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ぐらにる 争奪1

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隠れ家というのは、あっちこっちにある。たまたま、東京経済特区のほうに出向くことになって、一ヶ月滞在することになった。長期間となると、ホテルではなくて、マンスリーマンションみたいなものになる。刹那のマンションへ転がり込むというのも、ひとつの手ではあったのだが、お互いに、多少の距離は必要だろうと思い直して、さほど遠くない場所に滞在することにした。そうしておけば、適度に顔も合わせられるだろうという算段だった。

 まだ、機体がロールアウトしていないので、今のところは、新しいシステムを叩き込むために、組織が用意した研究施設へ出向いて学ぶことを指示されている。それが、たまたま東京だった。

 その研究施設は、他からも出向者を受け入れているので、同じようなカリキュラムを学ぶものが何人かいる。陣容はバラバラで、どう見ても軍人らしいのとか、システムの専門家らしいのとか、普通のサラリーマンらしいのとか、バラバラだった。

「きみは、ひとり? 」

 施設のカフェテリアで話しかけられた相手は、そのうちの一人だった。どう見ても軍人らしいと目星をつけていた相手だ。
「あんたも、ひとりだろう。」
「ああ、無理を言って出向したのでな。・・・きみは、正体不明だが、何者だ? 」
「SEだが、ちょっと特殊なんだ。それ以上は、企業秘密。」
 ちゃんと、組織は、ロックオンの経歴も詐称して拵えた。今の自分は、ある兵器関係の企業のSEという設定になっている。
「なるほど、兵器専門のSEというところか。まあ、いいだろう。・・・・夜が暇なんだ。一緒に食事でもしないか。」
「はあ? 」
「こちらには知り合いがいないのでね。食事が、ひとりで味気ない。きみも、ひとりだと言うなら、たまには、お互いの無聊を慰めるというのは、どうだろう? 」
 冗談じゃない、と、すっぱり断った。いや、断ったつもりだった。しかし、この男、カリキュラムが終わると、強引に自分の腕を取って、俺を連れ出した。
 そのまま、施設からクルマで連行されて、レストランへ連れ込まれるに至って、まあ、一食ぐらいは構わないか、と、諦めた俺がバカだった。毎晩、毎晩、あっちこっちへと食事に連れ回されることになったからだ。それも、高級そうなところばかりで、相手のおごりとくる。
「俺は、別に、あんたにおごられる言われはないんだがな? エーカーさん。」
「いや、言われはある。きみをデートに誘っているんだから、私がおごるのは当然だ。」
「・・・今、何つった? 」
「きみは私と、毎晩、デートしているんだ。正体不明のSEくん。そろそろ、名前ぐらい教えてくれてもいいだろう? 」
「ロックオン・ストラトスだと言わなかったか? 」
「それは本名ではないだろ? 本物の名前のほうだ。・・・・余程、企業として、きみが出向していることを隠したいのだな? そんなコードネームみたいなものが本名だなんて思わないぞ。きみのコードネームから察するに、照準器か、銃火器の専門SEではないかと、私は推測しているんだが、違うか? 」
 探るような緑眼が、こちらを楽しそうに尋問する。確かに、ロックオンは照準という意味があるし、ストラトスは成層圏という意味がある。『成層圏の向こう側まで狙い撃てる男』というのが、俺の売り文句だ。それを的確に指摘している。危険なヤツだと思ったが、顔には出さなかった。
「それなら、なおさら、言うはずがないだろ? 」
「恋人として知りたいだけだ。別に、他意はない。」
「誰が誰の恋人だと? 」
「きみが私の恋人だと言っている。」
「冗談じゃない。なんで、見ず知らずのあんたと付き合わなきゃいけないんだよ。」
「身持ちが硬いな、正体不明のSEくん。だが、一目惚れでね。諦めてくれ。」

・・・・・危ないって・・・こいつ・・・・・

 さすがに退いた。いきなり、恋人宣言かますなんて、おかしすぎる。明日からは、断ろうと心に決めた。
「お断りだ。明日から、ひとりで食事してくれ。」
「つれないなー、私のお姫様は。」
「俺は男だってーのっっ。あんた、視力は大丈夫か? 」
「両方とも、1.5だ。」
「だいたい、人のことを、ぐたぐたと探るなら、あんたはどうなんだよ。グラハム・エーカーというユニオンの軍人さん。なんで、新しいシステムなんてものに興味があるんだ。そういうのは、軍の施設で、お勉強できるだろ。」
「はははは・・・確かにな。だが、最新鋭となると、少し問題がある。既存のものを、現行より向上させることはできるが、最新鋭を取り込むまでは時間がかかる。先に、それを把握する必要があるから出向した。・・・私は、特殊な部門に配属されていて、相手に遅れるわけにはいかないのさ。」
 それ以上は、軍事機密だ、と、相手は笑った。ユニオンといえば、とんでもなくイヤな思い出がある。しつこさ半端ではないカスタムフラッグに、追い駆けられた記憶があるからだ。
「フラッグか? 」
「さすが、よくわかったな。」
「ユニオン独自のもので、このシステムを載せるなら、それだろう。」
「きみが作り出す銃火器が、フラッグに搭載可能だと、恋人との共同作業になって、さらに嬉しいんだがな。」
「俺は、あんたの恋人じゃねぇーよ。」
「なら、私は今以上の努力をしよう。きみに認めてもらうための努力は惜しまない。」
「俺は墜ちないよ、フラッグファイターさん。」
「くくくくく・・・・その唇から撃ち出される言葉の銃弾をかいくぐり、きみのハートを射止めよう。」
「人の話を聞けよ。」
「聞いている。きみの声は甘くて心に響くよ。」
 ほぼ一方通行な会話であるのは、毎度のことだが、もうツッコむところがありすぎて、面倒になってくる。どうせ、一ヶ月のカリキュラムだ。残り、三週間を切っている。とりあえず、適当にかわして、情報だけは引き出してやろうとは思っていた。だが、相手ものらりくらりとかわすから、うまい具合にはいかない。



 本日からは誘うな、と、昨夜、釘を刺したら、誘われなかった。これ幸いと、買い物して仮の住居に戻った。さすがに、毎晩、毎晩、フルコースなんてものを食べていると食傷する。胃に優しいものでも作ろうか、と、料理を始めたら、呼び鈴が鳴った。刹那は、合鍵を持っているから、呼び鈴はしない。誰だろうと、扉を開けたら、ピンクのバラだった。

・・・・え?・・・・

「誘いに来た。」
 それから、エーカーの顔だ。
「断ったはずだ。・・・・あんた、後をつけたな? どこのストーカーだっっ。」
「心外な。きみの登録データで、家を確認しただけだ。あそこから直接、誘うのはイヤなんだろ? だから、こちらまで出向いたんだ。」
 どこをどう聞けば、そういう結論に達するのだろう。今後、一切、誘うな、と、はっきり申し渡したはずだ。
「悪いけど、もう食事の準備をしている。だから・・・・」
 今夜は行かない、と、言う前に、エーカーは玄関を勝手に入った。東京は、日本という国なので、玄関で靴は脱ぐのが作法なのだが、こいつは、そのまま上がりこんだ。
「いい匂いだな? 姫。きみは料理もできるのか? 」
「一人が長いからな。・・ていうか、靴は脱げっっ。」
作品名:ぐらにる 争奪1 作家名:篠義