三年後の答え合わせ
高校の三年間は何かとあっという間で、何時の間にか卒業式を迎えていた。
池袋に来てから起こった数々の出来事は完全、とは言わなくてもある程度の収束は見せ、今ダラーズは以前のような姿を取り戻した。
失ったものも多いけれど、取り戻せたものだってあった。大切だって、気付けたものも。
そして沢山沢山時間をかけて、僕なりに一生懸命考えて導き出した答えを、認めてくれる人なんていないかもしれない。
でも、それでも僕は。
***
朝の冷たい空気が肌に触れる。朝が来たのかとまだ碌に働かない頭で考えて身体を起こした。
良い素材で作られたパジャマを着てはいるが、身体を動かした時に腰に走った鈍い痛み、肌の彼方此方にある赤い所有印は確実に“アレ”の証拠だ。
どうして此処にいるんだっけ、嗚呼そうか。『高校も卒業したし、大学も決まったしいいだろう?』とか言い包められてマンションに連れてこられたんだ。
夕飯を一緒に一緒に食べたのはまだ良かったけれど、勿論素直に家に帰してもらえる筈もなく、無駄に大きなベッドの上でそれはもう綺麗な笑顔を浮かべながら、散々に弄られて焦らされて可愛がられて――
記憶を辿るのに比例するように帝人の顔は赤く染まっていった。
そりゃあもう何回もやっているが、元々そういう方面に疎かった自分が慣れる筈もなく。恥ずかしさに耐え切れなくなったのかシーツ包まると、ぼふんという盛大な音を響かせてベッドに沈み込んだ。
すぐに静寂が戻った室内で、シーツに包まれながら帝人は熱い自分の顔を手で覆う。
その時、冷やりとした感触が顔に触れた。そして硬い感触。
昨日のことでいっぱいだった帝人の頭は微かな冷静さを取り戻す。
手を外し、その感触のもとへ視線を送る。それは、
「ぇ、……?何、これ」
段々とクリアになっていく思考の中、視界の中でそれはカーテンの隙間から差し込む光の中できらきら光った。
昨日まで、否行為が終わって眠りについてしまうまでは確実にそれは無かった。
「これ、って……確か、」
見たことのあるデザインであるそれを、帝人はベッドに沈み込んだままぼんやりと眺める。
これは、恐らく、多分、記憶が正しければ。
「い、ざ…さんの…」
何時も彼の指にあったそれは、その指輪は、今は己の指でその存在を主張している。
シンプルながらも決して安物ではない筈。果たして自分のバイト代をどれだけ貯めれば買えるのだろうか。
しかもその指輪の所在位置は左手薬指。幾ら恋愛事には疎い帝人でもその位置の意味を知らない筈もなく。
「っ、」
かああ、と更に帝人の顔が赤く染まったのと同時に、部屋の扉ががちゃりと開いた。
池袋に来てから起こった数々の出来事は完全、とは言わなくてもある程度の収束は見せ、今ダラーズは以前のような姿を取り戻した。
失ったものも多いけれど、取り戻せたものだってあった。大切だって、気付けたものも。
そして沢山沢山時間をかけて、僕なりに一生懸命考えて導き出した答えを、認めてくれる人なんていないかもしれない。
でも、それでも僕は。
***
朝の冷たい空気が肌に触れる。朝が来たのかとまだ碌に働かない頭で考えて身体を起こした。
良い素材で作られたパジャマを着てはいるが、身体を動かした時に腰に走った鈍い痛み、肌の彼方此方にある赤い所有印は確実に“アレ”の証拠だ。
どうして此処にいるんだっけ、嗚呼そうか。『高校も卒業したし、大学も決まったしいいだろう?』とか言い包められてマンションに連れてこられたんだ。
夕飯を一緒に一緒に食べたのはまだ良かったけれど、勿論素直に家に帰してもらえる筈もなく、無駄に大きなベッドの上でそれはもう綺麗な笑顔を浮かべながら、散々に弄られて焦らされて可愛がられて――
記憶を辿るのに比例するように帝人の顔は赤く染まっていった。
そりゃあもう何回もやっているが、元々そういう方面に疎かった自分が慣れる筈もなく。恥ずかしさに耐え切れなくなったのかシーツ包まると、ぼふんという盛大な音を響かせてベッドに沈み込んだ。
すぐに静寂が戻った室内で、シーツに包まれながら帝人は熱い自分の顔を手で覆う。
その時、冷やりとした感触が顔に触れた。そして硬い感触。
昨日のことでいっぱいだった帝人の頭は微かな冷静さを取り戻す。
手を外し、その感触のもとへ視線を送る。それは、
「ぇ、……?何、これ」
段々とクリアになっていく思考の中、視界の中でそれはカーテンの隙間から差し込む光の中できらきら光った。
昨日まで、否行為が終わって眠りについてしまうまでは確実にそれは無かった。
「これ、って……確か、」
見たことのあるデザインであるそれを、帝人はベッドに沈み込んだままぼんやりと眺める。
これは、恐らく、多分、記憶が正しければ。
「い、ざ…さんの…」
何時も彼の指にあったそれは、その指輪は、今は己の指でその存在を主張している。
シンプルながらも決して安物ではない筈。果たして自分のバイト代をどれだけ貯めれば買えるのだろうか。
しかもその指輪の所在位置は左手薬指。幾ら恋愛事には疎い帝人でもその位置の意味を知らない筈もなく。
「っ、」
かああ、と更に帝人の顔が赤く染まったのと同時に、部屋の扉ががちゃりと開いた。