こらぼでほすと アッシー7
「そうやって、人は繋がるのさ。だから、KPSAのことは忘れろ。いいな? おまえさんは、ディランディーさんちの子供。それで、今の親父は、三蔵さんだ。はははは・・・・両親揃ったな? 刹那。」
大笑いして親猫が、そう指摘するので、刹那はポカンと口をあけて、それから笑った。『吉祥富貴』との縁だって、そういうものだ。突然に現れて助けられて、そして、今は、繋がっている。キラたちが陰ながら、組織のこともバックアップしてくれているし、何より親猫のことを保護してくれている。国籍も人種も関係なく、ただ、世界が平穏であればいい、という点で結びついた不思議な繋がりだ。
「そうだな。・・・・だが、謝罪はしてくる。関係者であった事実は変えられない。」
「うん、それと自己紹介してきな。俺の子供ですって。」
「ああ。」
「出かける前に地図を渡すよ。」
「ああ。」
誰にも拭えない過去はある。それは忘れなくてもいいが、軽くすることはできる。刹那が悪いわけではない。あの場所で生まれたから、ああするしか生き残れなかった。それは、刹那の責任ではないし、そうしたから、刹那は生きて、マイスターになった。だから、それについて、ロックオンは恨んだりはしていない。刹那のような子供が、戦いの中でしか生きられないような現状で生きなければならない子供が、いない世界になって欲しいと願っている。
刹那も、それは感じているだろう。そのための武力介入だったし、そこで罪も無く死んでいった子供たちを殺したのも、その布石とするためだ。親猫の気持ちが解っているから、刹那は口を開く。唐突に聞こえそうだが、ふたりの間では空気で会話しているから、繋がっている。
「俺は、あんたのような人間を作らない世界を求めている。そのための武力介入は今後も続ける。俺たちに罰が下る時まで、人を殺し続けるぞ、ロックオン。」
「ああ、それでいいさ。俺も、それまでは生きてるからな。見届けてやるよ。」
世界中が敵に回っても、自分は刹那たちの味方だ。『吉祥富貴』の者も、おそらく味方でいてくれるだろう。世界を変えるために犠牲は必要だ。それを理解して苦悩していて、それを乗り越えて戦っている。歌姫や大明神も、それなりに苦悩することはあるだろう。歌姫の愚痴から垣間見えたものは、そういうものだ。何様だ、と、謗られても止められない。今の世界は、そうしないと変わらないのだから。
「ロックオン、俺は言葉が足らないから、言い方は悪いが・・・・あんたには、生きていてもらいたい。」
「うん、生きてるよ。まだ生きてたのか? って呆れられるぐらいにな。」
「身体を壊すような真似はするな。できれば、三蔵さんの女房だけやっててくれ。」
「まあ、今のところは、それで手一杯だな。おまえさんたちが無事であれば、俺は大丈夫だ。」
何もしなくていい、とか、ゆっくりしていろ、という言葉を使わないで話そうとすると、刹那は、こんなだ。それがわかっているから、親猫も苦笑しつつ返事する。
「俺には、あんただけだから。」
「はいはい、嬉しいことを言ってくれるねー。お礼に、リンゴでも剥いてやろう。」
ストレート言語は、聞くほうが理解していれば痛い言葉ではない。親猫は、嬉しそうに頷いて、冷蔵庫からリンゴを取り出した。それを剥いていると、トダカが帰宅した。そして、ディランディーさんちの子供だという話をしたら、「じゃあ、私も繋がってるな。刹那君、きみのママは、私の娘だから、きみは、私の孫でもあるんだよ? 」 と、笑いながら、晩酌を始めた。
作品名:こらぼでほすと アッシー7 作家名:篠義