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こらぼでほすと アッシー11

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「あははは・・・立ってるじゃないか。現に、私は独り寂しく晩酌しなければならないところを、話し相手になってくれてる。三蔵さんだって、そうだと思うよ。あの人も、悟空君がいないと独りだからね。」
 ほら、もう一杯、と、トダカは、冷酒の瓶を持ち上げる。些細なことだが、結構、こういうことが重要だ。誰かがいればいいな、と、いうところに、ロックオンはいてくれる。それについては、トダカも有り難いと思う。
「マイスターなんて華々しい立場から裏方に廻ったから、物足りないかもしれないけど、今は、これでいいんじゃないかな?  娘さん。」
「・・はあ・・・」
「見た目には瑣末なことに見えるんだろうが、みんなの気持ち的には重要なところを担ってるんだと理解しなさい。きみにしかできないということを。」
 マイスターの要を担っていたという自負はある。それが、『吉祥富貴』に場所は変わった。実働部隊としての仕事はできなくなったが、それ以外の部分で重要な位置に居るということをトダカは説明してくれる。何もできていないわけではない。ちゃんと、自分は、この一年とちょっとで、『吉祥富貴』の特異な位置を獲得しているのだと言って、トダカは微笑んでいる。
「そうじゃなきゃ、お寺に人が集まらないと思うんだけどね。」
 寺に、よく顔を出していたのはキラたちぐらいだ。それが、今は、シンやレイ、それからハイネ、さらに、オーナーまでがやってくるようになった。それは、ロックオンに甘えたいからだ。
「そういや、三蔵さんが、ラクスが来たら驚いてました。」
「うん、きみが住むまでは、あちらにいらっしゃるなんてなかったことだからさ。」
「トダカさんに、そう言ってもらうと、ほっとします。」
「アレハレルヤくんのことは、まだ少し先になるけど、きっと、また逢えるから待っててあげなさい。刹那君とティエリア君が、奪取してくるはずだ。きみが急かせるようなことをしてはいけない。」
 刹那たちに、アレハレルヤのことはどうなっているなんてロックオンが尋ねたら、奪還を急がせるだろう。今の組織の状態では、計画しても頓挫するのは目に見えているから、トダカは、それについては戒めた。
「・・はい・・・」
「まあ、私に八つ当たりでも愚痴でも好きなだけ吐けばいいさ。私は、きみの父親で、きみは、私の娘なんだから。こういうのは、私の役だ。」
 トダカにしたら、困った子供という感覚だ。まだ若いから、いろいろと先走ろうとするのは否めない。元の状態に戻りたいのに戻れないから焦れてしまうのが、若い証拠だと、内心で苦笑する。その不満を引き受けてやるのが、年長者の仕事だ。だから、わざと、娘さんなんて呼ぶのだ。
「あはははは・・・じゃあ、存分に付き合ってください。」
「ああ、なんなら三蔵さんに三行半でも叩きつけて、実家に帰っておいで。」
「いや、三蔵さんは優しいので、喧嘩するようなことはないですよ。」
「きみと悟空くんだけじゃないか? その意見は。」
「でも、俺が寝込んでれば、それなりに看病もしてくれるし、気遣いもしてくれてますよ? まあ、言葉はあれてすが・・・」
「うん、あれだからね。」
 ふたりして、注しつ注されつ、そんな会話をしている。ちょうど、五合瓶が空になる頃、ロックオンが程よい酔い加減になっていた。
「娘さんは、私を口説かないな? 」
「なんで、自分の父親を口説くんですか? 」
「婿は口説いたけど? 」
「あれは、病気です。・・・・俺、トダカさんが、そう言ってくれると嬉しい。もう家族なんて・・・二度と作れないと思ってました。」
 酔ってきたロックオンは、ぽろりと本音を零す。闇稼業に入る時に、それらとは決別したからだ。実の弟との関係もなかったもののように消した。だから、こんなふうに言い合える相手なんて、二度とないのだと思っていたのだ。テロリストになる時も、そう思った。だから、子猫たちにも踏み込ませないように壁は作っていたのだ。
「私には血の繋がった家族はないけど、キラ様たちみんなが家族みたいなものだと思っているよ。きみも、その仲間入りしたってだけだ。だから、私には何を言ってもいいし、何をしてもいい。そのつもりでいなさい。」
 壁はなくてもいい、と、トダカは言外に言って、さらにコップの冷酒を飲み干す。マイスターから外れて、壁を作らなくていい関係というものになったのだと解って欲しいと願っている。というか、ロックオンは、子猫たちに壁を作っていたというが、かなり薄いものだとは思う。そうでなければ、刹那は、あんなに精神的に不安定になったりしなかったはずだ。ちゃんと気持ちは通じている。ただ隠していた感情はあって、それが今のようなものだ。
「・・すぐには無理ですよ?・・・」
「そのうちでいいさ。おや、これは口説きになっているのかな? 」
「・・・・結構、きゅんとキたかも・・・」
「じゃあ、私も、まだまだ捨てたもんじゃないな。」
 笑い声を上げてトダカは、立ち上がる。いつもの酒量は飲んだので、そろそろ寝る時間だ。いつもよりゆっくりと飲んだから、酔ってはいないが、それでも気分はいい。少しずつ、ロックオンが壁を取り払ってくれているのを確認できたからだ。
「もういいんですか? 」
「深酒はよくないから寝るとしよう。片付けは明日でいいから、娘さんも休みなさい。」
 そうですね、と、ロックオンも立ち上がる。以前なら、いえいえ片付けぐらいしておきます、と、言っていたが、今日は放置するつもりらしい。自分の家なのだから、それでいいのだ。他人の家に泊まっているのではないから、好きなようにすればいい。
「明日は、うちのが来るけど、慌てて起きなくていい。ぐっすり寝なさい。目覚ましをかける必要はないからな。」
「はいはい、なんかふわふわといい感じなんで、ぐっすり寝られそうですよ、お父さん。」
 ちょっとふらつきつつロックオンが部屋へ引き上げる。ようやく、そんなことを言うようになったか、と、トダカも感慨深く、その背中を見送った。一年ほど前に、落ち込んでぐたぐだになってから、トダカたちじじいーずは、いろいろとアプローチしてきたが、ようやく、壁はなくなってきたというところだ。
 先は長いから、のんびりと進めればいいか、と、じじいーずも慌てていない。どうせ、ロックオンは、何年かは、こんな調子で過ごすことになるからだ。
 なるべく、一人にはしないようにしている。一人になると、碌でもないことを考えて勝手に落ち込むからだ。