こらぼでほすと アッシー14
エクシアの整備は、丸二日かかった。完全オーバーホールでなくても、それなりに時間はかかる。別荘で二泊して、マンションまで送ってもらった。もちろん、アッシーはハイネだ。この二日間、ハイネは、親子猫の傍に居座っていた。
「情報の奪取を阻止しなけりゃならんからな。」
ニヤリと悪戯な笑顔で、そう言ったので、親子猫も、ハイネの目から、わざと逃れるような真似は、あえてしなかった。アレハレルヤたちのことは、気になっているが、今は奪取できないから、情報も意味がないからだ。
部屋に入ったら、玄関にはたくさんの靴がある。何事だよ? と、思いつつ居間に入ったら、いきなりクラッカーの洗礼を受けた。
四方八方から飛んで来るので避けられずに、紙ふぶきと紙リボンまみれにされて、はっと気付いたら、刹那が自分の右前に飛び出て庇っていた。右側からのものは、まったく見えていないから、そちらを気にしてくれたらしい。
「はっぴーばーすでーーーママっっ。」
代表して、キラが叫ぶと、勢揃いの年少組も、口々に、お祝いの言葉を述べる。パチパチと拍手して、それから悟空が、ロックオンの手を引く。
「なんなんだよ? 」
「まだ気付いてないの? ママ。今日、誕生日だろ? 」
「え?・・・あ・・・俺? 」
「そうだよ。俺、ママなんて、ロックオンしかいないって。」
はい、座って、と、こたつに誘導されて、強制的に座らされた。目の前には、大きなホールケーキがあって、二本の大きなろうそくと、小さな七本のろうそくがある。レイとシンが、それに火をつけて、ニッと笑った。
「準備完了っす。キラさん。」
「僕らからの贈り物は、このコーラスだよ。」
せーのーで、と、年少組が、ニコニコと笑いつつ、バースディーソングを合唱する。モノなんて贈っても恐縮されてしまうから、メインは、そういうものにした。
「はい、おめでとうーーママ。吹き消して。」
おう、と、命じられるままに、ロックオンがろうそくを吹き消す。また、パチパチと拍手が続く。いきなりなので、雰囲気についていけない親子猫は、ちょっと困った顔になっているが、意図は理解した。サプライズを仕掛けられたのだ。初出勤の騒ぎといい、今年は、サプライズ担当なのか? と、呆れてしまう。
「またか? キラ。」
「だって、覚えてないママが悪いんだもん。はい、僕とアスランからは、これ。」
キラが差し出したのは、アイルランドの典型的なお菓子の詰め合わせだった。冬の長いアイルランドでは、お菓子は、楽しみのひとつで、特にチョコレートは絶品だった。味見して、メロメロになったキラは、「ものすごくおしいくて、僕、ハマっちゃったよ。」 と、感想まで述べた。
「取り寄せられるものなので、有名どころしかありませんが。」
アスランが、そう付け足す。ポテトチップも独特だし、オレンジジャムの挟まったチョココーティングクッキーというのも珍しい。
「これ、まだあるんだなあ。」
子供の頃に食べていたメーカーの文字に、ロックオンも微笑む。闇稼業に入ってから、地元へ戻ることも、あまりなかったし、マイスターになってからは、一年に一度戻るだけだったから、そんなものを手にしたことがなかったのだ。
「次、俺とレイね。図書カードにしようかと思ったんだけどさ。あんまりだから、一冊ずつ本を選んだんだ。いつもありがとう、ママ。」
「俺は、娯楽に疎いので・・・あなたと会話したことを参考にしてみました。」
シンの手からは、流行のミステリー、レイの手からは、世界の絶景写真集を贈られた。
「最後に、俺。でも、これ、三蔵と二人から。三蔵のお古は、もう廃棄したからな。」
ちょっとでかい悟空からのプレゼントは、緑色の半纏だった。三蔵の使い古したのを着ていたのだが、そろそろ綻んでいたから、相談して、これにしたのだと言う。
そして、ハイネが刹那の背後に回り、頭に緑のリボンを飾った。さらに、珍しい黄緑色のバラの花束を取り出した。
「じじいーずからは、黒子猫をプレゼント。それと、これは、俺から愛するママニャンにな。さらに、この部屋中にある花は、フェルトちゃんと、紫子猫とオレンジ子猫からの連名のプレゼント。たくさんの花を贈ってくださいってことで。鷹さんが用意した。沙・猪家夫夫というか、主に八戒だが、この料理の用意してくれた。あと、ケーキはイザークのチョイスだ。」
気付かなかったが、部屋には、たくさんの花が飾られていた。匂いと色合いも考えられていて、とても綺麗だ。
「・・あ、ああ・・・」
とすっと押されて刹那が、ロックオンの横に座り込む。その手に、キラが箱を渡した。
