Heidenröslein
だれからミツバのことを聞いたのだろうと、土方は思った。
そして、ああ白髪ヤローか、と思った。
「まあ、そんなことはどうでもいい。とにかく僕は護ってもらわなくて結構だということを言いたかったんだ」
九兵衛はそんなふうに結論づけた。
かなり無理矢理っぽいが。
それが少しおかしくて、ふっと心がなごんだ。
黙ったままでいたけれど。
「……では、僕は帰る」
九兵衛は身体の向きを変え、歩きだした。
だから、土方も歩きだす。
すると。
「……僕は護ってもらわなくて結構だと言ったはずだ!」
「護ってるつもりはねーよ。こりゃ、犯人を刑務所に連行するようなもんだ」
「僕は犯人ではないし、うちは刑務所じゃない!」
そう怒鳴るのを聞きながら、土方は、九兵衛を送り届けたあとに屯所に帰ったら休みをもらって明日の昼ぐらいまでゆっくり寝よう、と決めた。
作品名:Heidenröslein 作家名:hujio