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こらぼでほすと アッシー11

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もし、刹那が戦えると判断したら。
 ロックオン・ストラトスは、二人になる。
 だが、実際に戦うのは、自分ではない。
 戻るにしても、時間がかかる。
 それまでに、組織は再始動するだろう。
 ならば、自分は、このコードネームを名乗る意味はない。
 だが、これを捨てたら・・・・


 そんなことを考えながら、洗濯物を干していた。悟空たち学生組の試験期間も終わって、ようやく日常に戻った。真冬は、洗濯物も乾かないから、干しても取り入れて、仕上げに乾燥機を使う。だが、まあ、電気代を考えれば仕上げだけのほうが安いから、とりあえず干す。四人分の洗濯物は、冬だから量は少ない。あっという間に、それは終わったが、ちょっとぼんやりと考えていた。刹那が、どんな結論を携えて戻るのか、まだわからない。だが、是であるなら、そのことは考えておく必要がある。
 何年か、その名前で暮らしていたが、これすら、返上することになるとは思わなかった。その名前のまま消えるのだろうと覚悟していたからだ。
「ママッッ、日向ぼっこなら廊下でやってっっ。そんなとこ、風邪ひくっっ。」
 ぼんやりとしているロックオンを見つけて、悟空が大声を張り上げる。刹那が旅に出て、そろそろ一ヶ月。かなり気落ちしてきたので、悟空も気をつけている。ここで、弱らせると、後が大変だから、なるべく年少組が顔を出して世話を焼かせている。
「ママッッ。」
 聞こえていないのか、まだぼんやりしているので、もう一度、叫んだら、その声に重なるように銃声がして、ロックオンの向うの土塀に土煙があがった。
「うわっっ。」
「おい、お茶。」
「あ、はい。」
 その音で、正気に戻って、バタバタとロックオンが戻って来る。普通の人間なら、自分の傍に着弾したことで、驚くのだが、元々スナイパーだった男は、そんなもので怯まない。音に反応しただけだ。
「悟空も、なんか飲むか? 」
 近寄ろうとしていた悟空に気付いて、そう尋ねてくれる。もう普通だ。
「うん、あったかいやつ。」
「じゃあ、ホットオレンジなんて、どうだ? 」
「それでいい。」
 洗濯籠を廊下に置くと、台所へ準備に行ってしまった。少し背後に立っている坊主に振り向いて視線を合わせる。
「あいつは、碌なことを考えねぇー。これぐらいの刺激じゃ、どうにもならないな。」
「刹那のことか? 」
「いや、そうじゃないだろう。なんか、またややこしいこと考えてるんじゃねぇーか? キラにも言っとけ。」
「おう。」
 そろそろ、弱る。刹那が飛び出した直後は、年少組が、こぞってやってきていたが、それが落ち着いたので、考える余裕ができたらしい。
「なんか気晴らしとかないかなあーさんぞー。」
「気晴らしなあ。」
 気晴らしと言われても、三蔵にも思い浮かばない。パチンコでも連れて行くか? と、言ったら、悟空に呆れられた。



 絶対に戻って来なさい、と、キラは暗号通信を送る。その日は、絶対に、黒子猫に、ここに居て欲しい日だった。
「終わった? 」
 アスランが背後から声をかける。キラの仕事部屋というのは、電脳ルームだ。ここから、ラボのマザーへも即座にアクセスできるだけの装備がある。ウィークデーは、ここから、ラボのマザーを弄っているので、わざわざ、別荘まで足を運ぶ必要はない。
「うん、届けたよ。・・・当日までに戻ってもらわないとね。」
「それで、どうするの? 」
「僕らも、少しだけ。その日は、どうなってたっけ?」
「予約はあるよ。イベントデーだからね。」
 アスランは、店の予約状況を思い浮かべて、キラに教える。そういうイベントの時は、少なからず予約がある。だから、自分たちは、あまり派手にはできないだろうと言うしかない。
「そうなんだよねぇー刹那の時は、普通の日だから貸切にしちゃえるんだけどさ。ママって損だ。」
 むーと、キラは椅子の背もたれに凭れこんで伸びをする。
「でもさ、このイベントは極東限定だから、ロックオンの故郷では関係ないんだよ。」
「ああ、そうか。世界共通じゃないもんね。」
 刹那が出かける時にも、そう言った。今回は、絶対に、それまでに戻って、それから一ヶ月の滞在だと、キラはきつく申し付けた。ただ、単独で動き周っていると、どうしても日付が疎かになる。だから、再度、暗号通信を送りつけた。
「ママはね、シンと一緒なんだ。だから、できるだけのことはしてあげたい。」
「ああ、そうだな。」
 シンが大事なものを喪ったのは、キラが戦っていた余波にによるものだ。その憎しみを抱えて成長して、キラに復讐しようとした。いや、ある意味、フリーダムを葬ったことで、シンは復讐を果たしたともいえるかもしれないが、その後、そこから抜け出せなくて、次々と憎いものを生み出してしまった。結果として見せ付けられるのは辛いものだ。シンが、あのままだったら、キラは殺してしまったかもしれない。憎しみが連鎖して終わりなく続いて、何も残らないことに気付いてくれたから、今の関係は成立している。シンは、ただの一例に過ぎない。たぶん、キラが戦った痕には、たくさん、そんな人間を生み出したはずだ。
 ロックオンも、シンと同じように理不尽なテロによって大事なものを喪った。そこから抜け出せなくて、今の状態になっている。ただ、ロックオンには、刹那たちが居たから連鎖からは抜け出せている。過去は変えられないが、未来は望む方向に自分たちで舵を取れる。刹那たちが無事であれば、ロックオンは、これ以上の悲しい過去を抱え込むことは無いはずだ。
「僕、ママは好きだよ。あんな中身の人が、テロリストやってたってことが、とっても不可思議摩訶不思議だもん。・・・たぶん、ママは、もうやっちゃいけないんだ。ラクスも、そう言ってるしね。」
「俺も、それは賛成だけど、それには刹那たちの安全を確保しないとね。」
「ヴェーダを、こちらで掌握できれば簡単なんだけど、生体端末が勝手に暴走するから難しいな。」
 普通のマザーなら自己防衛機能はあるが、それは、誰かが作成したものだから、時間をかければ、キラは入り込んでシステムを乗っ取ることは簡単にできる。ヴェーダは、その点、生体端末が複数あって、それらひとつひとつが自己防衛機能を有し、勝手にシステムを書き換えていくので、掌握が難しい。ただの演算処理システムではないので、厄介だ。
「そちらは、時間をかけて陥落方法を考えないと無理だ。システムの専門家が、もう少し必要だな。」
 スーパーコーディネーターも万能ではない。ひとりでできる限界はある。アスランが補助するだけでは難しい。
「そうだね。・・・うーん、ママのごはん食べたくなっちゃった。おやつ食べに行こうか? アスラン。」
 本日は、ウィークデーで仕事がある。バレンタインイベントが終わった直後なので、それほど予約はないが、それでもお客様がいらっしゃれば、キラたちは仕事だ。
「あ、うちのチョコ、悟空におすそ分けしてやろう。」
「うん、それいいね。いくら高級品でも、チョコばっかり飽きた。」