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Melty Kiss

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そんな風に言って逆らえないようにしてしまうからもっとずるい。
千歳の瞳から手の中のマグカップに視線を落とす。さっきよりはぬるくなってしまったココア。
ゆっくりと口元へ運んで、こく、とほんの少し、口の中がちょっと湿るくらいだけ口に含んだ。
指先からそっと滑るように千歳の頬を捉えて、誘われるままに口付けた。

「んん、ふ…、ん、んっ」

薄く唇を開けると千歳の舌がすぐに潜り込んでくる。
じゅ、と唾液が絡まる水音がして肩が震えた。
千歳の熱くて厚い舌がねっとりと俺の舌を絡めとって、吸って舐めていく。
飲ませる、というよりは口の中にある甘い味を千歳に分け与えてるような感じ。食べられてるような感じ。

「ふ、あ、っ…ん」

ココアの味が千歳の唾液と混じって、とにかく甘くて仕方がない。
脳内で麻薬物質でも分泌されてるんじゃないかってくらい頭がくらくらする。
前よりはキスに慣れたと思うけれど、こんな風に激しく舌を絡められたら上手に呼吸なんて出来るわけがない。

「ごちそうさま」

歯茎から舌の裏まで散々舐め尽されて、やっと千歳の唇が離れていった。
ふは、と大きく息を吸って咳き込むと、くすりと小さく笑われた。誰のせいだと思っているのか。
唇はすっかり唾液まみれだ。ベタベタで気持ち悪い。

「はあ…、あほ、気済んだ?」
「んー…足りなか」

案の定、そんな言葉が返ってくる。
カップは取り上げられて同じようにちゃぶ台へ。そして手を引かれて布団に倒れこむ。
いつもみたいに組み敷かれて千歳の熱の篭った目に見下ろされる。

「せっかくのバレンタインやけんもっと食べたか」
「…俺チョコやないもん」
「ん、でも、甘いもの」

にこ、と笑って汗ばんだ手が衣服の中に潜り込んで腹を撫でた。

俺は別に甘くなんかない、むしろお前の今の言葉のほうがよっぽど甘くて溶けそうだと思う。
だけどそんな言葉は飲み込んでしまう。千歳が甘いって言うんなら、きっと俺がどう言ったって全部甘いものに感じてしまうんだろうから。

「…お返しは3倍返しやで」

だからわざと可愛くない返事をしてやる。
それでもきっと千歳にはチョコみたいに甘く思えたんだろうけど。

「よろこんで」

すっと目を細めて、甘く柔らかく笑って千歳は応えた。
作品名:Melty Kiss 作家名:ふづき