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一歩前進ってことで!

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帝人の皮膚に、吸いついて、その、痕を付ける、とか。
えええなにそれ、なんてエロゲ?いいの?付けちゃっていいの!?所有印とかいうでしょあれって、帝人君は俺の物発言!?俺そんな大胆なことしていいの?これって夢じゃないの?現実!?
混乱も最高潮で、傍目にもグルグルしていることが分かる顔だったけれども、帝人はあえて何も言わずに待つ。
いい加減奥手すぎる臨也に、時折帝人のリミッターが外れそうになるので、このくらいのガス抜きはさせていただきたいものだ。まあ五月の臨也の誕生日には押し倒す予定だけど。
それまでに手を出してくれなかったらもちろん、問答無用で襲う覚悟を、帝人は決めているのである。
「い、行きます」
臨也がゴクリと息を飲む。
「はい、どうぞ」
帝人はあくまでも爽やかに答えた。そして臨也の唇がゆっくりと帝人の鎖骨の下あたりに降りて、暖かい感触が触れる。吐き出された息がぞわりと帝人の皮膚を撫でた。
唇が触れたところから、溶け合う様な感覚が臨也の思考回路をじわりと染める。ああ、今触れているのだ、と。
そう思うだけで幸せに溺れてしまいそうだ。
「……っ」
吸い上げられる感覚に、帝人が思わず息を詰めた。普段から積極的な接触は控えめな臨也なので余計に体温が上がってくる。目の前のさらりとした髪に手を回して、ぎゅっと頭を抱きしめたなら、一度離れた臨也の唇が違う場所にもう一度落ちた。
「っあ、」
無意識なのか、ボタンをもう一つ外し、もう少し下に。ちゅっと音を立てて強く吸われる皮膚は簡単に色づいて、臨也の痕をてんてんと残す。
おお、これは!?
帝人は思わず声に出して「よっしゃ」とでも叫びたい気持ちを押さえた。せっかく臨也が積極的になっているのだから、ムードを壊すようなマネはやめよう。だがしかし、これこそ帝人が待ちに待った瞬間なのではなかろうか。
あの臨也が!
乙女で恥ずかしがり屋の臨也が!
自ら積極的にキスマークを刻むとか!
なんという奇跡、これが誕生日マジックというものか!
よし、頑張れ臨也さん、そのまま僕を押し倒すんですよ!と、帝人は心のなかで声援を送った。幸いにもすぐそこにソファがあるので、背中が痛くなることもないだろう、とまで考えている。
じらされまくってここまできたけれど、ようやく今、臨也が素敵な旦那様としての役目を果たそうとしているのである、嫁としては場所に文句など言うまい。
じりじりと後ずさって、すぐそこのソファまで誘導し、帝人は臨也の頭を抱えたままていっと後ろ向きに倒れた。ぼすりと二人の体重を受け止めたソファは軽く軋んだが、気にする素振りもなく臨也は帝人の首筋にもう一度吸いつく。
そこは見えるところだからやめてほしいかも、とは思うものの、声をかけたら臨也が我に返ってしまいそうなのでされるがままに任せた。首筋からだんだんと降りて、鎖骨まで丁寧にいくつものキスマークをつけた臨也が、
「帝人君」
と、低い声で呼びかける。
「はい、僕ならいつでもいいですよ」
ぐっと親指を立てそうな勢いで肯定した帝人に、そうじゃないんだ、と臨也。
のっそりと顔を起し、帝人と視線を合わせて、真面目な顔で何を言うのかと思えば。



「恥ずかしくて、死ねる……」



ばたり。
「……え、臨也さん?」
帝人の胸に崩れ落ちた臨也、顔は真っ赤、額は赤い。
……熱?
「ちょ、ちょっと臨也さん!?臨也さあああん!」



結局、知恵熱を出して寝込んだ臨也は、その後三日間、帝人をまともに見ることが出来ずに逃げ回ったという。
……春は、まだ遠い。
作品名:一歩前進ってことで! 作家名:夏野