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神月みさか
神月みさか
novelistID. 12163
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ハッピー! バースデー

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《 静雄の場合 》



 もうじき、最近ひどく気になっているあの子の誕生日らしい。
 平和島静雄は街で探し当てたその子に声を掛けた。

「あー……竜ヶ峰、その、もうじき誕生日って聞いたんだが……」

 その子は二十センチ以上ある身長差に思い切り仰向きながら答えた。

「あの、そんな話よりも先に、傷の手当をした方がいいと思うんですが……」
「あ? ああ、かすり傷だ。もう塞がる」
「でもまだ血が流れていますよ……」
「気のせいだ。んなことより、お前の誕生日ってよ……」
「……はい、もうすぐ17になります」

 それ以上怪我のことを言っても無駄だと理解したのだろう、少年は素直に頷いた。

「ですが、誰から聞いたんですか? セルティさんにも教えていなかったんですが……」
「あー……さっきノミ蟲がよ、訳わかんねえことほざきながら襲い掛かってきたんだが……」

 折原臨也というのはひとを使って静雄を襲わせることはよくあったが、いきなり自分から襲い掛かってくるようなことはまずない、裏でこそこそ動くのが好きな蟲だった。
 それなのに今日、いきなり静雄の背後から奇襲を掛けてきたのだ。それもひとりきりで。
 勿論返り討ちにしてやったのだが、戦闘の最中、いつにもまして意味のわからないことを叫んでいたのだ。
 曰く

「……竜ヶ峰の誕生日プレゼントに俺の首をくれてやるとかなんとか……こーゆーのは自分の手で獲らなけりゃ意味がねえとかなんとか……」
「確かに訳がわかりませんね」

 静雄の首を欲しがる筈もない少年は、小首を傾げて不思議そうに応じた。

「でもまあ、訳のわからないところが臨也さんの個性ですから」
「ヤな個性だな。……でよ、その、お前の誕生日ってのが本当なら……」
「臨也さん、情報屋さんとしての腕は確かなんですよねぇ。どこで調べたんでしょうか」
「あー……そのよ、俺からもなんか贈りてえんだが……」
「結構です」

 返答は反射といっても良い速度で返ってきた。

 静雄はがっかりと肩を落とした。

「……だよな、迷惑だよな……」
「いえ。嬉しいです。そう言って貰えたことだけで、充分すぎるくらい嬉しいです。ですからそれ以上はなにも要りません」
「……竜ヶ峰……」

 静雄は急激に明るい表情と声を取り戻した。単純で簡単な男だ。

「けどよ、俺としては、なんか贈りてえんだ。俺の自己満足に過ぎねえんだけどよ、悪ィが……お前の欲しいモンならなんでもいい、受け取って貰えねえか……?」
「……静雄さん……」

 少年は細い眉を寄せて考え込んだ。
 しかし『否』という答えを受け取る気のない静雄は再度促した。

「欲しいモンを言え。俺にくれてやれるモンならなんでもやる」
「……なんでも、ですか?」
「ああ、なんでもだ」

 少し重いだろうか、と思わなくもなかったが、静雄は『なんでも』と繰り返して頷いた。

 少年はそれでも迷っていたようだったが、躊躇いながら口を開いた。

「――でしたら、臨也さんが欲しいです」
「……わり。さっき頭もちょっと打ったのかも知れねえ。変な風に聞こえちまったんでよ、もう一度言ってくれねえか?」
「ですから、臨也さんが欲しいです」
「…………」

 あんな蟲を欲しがるなんて、どうかしている。自分の知らない内にあの蟲の毒にやられてしまったのだろうか。
 ――いやいや、男の子の中には蟲のコレクションを趣味にしている子も少なくないと聞いたことがある。静雄の周りにはひとりもいなかったが、しかしこの少年はそのひとり目で、あの蟲をピンで留めて標本にしたいのかもしれない。

「――いや、寄生蟲系はビン詰めか?」
「なんのことでしょう?」

 静雄が考え込んでいた間にハンカチで顔についた血を拭っていたらしい少年が首を傾げた。
 作業の内容上、妙に距離が近かった。

「――っ、いや、あんなゴミ蟲手に入れてどうすんのかとよ――っ」
「勿論、静雄さんからの贈り物でしたら、宝物として大切にしますよ」
「………」
「あ、あんまり俯かないで下さい。傷に触ってしまいます」

 このハンカチ、消毒してないんですと続ける少年の表情は自然で、極当たり前のことを言っている様子だ。
 宝物にするという言葉も、彼にとっては自然で当たり前のものなのだろう。

「……大切に、すんのか? ……アレを?」
「はい、勿論です」
「胸のド真ん中に五寸釘とか刺さねえか?」
「そんなことはしませんよ」
「磔たりホルマリンに浸けたりしねえか?」
「しません。ちゃんと鍵の掛かる箱にでも入れて、大事に仕舞っておきます」
「………」

 静雄は少し考えた。

「……箱に詰め込んで、仕舞っとくのか?」
「だって、なくしたり壊したりしたら大変でしょう? せっかくのプレゼントなのに」
「……竜ヶ峰の部屋ってよ、あんなデカイ蟲の入ってる箱を置けるくらい、広いのか?」
「ああ……そこは問題ですよねぇ……。防犯もイマイチですし、泥棒でもない会社員のひと達ですら簡単に侵入できちゃうくらいですから……盗まれたりしたら、どうしよう……」
「……ならよ、誰にも見つからねえ場所に隠しときゃいいんじゃねえか?」
「そんな場所、あるでしょうか? 東京って、どこに行ってもひとがいますし――」
「埋めりゃいい。土ん中に。建設中のビルの基礎にでも仕舞い込んどきゃ、誰にも盗られねえだろ」
「ああ――ああ、そうですね。確かに、それなら安心です。盗まれる心配もなくしてしまう心配もないですよね」
「だったらよ――」

 表情を明るくした帝人に、静雄は飛び切りの笑顔を見せた。
 まるで獲物に飛び掛る寸前の猛獣のような笑顔だ。

「だったら、俺が箱に詰めて鍵を掛けて埋めといてやる。お前の腕じゃ重くて大変だろ? そんで、お前の誕生日に埋めた場所を教えて鍵をプレゼントする。――それでどうだ?」
「本当ですか? 嬉しいです! すごいです! そんなプレゼント貰うの、生まれて初めてです!」
「そりゃ良かった」

 静雄は凄絶な表情でほくそ笑むと、はしゃぐ少年の頭を優しく撫でた。

「じゃあよ、朝一で届けるから、それから俺と付き合ってくれるか?」
「はい、勿論です! その日は春休みで一日空いていますし」
「ありがとよ」

 付き合うのはその一日だけとは言っていないのだが、快諾してくれた相手に余計なことを言うのは野暮だ。

 静雄は短い黒髪をくしゃりと撫でると、バースデープレゼントを見失った場所へと再度向かった。