サウザント
「と、言う夢を見たんです」
「………あー…、ソウ?」
「はい」
そうして、ジュリオは長い長い話を終えた。今はジュリオの隠れ家、俺達はベッドの淵に腰掛けてアイスクリームを食べている――と言っても、カップの中のアイスクリームは長い話を聞いている間に、ほとんど溶けてしまっていた。
「俺が上品で、ジュリオががさつで女好きで」
「はい」
「俺はお坊ちゃんでジュリオが下町育ちで……って」
「正反対、ですよね…」
「変わった夢見たんだな」
「はい」
ジュリオは不思議と嬉しそうだった。喜ぶよりは微妙な気持ちになりそうな気がする、と俺は思うんだけど。
「ジャン、さんは」
「ん?」
「…もし俺達が、本当にそんな感じだったら…どうですか……?」
「え………」
ジュリオは溶けてしまったアイスクリームを意味もなくスプーンでいじりながら、はにかむように訊いてきた。
俺が返事に窮していると、ジュリオはそこいらのお嬢様たちがまとめて卒倒しそうな王子様スマイルを浮かべて、俺の手を取った。自然に指が絡められて、ドキリとした。
「夢の中の俺は、俺と正反対で、夢の中のジャンさんは、ジャンさんと正反対なんですけど、……それでも、夢の中の俺もジャンさんのことが…大好きでした」
「…………」
「好きです、ジャンさん」
そう言うと、ジュリオは俺の唇に、慈しむような、触れるだけのキスをした。それこそ、お姫様にするような、さ。
「……ジュリオ」
「はい、ジャン…」
ジュリオが「さん」を付ける前に、俺はジュリオに触れるだけの口付けを返す。
「さんは禁止、だろ?」
「あ、……えっ、と……」
「ジュリオ」
「…………ジャン」
「良くできました」
「っ…」
目を見て笑いかけてやると、ジュリオは分かりやすく真っ赤になって目を逸らした。俺はアイスクリームのカップを置くと、ジュリオの頬へ手を添えた。
そしてジュリオとまた視線を絡めると、追い討ちを掛けるように口を開いた。
「……それと、俺はジュリオが今のジュリオじゃない、なんて想像できないから、もしジュリオがそんなジュリオだったらとかは良く判らないけどとにかく、………夢の中でも俺が、お前を好きで良かった」
「っ――……!ジャ、ン…」
そしてどちらともなく、また触れるだけの口付けを一つ。
俺がジュリオとこうなったのが、色んなものを捨てて何かを選んだ結果なら、ジュリオの夢も、なかなかに有り得たことなのかも知れない。三千世界に一つくらいは。
俺は神さまじゃないから、10億の世界がどんな世界かなんてわからない。このちっぽけな1個の世界ですら掌に入らないんだから。
別に、神さまになりたいわけでも、全ての世界を掌握したいわけでもない。そもそも神さまを本当に信じているワケでもない。神さまは縋るのに、都合がいいから――……ただ、もし望めるなら。
三千世界のどの俺も、ジュリオを愛していたらいい。三千世界のどの俺も、こいつに愛されていたら――なんて、思えるくらいに幸せなんだ、神さま。