みんなといっしょ!
舞姫
「なあ、乱太郎。頼むよ!」
「…でもなあ」
「本当に一生のお願いだ!」
保健室で乱太郎に頼み込んでいるのは、既に卒業している左近。乱太郎以外には伏木蔵がいた。伏木蔵はクスクスと笑ってその会話を聞いていた。
「お前しか、頼れないんだよ。頼むよ」
本気で困っている左近に乱太郎も迷う。もうやることなどないはずだった。それを何処から聞いたのか左近が知り、頼み込んでいるのだ。
「乱太郎、やってあげれば?この休みは何も予定はないんでしょ?」
「そうだけど」
ふと、乱太郎は左近に聞いてみる。
「先輩」
「なんだ?」
「先輩のその情報は何処から?」
「そんなの決まってるだろ。後ろの奴だ」
「ふーしーちゃーん?」
「だって、先輩が困ってたし」
表情を見るかぎり、面白がっていた。
「もう!」
「らんたろー」
「わかりましたよ!やります」
「助かる!オレもできるだけの事はするから」
「一先ず、話を聞かせてくださいね」
左近が頷き、話始めた。 話はこうだ。左近が町医者として働く村で祭りがあるのだという。毎年いつも桜の時期に合わせて巫が神に踊りを奉納している。だが、今年はどうしても巫が見つからない。ここの巫は男子と決まってるそうだ。村長に聞かれて、乱太郎の事を思い出したという事だった。
「まったく、伏木蔵に話すんじゃなかったよ」
「僕は聞いといてよかったかな」
「本当にすまない」
「いいですよ。んー、でもその巫が舞う舞は決められてるんじゃないですか?」
「いや、それはどんな形でもいいそうだ」
「じゃあ、剣舞でも問題ないですか?」
「ああ」
「後、一人じゃないとダメなんですかね?」
「それはお前にまかせるそうだ」
乱太郎は考える。村の巫が舞うとなれば、神に捧げるものだ。一人よりは人が多い物の方が力が強くなる。
「何人か、は組をつれていってもいいですか?」
「ああ、問題ない」
左近の言葉に乱太郎は。
「では、依頼を受けます」
乱太郎の言葉に左近は一安心だ。
「本当にすまん!」
「まあ、左近先輩のためですしね。でも今度、何か珍しい薬くださいね?」
「わかった」
「あー、それ僕もほしいなー」
「はいはい」
後輩の言葉に左近は二人の頭を撫でる。乱太郎の頭を撫でられるのは先輩の中でも保健委員くらいなものだ。何故か。は組が邪魔をして誰も触れなかったから。
「オレは先に村に戻るな。村に入ったらオレの家に先に来てくれ」
「わかりました」
左近は保健室から消えた。さすが、卒業生というところか。
「さて…。伏ちゃん」
「何? 今回はどうする? 一緒に行く?」
「どうしようかなー…」
乱太郎がいくとなれば不在な保健室。
「一緒にはいかないけど、でも後でいくと思う」
「そっか…。なら、フォローよろしくね! 発端は伏ちゃんだからね?」
「わかったよ」
乱太郎はそういって保健室を出て行った。
「どうなるのかなー」
伏木蔵は楽しそうに笑った。
乱太郎が今回の事で白羽のやをたてたのは。
「そんな訳で二人とも助けてくれない?」
乱太郎が話しているのは喜三太と三治郎。
「はにゃ〜、また唐突だねぇ」
「そうだね。もうこっちの予定とか考えてないの?」「だって、私の頼みなら聞いてくれるってわかってるもん」
「乱太郎らしいけど」
「乱太郎だよねぇ」
嫌みもいつの間にか軽くかわしてしまう。
「それに私のあの事を知ってるのって、は組では二人だけだし。今回のは二人が必要なんだ」
「僕はいいよー。乱太郎とやるの好きだしね」
「僕もね。でもさ、乱太郎?」
「何?」
