Don't let go of my hand.
最初は携帯電話。
電話したいが家に忘れてきたから貸してくれ、という言葉に自分の携帯を渡した。ちょっと彼から目を離していたら、バキッっという音が聞こえ、再び彼に目をやると僕の携帯を握りつぶしていた。
口を開き、驚きを露わにしている僕に、彼は「悪い。ちょっとムカつくこと思い出したら力入っちまった」と呟いた。
次もまた携帯電話。
新しい携帯を一緒に買いに行って、その帰り道。
お詫びにおごると言った彼の共にファーストフード店に立ち寄り、買ってもらったハンバーガー片手に届いていたメールをチェックする。
携帯をいじる僕の向かいに座っていた彼は、ジッとこちらを見つめ僕の携帯に手を伸ばした。摘まむように携帯のサイドを挟み持つ彼に、何がしたいのかと首を傾げた瞬間、ピキッと音を立てて画面に亀裂が走った。
買ってから数時間で使用不可能となってしまった新しい相棒の姿に呆然としていると、彼は「何見てんのかと思ったんだが……すまねぇ、またやっちまった」と謝った。
その後すぐに再び携帯ショップへと向かい、新しい携帯を彼に買ってもらった。
そして、今日。
僕の部屋を訪れた彼に、お茶を用意していたら、バキッと大きな音が背後から聞こえる。
不穏な音に慌てて振り返ると、僕のパソコンの前に彼が座ったいた。その拳があてられたモニター画面は見事に粉砕されていた。
「わりぃ、手が滑った」
どこをどうしたらそうなるのか。あまりの光景に倒れそうになるのを抑え、深くため息をついてから彼を見つめ呟いた。
「静雄さん」
「すまねぇ」
「どうして僕の物を壊すんですか」
ここまで重なるとわざとだとしか思えない。
僕の言葉にきょとん、と目を丸くしてから不思議そうに彼は言った。
「だって、必要ないだろ?他のものなんて」
まるでそれが当たり前の事だと言う様に、無邪気に彼は笑った。
「お前には俺がいるんだから」
きっと、静雄さんはそれが悪い事だとは思っていないのだろう。
僕の意識を逸らすモノを排除しているだけ。
そう、思っているんだろう。
静雄さんは笑い、一点の曇りもなく澄んだ瞳で僕を見つめている。
そんな彼の姿に、僕の背筋に戦慄が走った。
そして悟った。きっと、僕は彼から離れられないと。
いつか彼は僕から全てを奪い、閉じ込めるのだ。
優しく微笑みながら。
電話したいが家に忘れてきたから貸してくれ、という言葉に自分の携帯を渡した。ちょっと彼から目を離していたら、バキッっという音が聞こえ、再び彼に目をやると僕の携帯を握りつぶしていた。
口を開き、驚きを露わにしている僕に、彼は「悪い。ちょっとムカつくこと思い出したら力入っちまった」と呟いた。
次もまた携帯電話。
新しい携帯を一緒に買いに行って、その帰り道。
お詫びにおごると言った彼の共にファーストフード店に立ち寄り、買ってもらったハンバーガー片手に届いていたメールをチェックする。
携帯をいじる僕の向かいに座っていた彼は、ジッとこちらを見つめ僕の携帯に手を伸ばした。摘まむように携帯のサイドを挟み持つ彼に、何がしたいのかと首を傾げた瞬間、ピキッと音を立てて画面に亀裂が走った。
買ってから数時間で使用不可能となってしまった新しい相棒の姿に呆然としていると、彼は「何見てんのかと思ったんだが……すまねぇ、またやっちまった」と謝った。
その後すぐに再び携帯ショップへと向かい、新しい携帯を彼に買ってもらった。
そして、今日。
僕の部屋を訪れた彼に、お茶を用意していたら、バキッと大きな音が背後から聞こえる。
不穏な音に慌てて振り返ると、僕のパソコンの前に彼が座ったいた。その拳があてられたモニター画面は見事に粉砕されていた。
「わりぃ、手が滑った」
どこをどうしたらそうなるのか。あまりの光景に倒れそうになるのを抑え、深くため息をついてから彼を見つめ呟いた。
「静雄さん」
「すまねぇ」
「どうして僕の物を壊すんですか」
ここまで重なるとわざとだとしか思えない。
僕の言葉にきょとん、と目を丸くしてから不思議そうに彼は言った。
「だって、必要ないだろ?他のものなんて」
まるでそれが当たり前の事だと言う様に、無邪気に彼は笑った。
「お前には俺がいるんだから」
きっと、静雄さんはそれが悪い事だとは思っていないのだろう。
僕の意識を逸らすモノを排除しているだけ。
そう、思っているんだろう。
静雄さんは笑い、一点の曇りもなく澄んだ瞳で僕を見つめている。
そんな彼の姿に、僕の背筋に戦慄が走った。
そして悟った。きっと、僕は彼から離れられないと。
いつか彼は僕から全てを奪い、閉じ込めるのだ。
優しく微笑みながら。
作品名:Don't let go of my hand. 作家名:セイカ