振り出しに戻る
「・・・・・そうだな。ではその使命の為に、そろそろ出発しなければな」
「ルシフェル」
「まだ何か?」
青い瞳が私を貫く。その奥に潜んでいる想いはデジャヴュだ。いや、この世界では初めてか。
「私は、貴方も守りたいと思うんだ」
そう言って、口の端にあるか無しかの笑みを浮かべ、目を見開いて驚く私を置いて彼は地上へ降りて行った。
重力に吸い込まれていった金髪の後ろ姿を見送り、私は、繰り返しの世界にまた一人取り残された。
蓄積されていく私の記憶の中で、彼は何回死ぬのだろう。
何回、戦うのだろう。
何回、傷付くのだろう。
何回、この世界を美しいと言うのだろう。
何回、彼に置き去りにされるのだろう。
記憶と共に蓄積されていくのは確かな感情。
私はまた彼を失う。
私はまた言葉を聞き損ねる。
私はまた言葉を返し損ねる。
この想いは、何処に行き着くのだろう。
変わらない彼。変わらない私。
願わくば、次の世界では、彼も私も最善の選択ができますように。
そしてまた、この想いと共に、世界は振り出しに戻る。