「お菓子だ。」
「うん? 」
「あんたの故郷でお菓子を買ってきた。」
へぇーと持ち上げたが、そのラベルに描かれているのは、ユニオンの国旗だったりするので、はい? と、親猫も首を傾げる。
「あのね、ママ。刹那は、百貨店でお客さんが一番多かったお菓子を買ってきたんだけど、ユニオンのだったんだ。」
「ああ、そういうことか。ありがとな、刹那。それから、みんなもありがとう。今度からはやらないでくれよ? 俺は、もう祝ってもらう年じゃねぇーからな。」
「そうはいかないんだなあー。うちの店は、スタッフの誕生日は、何かしらやることになってんだよ。全員とは言わないけどさ。」
一番派手なのは、キラとオーナーのものだが、たぶん、その次ぐらいのランクで、ロックオンのものも毎年行なわれることになるだろう。なんせ、年少組のおかんだから。
「とりあえず、ケーキ切って、アスラン。時間なくなっちゃう。」
年少組は、『吉祥富貴』へ、とんぼ帰りして、本日のイベントデーの準備をしなければならない。今年は、ホストたちが、お内裏様仕様で、お出迎えなんてことになっているので、着付けが大事なのだ。
「レイ、皿出してくれ。」
すぐに片付けられるように紙皿が用意されて、アスランが等分に切り分けていく。それをレイとシンが皿に載せて、悟空が準備していた紅茶を、こちらも紙コップに注ぎ込んだ。
「忙しいんじゃないのか? アスラン。」
今日のイベントデーは、ロックオンも聞いていた。予約も多かったので、手伝いに行こうと思ったら、ハイネに遮られた。
「じじいーずからのプレゼントを放り出すつもりか? トダカさんにどやされるぜ? あんたは、黒子猫と、のんびりお祝いをすればいい。・・・明日、また寺まで配送してやるから、それまでな。」
そろそろ返せ、と、坊主が怒っているので、明日には寺へ戻すことになっている。今日一日くらい、黒子猫と時間を使えばいい。そのためのじじいーずからの贈り物だ。
「ママ、食べてくれないと、僕らが食べられないんだけど? 」
キラが、目の前のチョココーティングされたケーキを睨みつつ、ぼやく。ごめんごめんと謝りつつ、ロックオンがケーキを一口食べた。大人味の洋酒の味が利いているザッハトルテだ。
それを目にして、一斉に年少組も食べる。
「うまっっ。めっちゃうまっっ。」
「さすが、イザークだよね。」
「ブランデーとかワインと合いそうな味だ。」
「情報の奪取を阻止しなけりゃならんからな。」
ニヤリと悪戯な笑顔で、そう言ったので、親子猫も、ハイネの目から、わざと逃れるような真似は、あえてしなかった。アレハレルヤたちのことは、気になっているが、今は奪取できないから、情報も意味がないからだ。
部屋に入ったら、玄関にはたくさんの靴がある。何事だよ? と、思いつつ居間に入ったら、いきなりクラッカーの洗礼を受けた。
四方八方から飛んで来るので避けられずに、紙ふぶきと紙リボンまみれにされて、はっと気付いたら、刹那が自分の右前に飛び出て庇っていた。右側からのものは、まったく見えていないから、そちらを気にしてくれたらしい。
「はっぴーばーすでーーーママっっ。」
代表して、キラが叫ぶと、勢揃いの年少組も、口々に、お祝いの言葉を述べる。パチパチと拍手して、それから悟空が、ロックオンの手を引く。
「なんなんだよ? 」
「まだ気付いてないの? ママ。今日、誕生日だろ? 」
「え?・・・あ・・・俺? 」
「そうだよ。俺、ママなんて、ロックオンしかいないって。」
はい、座って、と、こたつに誘導されて、強制的に座らされた。目の前には、大きなホールケーキがあって、二本の大きなろうそくと、小さな七本のろうそくがある。レイとシンが、それに火をつけて、ニッと笑った。
「準備完了っす。キラさん。」
「僕らからの贈り物は、このコーラスだよ。」
せーのーで、と、年少組が、ニコニコと笑いつつ、バースディーソングを合唱する。モノなんて贈っても恐縮されてしまうから、メインは、そういうものにした。
「はい、おめでとうーーママ。吹き消して。」
おう、と、命じられるままに、ロックオンがろうそくを吹き消す。また、パチパチと拍手が続く。いきなりなので、雰囲気についていけない親子猫は、ちょっと困った顔になっているが、意図は理解した。サプライズを仕掛けられたのだ。初出勤の騒ぎといい、今年は、サプライズ担当なのか? と、呆れてしまう。
「またか? キラ。」
「だって、覚えてないママが悪いんだもん。はい、僕とアスランからは、これ。」
