東方無風伝 1
「実演できれば、てっとり早いんだけどねぇ」
「何か問題でも?」
「これはあくまでも決闘よ。一人じゃ出来ないわ」
「ああ、なるほど」
魔理沙と萃香は未だに眠っており、残る俺は弾幕ごっこを知らない。決闘する相手がいないのでは、それはただの一人遊びだ。
「ま、あんたもこの世界で生きていくなら、弾幕なんて嫌と言うほど見て、浴びて、放つことになるだろうから、別に良いわよね」
幻想郷で最も楽しい遊びであり、最もポピュラーな決闘だと言うのであれば、霊夢の言う通りにそのうち目にすることがあるだろ。
ならば今すぐ見たいと焦らずに、その来る時を待とうじゃないか。
「朝ご飯にしましょう。風間も手伝いなさい」
「そうだな。長話をして俺も腹減った」
廊下を歩く霊夢の後に着いて行き、台所にて朝食作りに励む。
霊夢と俺とで作業を分担し作っていれば、突如として神社の外から爆音が響いてきた。
「なんだ、近くで爆発が?」
「多分、近くで弾幕ごっこしているのよ。丁度良かったじゃない、作り終わったら見に言ってみたら?」
爆音に対して霊夢は落ち着いた声でそう言った。幻想郷に住まうモノには、この程度は日常茶飯事と言うことだろう。
運が良いのかこんなにも早く弾幕ごっこを拝む機会が訪れるとは思ってもみなかった。
何はともあれ、さっさと朝食を作ればその分早く見に行ける。
自然とその手つきが速くなる。
「……」
「……」
「ええい、何時になったら米は炊けると言うのだ」
「落ち着きなさいって。焦ったところで早く炊けるわけじゃないのよ」
「まぁ、その通りだが」
竈(かまど)の火をより強くする為に、小刻みに揺れ動く団扇の動きが速くなっていく。
それと比例して疲れが溜まっていく手首。
そしてまた響く爆音。つれて揺れる地面。どうやらかなり激しくやっているようで。
弾幕ごっことは、こんなにまで激しい遊びだと言うことか。
少し、怖いな。遊びと言えどそれは決闘。激しくなるのはまた当たり前ということか。