みんなといっしょ!
それぞれが混乱した。乱太郎に追いついたきり丸と庄左ヱ門は近くにいる事でより身近に感じていた。乱太郎はが出す殺気は本物で。あの乱太郎がと驚いた。
「乱太郎、どうしたんだ」
「何か話してくれよ」
二人の言葉に乱太郎は空気をそのままにニコリと笑い乱太郎は二人に言った。
「きり丸、庄左ヱ門。ちょっと、掃除してくるから皆は札取り続行しててね」
「乱太郎?」
「何処にいくんだよ」
「すぐそこまでね」
そして、一瞬でその場から消えていた。
「一体何処に」
見えなかった。乱太郎の動きが。何故、どうしてと聞きたい事があるのに。本人が居なくなってしまっては意味がない。
「きり丸、一旦皆と合流するよ」
「わかった。ったく、どうなってんだ」
そういいながら、二人とも笑っていた。
「楽しそうだな。きり丸」
「庄左ヱ門もだろ?」
乱太郎の変わりよう。そして、その実力。どう見ても自分たちより上。
「また、惚れ直しそうだな」
「同じく」
二人は札取りの場へと急いだ。
乱太郎は近くにきていたドクタケを見つける。
「懲りない人たちだね」
呟く言葉に感情はない。
「まあ、手は出してないにしても手を出そうとしている事に後悔してもらおうかな」
右手に鋼糸、左手に鉄扇。そして、それは唐突に始められた。
「これは…」
土井は、見た状況に驚いた。ドクタケが攻めてくると情報が学園から届き、札取りを一旦中止と伝えにきたときには乱太郎はそこにはいなかった。他の者は揃っていたが。乱太郎に一番近くにいたきり丸と庄左ヱ門にきけば、掃除をしてくると言って消えたらしい。そして、ドクタケが攻め込んでいる場所へ移動したのだ。そして、そこで見た物は、乱太郎一人に手も足も出せていないドクタケの面々だった。そこに広がるのは森の外で立ち往生しているドクタケ。そしてその前には乱太郎。
「だから、無理だっていったじゃない」
「うるさーい!この眼鏡っこ。わしらの邪魔をするんでないわ!」
乱太郎が木の上から八方斎と受け答えしていた。乱太郎はその間も右手を器用に動かす。それは不思議なものでドクタケの忍者隊はそこから動くことが出来なかった。
「だー!! なんで動けないんだ!!」
「どうしてでしょ?」
クスクスと笑いながら、乱太郎は左手の鉄扇を一振りする。その姿は舞を踊るようにも見える。
「…なんだ。ね…むくなる」
「だから、諦めてっていってるのにさ」
「ばかもの! だ…れが…あーきらーめるかー」
既に、音場が怪しい八方斎。
「じゃ、しょうがないね」
そういって、乱太郎は手元から小さな何かを取りだした。そしてそれをドクタケに投げる。そしてそれが…爆発した。
「な! なんでそんなものを持ってるんだ!」
「そんなの常識でしょ?」
「お前の常識は常識じゃないわ!!」
「八方斎だけには言われたくない」
そういいながら、ぽいぽいっと爆弾を投げ続ける乱太郎。
「…あれは立花の影響か?」
土井は少しだけ頭を抱える。
「…先輩のせいではないと思います」
土井に答えたのは、兵太夫。そして、は組の子供たち。他、札取りをしていた者はそこに集まっていた。
「お前ら、来たのか」
「そりゃ、乱太郎が心配でしたしね」
庄左エ門の言葉に土井はため息だ。その間にドクタケは撤退を始めた。
「先生、乱太郎はどうやってドクタケをとめたんですか?」
「鉄扇ともう一つ何かを持っているようだったが…」
それは本人に聞かないとわからない。
「まったく、いつの間にか育ってくれたもんだな」
土井の言葉が聞こえたのか、乱太郎が皆を見て微笑んだ。
「先生、みんなただいま」
戻ってきた乱太郎はいつもの乱太郎で。先程の殺気混じりの空気はそこにはない。
「とりあえずは、説明を聞かせて貰おうか」
土井の言葉に乱太郎が頷いた。
「まずはどうして今回の事に気が付いたのかですよね?」
「ああ」
「理由は簡単。学園以外の気配がしたからです。それをこの蝶に視てきて貰ったんですよ」
符を蝶に変えて見せる。それに反応したのは、三治郎。
「乱太郎、なんでその術を知っているの?」
「伊作先輩が護身にって。でも、保健委員は全員出来るよ」
乱太郎の言葉に数馬、左近、伏木蔵が同時に頷いた。
「でも、私のは教えて貰ったものを少し変えてあるけど」
「教えてもらったのは、声を伝えて貰うだけで。それも、符を持っている者だけです」
数馬の言葉に乱太郎は続ける。
「私のはそれに周りを見る力を加えてありますね。これは三治郎に教えて貰った術式が必要ですけどね」
乱太郎が言うと三治郎が頷いた。
「次はその実力だ!見たところ、お前はオレ達より力が上だな?」
左近の言葉に乱太郎は肯定する。
「そうです。ずっと、本当の力は隠してました。知っているのはここにいる土井先生と山田先生だけです」
「それでも、ここまでとは思っていなかった」
土井の言葉に皆どれだけ乱太郎が力を隠していたかを知る。
「乱太郎、どうしてそんな事をしたの?」
喜三太の質問に乱太郎は笑う。
「隠していた訳じゃないんだ。ただ」
「ただ?」
誰もが乱太郎の言葉を待つ。だが放たれた言葉は脱力するものだった。
「自分の事だと、やる気でないんですよ」
「なんだ。それは」
「そのままの意味ですよ。皆が危ないなら持てる力を持って敵を排除します。全力で。でも、それ以外ではそんな力は発揮したくないんです」
「わかった。後、一つ聞きたい。先程使っていた武器はなんだ?見えなかったんだが」
「ああ、鋼糸です。それを森一帯に張り巡らしていました。こんな感じて」
乱太郎が右手を軽く動かすと近くにあった木の枝がスパッと切れる。
「これは、切れ味も強度も普通より高いんですよ」
「何処でそんなものを」
「利吉さんからです」
その言葉に誰もが頭を抱えた。なんで、貰ってるんだ!と思う。それにしてもだ。最強の力。普通はみせつけるだろう。だが、乱太郎はそれを拒否した。守れるならいい。そういうのだ。
「じゃあ、今回の事がなければ」
「札取りは逃げ切って終わりだったね」
乱太郎の言葉に誰もが呆れて、けれど乱太郎らしいと納得した。
「乱太郎」
「何?きり丸」
「これだけは教えてくれ。お前はここにいるメンバーよりも強いか?」
「多分強いよ」
その言葉は乱太郎自身が一番よく知っている。今の自分が一番強いと。
「それがわかればいい」
きり丸の言葉に誰もが頷いた。
「乱太郎」
「はい?」
その声は土井以外の生徒から発生された。
『お前より強くなってやる!覚悟しとけ』
何十奏にも聞こえる言葉に乱太郎も応える。
「がんばって追い付いてみてよ。先輩達も、皆も。でも、そう簡単には行かないから」
ライバルで友達で。
そして、最強となった子は皆の想い人。 強くならなければ、その隣にはいられない。
「競争だ」
そして、これが最強(凶)とよばれる始まりだった。