「僕ら三人がいなくなったら、は組の皆が気にするんじゃないの?」
「それはもう伏木蔵で手を打った。何かあれば伏木蔵に対応してもらう」
「…もしかして、発端は伏木蔵なの?」
「そ、だから手伝ってもらうんだよ」
乱太郎の言葉に二人は顔を見合わせる。最強と言ってもいい乱太郎だが、保健委員会関係にはある意味弱い。
「それで出発は?」
「用意できたら、すぐにかな。とりあえず今日中には村に着きたいんだ」
「なら、すぐに準備するね」
「僕も」
二人が自分の部屋に戻って行った。乱太郎も自分の準備をするために消えた。そして、準備が終わった三人は門の前に集まったがそこには三治郎と一緒に兵太夫がニコニコ笑ってそこにいた。
「ごめん。見つかっちゃった」
「あらら」
「三人で何処にいくのかなー」
楽しんでいる兵太夫に乱太郎は。
「しょうがないな。兵ちゃんもいいよ。来ても」
「いいの?」
「だって、ここで置いていったら話が学園中に広まりそうだもん。なら、一緒にいた方が安心だし」
「それは言えるかも」
「ひどいな。三ちゃんも乱太郎も」
「あはは。兵太夫も遊んでるでしょ?」
喜三太の言葉に兵太夫も笑った。
「とりあえず、出発。兵ちゃん、着いてくるからには付き合って貰うから覚悟しといて?」
「了解」
そして、四人は外へと出ていった。 さすがは六年生とでも言おうか。日が落ちる前に四人は左近の待つ村に着いていた。
「左近先輩」
「乱太郎」
「すぃません。一人増えちゃいました」
「お前が連れてきたなら、必要人数ってことだろ?問題はないさ。まあ、明日神主に合わせるから今日はゆっくりしてくれ」
「はい」
左近が乱太郎の頭を撫でて、笑った。
「乱太郎は左近先輩と仲いいよね」
「保健委員はは組とは違う乱太郎との繋がりがあるからね」
だが、やはりちょっと悔しい事は事実だ。なので、戻ってきた乱太郎に三人でくっついてみた。
「どうしたのさ。三人とも」
不思議そうな乱太郎に三人は。
「「「なんでもないです〜」」」
と答えるのだった。
その夜の事。乱太郎から大まかな説明を受けた三人。
「皆、巫の衣装で踊ってもらうよ?まあ、作法委員長がいるからお化粧はばっちりだしね」
「というか。乱太郎、僕も踊るのか?」
「だから、来るならやって貰うよっていったじゃない?まあ、兵ちゃんは作法にいたから舞うことくらい問題はないでしょ?」
「それはまあね」
作法は仙蔵の以降で色々な事ができる。舞踊もその一環な訳だ。
「面白がってくるからだよねぇ」
クスクスて喜三太が言う。
「喜三太、うっさい」
「三ちゃん、兵ちゃんがいじめるよ〜」
「八つ当たりしないの。兵太夫」
「へーい」
「興味は時々身を滅ぼすんだよ?兵ちゃん」
にこりと乱太郎が止めを刺す。
「だー!すいませんでした」
「あはは」
乱太郎が兵太夫の頭をコツンと叩いた。。
「まあ、まだ時間があるし。それに多分やるときはは組が揃ってるよ」
「あ、それは確実にそうだと思うし」
そのための伏木蔵だ。今回、来るであろう他には組の引率を頼んでいる。
「ああ、そういえば。久作先輩もくるっていってたっけ」
「能勢先輩が?」
「うん、多分今回の舞で歌を歌ってもらうんだと思う。すごくうまいって聞いてるから」
その情報は左近ときり丸だ。きり丸はバイトを手伝ってもらったときに知ったらしい。
「乱太郎」
「ん?」
「なんか、楽しそうだね?」
「うん。やっぱり先輩達に会えるって嬉しいもんだよ」
「…お前はな」
兵太夫は少しだけ苦手な先輩がいたりもするので少しだけ苦笑いだ。