ちょうどいい距離
言われて自然とうさぎを抱きしめていた。
血が通わない無機物だというのに、なぜか不思議とうさぎは温かく、固くなった心を身体をゆっくりとほぐしてくれた。
もしかしてオランダの体温(ねつ)がうさぎに移ったから温かいのだろうか。
そんなことをぼんやり思考の片隅で思っていたら、突然息もつかせぬような衝撃。
うさぎ越しにぎゅぎゅぅと抱きしめられて息も出来ない。
「あ、あの、おら、だ……さ?」
軽くパニックに陥りながら呼びかければ、しごく当然のようにオランダは言った。
「俺は泣いてるうさぎをなぐさめてるんや。それだけや」
言いながらまたぎゅうぎゅうと抱きしめられて、ほんのりと笑みがこぼれる。
「……はい、そうですね、ありがとうございます……って、うさこさんがおっしゃってる、みたいです」
はにかむようにぬいぐるみ越しの礼を口にしたら、オランダは当然のように言ったのだった。
「ほか。俺のうさぎは淋しがりややさけぇな。気にしとらん」
【おわり】