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こらぼでほすと アッシー11

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「いえ、そっちは・・・ああ、まあ、気にはしてるんですが。もうすぐ、アレルヤたちの誕生日なんですよ。」
 現在、行方不明のアレハレルヤたちは、二月の末に誕生日がくる。カレンダーを見ると。それが思い出されるのだと苦笑する。
「そのうち纏めてやってあげてください。」
 八戒も、ああ、と、頷いてかわすような言い方に逃げた。まだ、奪還するには及ばない状態だから、それは何年か先になるはずだった。
「わかってますよ。」
「こっちの書類、整理してください。」
「はい。」
 何事もなかったかのように、仕事を続ける。また眠れてないんだろうなあ、と、八戒も思うのだが、言えば逆効果になりそうだから、スルーした。後で、トダカに言ってフォローしてもらおうとは考えた。同年代には愚痴れなくても、じじいーず筆頭のトダカなら、上手い具合に口を開かせてくれる。


 たまには、お里に帰ってきなさい、と、トダカから言われて週末は、里へ戻った。年明けしてから、悟空たちの後期試験が始まったので、シンとレイたちへの差し入れや夜食なんかも作っていたから、あれからトダカ家にはご無沙汰していた。金曜日の夜に戻って、晩酌の肴を用意する。
「一杯付き合ってくれるかい? 」
 体調はいいので、はいはいとロックオンも付き合う。それほど飲めないので、トダカはコップで、ロックオンはお猪口だ。
「また溜めてないかね? うちの娘さんは。」
 呼び出しを受けた時点で、そういうことだろうなあ、と、ロックオンも思っていた。思わず、八戒に吐いてしまったから、報告されてしまったのだろう。
「アレハレルヤたちの誕生日が、もうすぐなんです。」
「うん、そうだったね。」
「だから、ちょっと気になって。・・・それと、名前が・・・」
「名前? 」
 トダカには、こうやって愚痴めいたことを話すことがある。トダカは、それで何か難しいことを説教したりするわけではなくて聞いてくれる。いつも、自分が組織の戦術予報士にしていたことをしてくれている。
「刹那は、俺の弟の面通しに行ったんですが・・・・もし、刹那が、うちの弟を俺の代わりにマイスターにできると判断したら、ロックオン・ストラトスが二人になっちまうでしょ? それって、どうなのかな? って。」
「別に、同じコードネームじゃなくてもいいんじゃないのかい? 」
「いや、新しい機体にはなりますが、たぶん、俺が乗る前提で作られているので、今から生体認証とかいろいろと変更するのは面倒だと思うので、そのままのほうが、何かと便利なんですよ。」
 ほぼ同じ遺伝子とはいえ、網膜パターンや指紋、声紋などは異なるはずだが、それぐらいなら登録は簡単だ。ただ、組織内部の問題として、同じ顔の人間が違うコードネームというのは混乱するだろうと思うのだ。それに、コードネームで登録されている情報も、そのまま使えるので、そのほうが何かと、当人にも便利だろうと思う。新しいコードネームだと、セキュリティーの関係で、全ての情報閲覧ができない。いかにマイスターとして登録しても、それは最初から段階がある。
「それ、弟さんにカタロンへの情報漏えいを推奨してるってことかな? 」
「それぐらいのオプションはつけてやらないと。」
 カタロンでエージェントをやっているのだから、そちらとの関係は維持したままになるだろう。それに、以前調べた時のカタロンの武装は、あまりにもお粗末過ぎた。技術的なことを、ある程度、流すようなことはするだろうし、組織の動きも報告されるかもしれない。そういうことなら、ロックオンのコードネームのほうがセキュリティーレベルが低くなる。
「いや、組織を売ろうっていうわけじゃないんです。あっちにも、あっちの都合があるだろうし、簡単に勧誘にひっかかってもらうには、それぐらいのものは必要だろうと思いまして。」
 そういう説明は刹那にはしていない。スメラギ辺りは、コードネームを引き継ぐ意図を理解するだろうが、納得はしてくれるだろう。なにせ、ロックオンは早々とマイスターに確定したので、すでに候補だったものは他の配置に落ち着いているからだ。唯一、元候補で現砲撃手なラッセはいるのだが、ラッセはエクシアのマイスター候補だった。後方支援機と先発機では用途が違いすぎるので、当人の特性とは適合しない。
「それに、俺・・・あいつに死なれても困るので・・・・」
 歌姫様から実弟のデータをもらって、彼が所属する反政府組織についても調べた。あまりにもお粗末で、何かあったら確実に死ねそうだ、と、思ったのも推薦した理由のひとつだ。組織なら、というか、『吉祥富貴』がバックアップしてくれるから、生存率は格段に跳ね上がる。それらを踏まえた上で、ロックオンは弟に白羽の矢を立てた。
「くくくく・・・きみらしいな。それで、悩んでるのか。」
「だって・・・明らかに、自己満足でしょ? 」
「当たり前だろ? 人間、何がしかのエゴはあるものだ。・・・名前、愛着があるんだろ? 」
「はい。」
「じゃあ、そのままでいいじゃないか。」
「でも、刹那たちが混乱するでしょ? 」
 まだ先のことだが、正式にマイスターとして登録されたら、そちらのコードネームで、弟も呼ばれることになる。同じコードネームだと、刹那たちが混乱する。
「決まったら、きみは、本名を名乗ればいいじゃないか。ニールだったね。」
「それも寂しい気がして・・・それに、そのうち復帰したいと思っているので。」
「その時に、きみが新しいコードネームを貰えばいいだけだ。・・・・まあ、復帰するにしても、随分と先になるだろうし、その頃には、弟さんが名前を自分のものにしてるだろう。」
 トダカは、復帰できないだろうことは知っていて、そう言った。できないなんて、今は言えない。言えば、余計に落ち込むだろうからだ。
「トダカさん、俺、本当に復帰できるんですか? 」
「今のところは、無理だ。」
「それは今だけですか? 」
「どうだろう。実際問題として、きみの治療方法が確立されていないから、今は無理だということなんだがね。もし、治療できなければ、このままだ。」
「俺、なんか・・・以前より弱ってませんか? すぐ疲れるし、すぐ熱出すし・・・去年より弱ってるような気が・・・」
「そりゃ弱ってるさ。自分が何をしたか覚えてるだろ? 」
 かなり無茶をした。というか、当人も覚えていないくらいにおかしくなった。そこを指摘されると、ロックオンも俯くしかない。マイスターだった時は、気合と根性で乗り切っていたことが、まったくできなくなっている。プツンと糸が切れたように緊張感が持続しない。
「だからね、娘さん。もっとゆっくりと体力を回復させることが先決なんだ。・・・何にも役に立たないなんて思うんだろうけど、きみは、うちにはなくてはならない人になってると、私は感じているよ。シンたちの世話をしてくれるのも、オーナーのおかん役をやってくれるのも、私の晩酌の相手をしてくれるのも、全部、きみにしかできないだろ? 刹那くんたちの待機所だって、きみにしかできない。とりあえずは、そんなところからでいいんじゃないか? 」
「・・・役に立ってますか? 俺・・・」