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八面六臂臨也と小学天

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雨の出会い




雨の中、傘を差しながら汚らしい橋を渡っていく。橋の脇には行く場所がない人間達がちらほら座り込んでいる。
物乞いの皿が雨水で一杯になっても誰も気にしない。物乞いの人間達はこの雨の中誰1人として雨をしのぐことをしていなかった。
否、しのぐものが無いのだろうから出来ないのだ。その人間達の瞳に生気などはない。
そして橋を歩く人間達の目の動揺だった。皆早足に、家路へと急いでいる。八面六臂臨也はそんな人間達を瞳だけで追いながら、うすら笑った。

(ああいう人間って何を楽しみに生きているんだろうねぇ~)

ジャケットのポケットに片手を突っ込んで、八面は雨の中軽い足取りで歩いていった。
ちらりと無意識に橋の脇に向けた視線。碧の瞳と目があった。この、絶望しかない国では見たこともない真っ直ぐな瞳。
何か、背筋から突き抜けるような衝動に駆られた。八面は何も考えることなくその子供に足を向ける。
そして足を止めてその子供の正面に立つ。子供は八面を怖れることもなく、碧の瞳で八面を見つめていた。

「お前、なぁにその瞳?」

「?」

子供は小首を傾げるだけで一言も発しない。八面は器用に片眉だけを上げると、その場にしゃがみ込んだ。
傘に当たる雨の音が先程よりも耳に響く。その傘を八面は子供の頭上に置いた。背中が段々と濡れてきて冷たくなるがそんなことどうでもいい。
雨の重さでこの子の顔が俯いて、その瞳が見え辛くなる方が嫌だった。

「しゃべれないの?」

「?」

子供はまた首を傾げると、その紅葉のような手で八面の頬に触れた。ペチペチと数度叩くと、その子供はフワリと笑う。
八面はその頬に当てられた手を取り、自らの頬へとくっつけた。

「お前、俺の物になる?」

子供は数度瞬きを繰り返し、また笑う。八面はこの子供が自分の言葉を理解していないことを理解していた。
それで良いと、思う。知っていたらきっとこうも素直な感情を八面に向けることは無かっただろうし、八面も興味を持たなかったかもしれない。

「お前は今日から俺の物だ」

八面はそう言うと濡れて冷え切っている子供を抱き上げ、その腕の中に抱き込んだ。
濡れネズミだった所為で八面の服もびしょぬれになるが構わない。

「楽しい玩具みーつけた~」