Don't let go of my hand.
怪我をした。
静雄さんとお付き合いしていて。だけど、僕にも彼には関わらせたくない交友関係がある。
ダラーズやブルースクウェア……情報源の一つである新宿の情報屋。
危ないからやめちまえ、なんて言われてもそれだけは了承できなかった。
静雄さんとの約束を断り、臨也さんと会った。その帰りに運悪く静雄さんと遭遇してしまった。
彼は僕を視界に入れ、不機嫌そうに眉を顰めて近付いてくる。
まずい。何か弁解する間もなく、僕の腕を掴んだ静雄さんは怒鳴った。
「何でお前からノミ蟲の匂いがすんだよっ!?」
「っ、い……たい!」
彼の手が力いっぱい僕の手首を握る。
顔を歪め、、うめいた僕の姿にハッとして静雄さんは手を離す。
くっきりと手形がつき、赤く腫れた僕の手首。ズキズキと走る激痛にもしかしたら骨にヒビが入ってるのかもしれない。
その時、今まで怒っていたのが嘘みたいに彼の顔が真っ青になる。
「動くな」
そう告げると、彼は僕を抱え上げ、新羅さんの所まで連れていった。
手首には案の定ヒビが入っており、全治二カ月。
包帯で固定された手首を撫でながらため息をついた僕に、いまだ表情を暗くしている静雄さんは言う。
「すまねぇ」
「頭に血が上って」
「俺はいっつもこうなんだ」
「今までも、気付いたらお前のモノ壊してたよな」
「俺が怖いか?」
「怖いよな」
「わりぃ……帝人」
正直驚いた。
今まで悪気なく行っていた行動の異常さに、僕を傷付けたことでやっと気付いたのか、と。
静かに彼を見守る僕に、静雄さんは緊張したように震える声で呟いた。
「俺は……お前の側にいない方がいいのか?」
紡がれた言葉に僕は目を見開いた。そして頬に冷たい感触を感じた。
僕は涙を流していた。
「どうして、今更そんなこと言うんですか」
ポロポロと瞳から涙を零す僕に、彼は瞠目している。
静雄さんは卑怯だ。
笑顔を見せて僕を縛りつけ、そんな彼から逃げる事なんてとっくの昔に諦めている。
静雄さんを愛してしまった僕は、もう彼から離れることなんてできない。
「僕は……あなたが好きです。だから、いいんです。怖くても、好きだから。それが静雄さんだから」
嗚咽混じりに告げる僕を、静雄さんは抱き締めてくれた。その腕が離さないと、言っているようだった。
【その手を離さないで】
破壊も、束縛も、暴力も、嫉妬も、
それがあなたの愛だというなら
僕は全て受け入れる
これが僕に出来る愛情表現
作品名:Don't let go of my hand. 作家名:セイカ