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野沢 菜葉
野沢 菜葉
novelistID. 23587
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きらきら星 【前編】

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ドタドタドタ・・・
廊下からもう聞きなれた音が響いてくる。

「・・・来た」
後ろの席でボソッと巣山が呟く。

「さかえぐち~」

気の抜けそうな声で叫びながらヨロヨロとこっちに向かってくる。
前の席で話をしていた女のコたちもクスクスと笑っているのがわかる。

「聞いて聞いて!!阿部ったらひどいんだよ!」

「・・・お前わざわざそれいうために7組から来たの?」

「えっ・・・やだなぁ、本題は別にちゃんとあるよー。
それに移動教室のついでに寄っただけだし!」

「じゃあ早く本題に入らないと貴重な休み時間が終わっちゃいますよー。」
オレはわざと語尾をのばして答えた。

「えっとね、この間買いたいって言ってたCD買っちゃってさー。栄口も聴きたいって言ってたから持ってきたんだぁ!もちろん曲も入れてきたよ!!」

「えっまじて!?」

「うん!まじまじ!!だからお昼に一緒に聴こ!」

「わぁ。ありがとう!楽しみにしてるよ!」

2人で話が盛り上がっていると、クスクスと笑いながら前の女のコの1人が話しかけてきた。

『水谷くん。もうそろそろ行かないと授業に間に合わないんじゃない!?また阿部くんに怒られちゃうよ。』

「うわっ!まじだぁ。じゃぁ栄口またお昼ね!」
「はいよ!そっちも授業遅れんなよ!!」

巣山もまた後でね~っと言いながら、またバタバタと教室を出ていく水谷。それを見てまたクスクスと教室に笑い声が広がる。

「いつもお守ご苦労さん。」
「・・・お守って。いえいえ、オレも楽しませて貰ってますよ!」
「確かに、見てて飽きないよな。アイツは・・・」
そんな会話をしていると、ちょうど始業ベルがなった。


水谷は間に合ったのかな・・・ふとそんな考えが頭をよぎった。






フワフワの茶色い髪に、整った顔立ち・・・

最初野球部だって聞いたときは正直驚いた。

だけど、同じセカンド経験者ということもあって話は盛り上がったし、
音楽やほかのことでも好みが合うせいか、GW合宿後にはすっかり仲良くなっていた。

何より、あの気の抜けた笑顔や話し方はオレにとって安心できるものだった。

しかし、仲良くなったいいが、水谷はやたらと騒がしい。
先ほどのように名前を叫びながら頻繁に1組に来るため、
オレの名前がクラス中に知られるのは速かった(まぁ有りがたいって言えば有りがたいけど)。

そして水谷が来るのは1組の名物になってきて、その話の8割は阿部のことで始まるため、
阿部もすっかり有名人である(みんなが阿部に対してどんなイメージを持ってるかちょっと怖いけど)。

今までシニアとか中学とか友達は結構いたが、こんな風に1人と特別に仲がいいという経験がなかったオレにとって、
今の状態は結構新鮮だった。

だけど、水谷と一緒にいるのは楽しいし、こんなのも悪くないかなって思う。

親友って言葉が頭に浮かんで、とてもくすぐったい気持になった。