鉄の棺 石の骸10
1.
鉄の棺は暴かれた。
棺の中身は、砕けてしまった石ころ。
未来を変えたい一心で、欠片を繋ぎ合わせて一塊になった、元は二つの石ころだ。
「――不動遊星。私は、未来のあなた自身なのですよ」
遊星が、愕然としているのがZ-oneからも見て取れる。
当然と言えば当然だ。どう考えてもこの状況は、「未来の自分が、ネオドミノシティを抹殺しようとする」以外の何物でもないのだから。シティを守ろうとする自分の未来がこれなのだから、遊星がショックを受けるのは無理もない話だ。
外気に素顔をさらしたZ-oneは、この時間軸の遊星とシティの人々に向かって、自らと滅亡した世界の話を語る。以前、パラドックスやアポリア、アンチノミーが彼らに話したであろう過去話を、目いっぱいの警告を込めて相手に語りかける。
Z-oneがいた時代の状況。進化の果ての、モーメントの暴走。それに伴う、機皇帝の出現を。
手にした時械神の力と、「不動遊星」の戦略を持って、時に遊星を地上に叩き落とす勢いでZ-oneは攻撃をぶつける。済んでのところで浮上してきた遊星に、己の達した結論を表明する。
「未来の平和の為に、今この街を滅ぼすしかない」、と。
あまりにも今の遊星とかけ離れすぎたZ-oneの結論に、当然ながら遊星が猛反発した。
彼はZ-oneに反論する。自分は、何があろうとあきらめない。街を滅ぼしてまで、未来を救おうとは思わないのだと。
「お前は俺なんかじゃない!」
未来の「遊星」としてのZ-oneを、遊星は強く否定した。
「……まだ否定するのですか」
こうまでしても、遊星はZ-oneの話を聞いてくれないのか。「Z-oneたち」は遊星に軽く怒りを抱いた。
己の存在を否定するのは遊星の勝手だ。だが、未来で起こった真実だけは聞き届けて貰わねばならない。遊星だけではない、この時代に生きる全ての人々に、未来からの警告をしかと伝えねばならない。
Z-oneは続けて語る。Z-oneが未来の「遊星」である理由。
――かつてのZ-oneは、「不動遊星」として、人々の心を正しい方向に導けると信じていた。
そして、世界が滅亡した日の出来事を。
――Z-oneの抱いていた希望は、あの瞬間、絶望以外の何物でもなくなった。
Z-oneは、努めて冷静に、自分たちが経験した事実を説明する。その口の端から時折、「遊星」の嘆きが「Z-one」のそれと混ざって外に零れていく。
誰も救えなかったという嘆き。誰の力にもなれなかったという嘆き。
昔々に心の境目を失った「Z-oneたち」には、果たしてどちらがどちらなのか、自分たちにさえはっきりとは分からない。
分かっていることはただ一つ。持てる全ての思いを、実力行使なしで誰かに聞き届けてもらうことなど不可能だと思っていることだ。
決闘の合間にも、アーククレイドルは、下へ下へと落ちていく。
Z-oneを決闘で倒さぬ限り、その勢いは止められない。
鉄の棺は暴かれた。
棺の中身は、砕けてしまった石ころ。
未来を変えたい一心で、欠片を繋ぎ合わせて一塊になった、元は二つの石ころだ。
「――不動遊星。私は、未来のあなた自身なのですよ」
遊星が、愕然としているのがZ-oneからも見て取れる。
当然と言えば当然だ。どう考えてもこの状況は、「未来の自分が、ネオドミノシティを抹殺しようとする」以外の何物でもないのだから。シティを守ろうとする自分の未来がこれなのだから、遊星がショックを受けるのは無理もない話だ。
外気に素顔をさらしたZ-oneは、この時間軸の遊星とシティの人々に向かって、自らと滅亡した世界の話を語る。以前、パラドックスやアポリア、アンチノミーが彼らに話したであろう過去話を、目いっぱいの警告を込めて相手に語りかける。
Z-oneがいた時代の状況。進化の果ての、モーメントの暴走。それに伴う、機皇帝の出現を。
手にした時械神の力と、「不動遊星」の戦略を持って、時に遊星を地上に叩き落とす勢いでZ-oneは攻撃をぶつける。済んでのところで浮上してきた遊星に、己の達した結論を表明する。
「未来の平和の為に、今この街を滅ぼすしかない」、と。
あまりにも今の遊星とかけ離れすぎたZ-oneの結論に、当然ながら遊星が猛反発した。
彼はZ-oneに反論する。自分は、何があろうとあきらめない。街を滅ぼしてまで、未来を救おうとは思わないのだと。
「お前は俺なんかじゃない!」
未来の「遊星」としてのZ-oneを、遊星は強く否定した。
「……まだ否定するのですか」
こうまでしても、遊星はZ-oneの話を聞いてくれないのか。「Z-oneたち」は遊星に軽く怒りを抱いた。
己の存在を否定するのは遊星の勝手だ。だが、未来で起こった真実だけは聞き届けて貰わねばならない。遊星だけではない、この時代に生きる全ての人々に、未来からの警告をしかと伝えねばならない。
Z-oneは続けて語る。Z-oneが未来の「遊星」である理由。
――かつてのZ-oneは、「不動遊星」として、人々の心を正しい方向に導けると信じていた。
そして、世界が滅亡した日の出来事を。
――Z-oneの抱いていた希望は、あの瞬間、絶望以外の何物でもなくなった。
Z-oneは、努めて冷静に、自分たちが経験した事実を説明する。その口の端から時折、「遊星」の嘆きが「Z-one」のそれと混ざって外に零れていく。
誰も救えなかったという嘆き。誰の力にもなれなかったという嘆き。
昔々に心の境目を失った「Z-oneたち」には、果たしてどちらがどちらなのか、自分たちにさえはっきりとは分からない。
分かっていることはただ一つ。持てる全ての思いを、実力行使なしで誰かに聞き届けてもらうことなど不可能だと思っていることだ。
決闘の合間にも、アーククレイドルは、下へ下へと落ちていく。
Z-oneを決闘で倒さぬ限り、その勢いは止められない。