二月の恋人
イタリアの手にあったリースはカラーボックスの中に滑り落ちていた。ドイツに思い切り抱きつきたい。イタリアはそう思ったが一瞬でも離れるのがイヤだった。薄く開いた唇に舌が差し込まれると、背がゾクリと震えた。イタリアの右手がドイツの袖を掴み、ぎゅうと握る。口内を優しく掻き回されて、イタリアは小さな吐息を漏らした。最初はそんなに上手じゃなかったのに、いつの間にか、こんなに上手くなっている。それは二人が長い時を二人で生きていた証のようなものだった。舌と舌が重なって音を立てて吸われる。気持ちよくて、仕方がない。もしかしたら上達したのではないのかもしれない。イタリアが、ドイツのキスが世界一だと思ったからなのかも、しれない。
「・・・はぁ」
唇が離れると、イタリアは呼吸が上手く出来ずに胸に溜まっていた息を吐いた。イタリアのマンダリンオレンジの瞳に自分が確とうつっている。それがドイツには嬉しくて堪らない。
「リース、Kranzは永遠を意味する。・・・・・・イタリア、永遠に、俺と在り続けてくれないか」
ドイツの海よりももっと深くて澄んだ青い瞳にイタリアの心臓がトクンと跳ねた。じっと覗き込まれて、息も出来ない。愛しい人の視線が自分に注がれているんだ。嗚呼、毎年この高鳴りだけは変わらない。まるでラズベリーの様に、甘酸っぱいこの感情はきっといつになっても変わらないのだろう。
「ja」
二月の恋人達は・・・・・・。