キラが差し出したのは、アイルランドの典型的なお菓子の詰め合わせだった。冬の長いアイルランドでは、お菓子は、楽しみのひとつで、特にチョコレートは絶品だった。味見して、メロメロになったキラは、「ものすごくおしいくて、僕、ハマっちゃったよ。」 と、感想まで述べた。
「取り寄せられるものなので、有名どころしかありませんが。」
アスランが、そう付け足す。ポテトチップも独特だし、オレンジジャムの挟まったチョココーティングクッキーというのも珍しい。
「これ、まだあるんだなあ。」
子供の頃に食べていたメーカーの文字に、ロックオンも微笑む。闇稼業に入ってから、地元へ戻ることも、あまりなかったし、マイスターになってからは、一年に一度戻るだけだったから、そんなものを手にしたことがなかったのだ。
「次、俺とレイね。図書カードにしようかと思ったんだけどさ。あんまりだから、一冊ずつ本を選んだんだ。いつもありがとう、ママ。」
「俺は、娯楽に疎いので・・・あなたと会話したことを参考にしてみました。」
シンの手からは、流行のミステリー、レイの手からは、世界の絶景写真集を贈られた。
「最後に、俺。でも、これ、三蔵と二人から。三蔵のお古は、もう廃棄したからな。」
ちょっとでかい悟空からのプレゼントは、緑色の半纏だった。三蔵の使い古したのを着ていたのだが、そろそろ綻んでいたから、相談して、これにしたのだと言う。
そして、ハイネが刹那の背後に回り、頭に緑のリボンを飾った。さらに、珍しい黄緑色のバラの花束を取り出した。
「じじいーずからは、黒子猫をプレゼント。それと、これは、俺から愛するママニャンにな。さらに、この部屋中にある花は、フェルトちゃんと、紫子猫とオレンジ子猫からの連名のプレゼント。たくさんの花を贈ってくださいってことで。鷹さんが用意した。沙・猪家夫夫というか、主に八戒だが、この料理の用意してくれた。あと、ケーキはイザークのチョイスだ。」
気付かなかったが、部屋には、たくさんの花が飾られていた。匂いと色合いも考えられていて、とても綺麗だ。
「・・あ、ああ・・・」
とすっと押されて刹那が、ロックオンの横に座り込む。その手に、キラが箱を渡した。
「お菓子だ。」
「うん? 」
「あんたの故郷でお菓子を買ってきた。」
へぇーと持ち上げたが、そのラベルに描かれているのは、ユニオンの国旗だったりするので、はい? と、親猫も首を傾げる。
「あのね、ママ。刹那は、百貨店でお客さんが一番多かったお菓子を買ってきたんだけど、ユニオンのだったんだ。」
「ああ、そういうことか。ありがとな、刹那。それから、みんなもありがとう。今度からはやらないでくれよ? 俺は、もう祝ってもらう年じゃねぇーからな。」
「そうはいかないんだなあー。うちの店は、スタッフの誕生日は、何かしらやることになってんだよ。全員とは言わないけどさ。」
一番派手なのは、キラとオーナーのものだが、たぶん、その次ぐらいのランクで、ロックオンのものも毎年行なわれることになるだろう。なんせ、年少組のおかんだから。
「とりあえず、ケーキ切って、アスラン。時間なくなっちゃう。」
年少組は、『吉祥富貴』へ、とんぼ帰りして、本日のイベントデーの準備をしなければならない。今年は、ホストたちが、お内裏様仕様で、お出迎えなんてことになっているので、着付けが大事なのだ。
「レイ、皿出してくれ。」
すぐに片付けられるように紙皿が用意されて、アスランが等分に切り分けていく。それをレイとシンが皿に載せて、悟空が準備していた紅茶を、こちらも紙コップに注ぎ込んだ。
「忙しいんじゃないのか? アスラン。」
今日のイベントデーは、ロックオンも聞いていた。予約も多かったので、手伝いに行こうと思ったら、ハイネに遮られた。
「じじいーずからのプレゼントを放り出すつもりか? トダカさんにどやされるぜ? あんたは、黒子猫と、のんびりお祝いをすればいい。・・・明日、また寺まで配送してやるから、それまでな。」
そろそろ返せ、と、坊主が怒っているので、明日には寺へ戻すことになっている。今日一日くらい、黒子猫と時間を使えばいい。そのためのじじいーずからの贈り物だ。
「ママ、食べてくれないと、僕らが食べられないんだけど? 」
キラが、目の前のチョココーティングされたケーキを睨みつつ、ぼやく。ごめんごめんと謝りつつ、ロックオンがケーキを一口食べた。大人味の洋酒の味が利いているザッハトルテだ。
それを目にして、一斉に年少組も食べる。
「うまっっ。めっちゃうまっっ。」
「さすが、イザークだよね。」
「ブランデーとかワインと合いそうな味だ。」
作品名:こらぼでほすと アッシー14 作家名:篠義