぎしぎしと木張りの廊下を進んで行くうちに、弾幕ごっこの爆破音が大きく、近づいているのが解る。
「萃香それは反則だろ!」
「なにをー、魔理沙こそそれは反則技じゃないか!」
おやどうやら弾幕ごっこをしているのは魔理沙と萃香のようで、二人の騒がしい声が聞こえてくる。
廊下の果てを直角に曲がれば其処には境内が広がっている。
「これは一体……」
地面に敷かれた石床は一部は捲れあがり、茶色の地面が見えている。そんな地面には俺の身長と同じくらい大きい足が。見上げれば、それはなんと萃香の足ではないか。
次いで、視界に映るのは箒に跨り空を飛ぶ魔理沙。
「お、風間か、おはようだぜ」
「おはよう魔理沙」
「隙あり!」
「あ、萃香お前!」
魔理沙が俺へと余所見をしているの今がチャンスだと思ったのか、巨大化している萃香は魔理沙に攻撃を開始する。
「にぃ!」
急上昇して空へと逃げる魔理沙。
よく今のを避けたなぁと感心していれば、突然彼女の周囲に『星』が現れたのに気づく。それも、一つ二つではなく幾数十と。
「喰らえ萃香!」
「来い魔理沙!」
魔理沙が生み出したであろう星々は、赤青黄と様々な彩りを持って、輝きながら弾丸が如く萃香に向かって飛び立っていく。
「無駄無駄無駄無駄!」
そう叫んだ萃香の姿は、ぽん、と軽やかな音ともに消える。いや、元通りの小さな姿に戻ったのだ。
魔理沙の放った星々は萃香に
当たることなく墜落していく。
「百万鬼夜行」
「チッ」
「ん?」
一体いつの間にか手に持っていたのか、萃香は持っていた一枚のカードを掲げてそう呟いた。その途端、カードは光となり消えていく。
なにが起きると言うのだろうか、魔理沙は予期しているようで身構えている。
それは何時も突然に起こる。
どばぁ、とまるで津波でも起こったような爽快な音とともに、萃香を中心とした弾が放たれる。
それは弾で構成された幕。正に『弾幕』である。