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こらぼでほすと 名前

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翌日には、刹那は戻って来た。刹那としては、そのまま、ユニオンのほうを放浪したほうが都合はよかったのだが、さすがに、護衛の一人が外れて、別行動をするというのは目立ちすぎると、イザークに止められた。
 予定が狂ってしまった歌姫様は、それから、すぐに、また移動をしたので、結局、親猫とは顔を合わせられなかった。
「いいですね? 刹那。くれぐれも、ママのことは頼みましたよ。」
「わかっている。あんたも気をつけろ。」
 慌しい出発に際して、歌姫は黒子猫に、親猫の機嫌は取ってくれるように指示した。ユニオンから、今度は、北欧だ。そちらである会見に出席しなければならない。いくつか跳ばしてしまった予定のほうは、ユニオンから回線を繋いでフォローはしたのだが、北欧の小国だけは、それではまずかった。以前の大戦の折に、キラたちを匿ってくれた相手だから、非常に借りがある。だから、回線を通じての挨拶程度では済まない。
 そろそろ、キラの顔を拝まなければいけないところだが、そこは、待機していた側も考えていた。下手に暗黒オーラを巻き散らかされたら、被害甚大だ。出発までの僅かの時間に、キラがやってきて、しばらく、ふたりっきりで過ごしてもらった。多少、キラ不足は解消されたから、北欧へは恙無く、歌姫様も出発していった。
 


 今日は、ゆっくりしてね、と、キラとアスランに寺へ送ってもらった。すでに夕刻で、三蔵たちは出勤時間だ。
「さんぞーさん、一緒に行こーーっっ。」
 玄関から叫びつつ、居間に入ったら三蔵と悟空は、おやつの真っ最中だった。
「おかえり、刹那。キラ、アスラン、おまえさんたちも、軽く食べていけ。」
 台所から声がして、温かいものが運ばれてくる。今日は、スープカレーらしい。
「新しい。刹那が帰って来たから、ホワイトシチューだと思ってた。」
「それも作ってあるけどさ。そっちのほうは、晩飯な? 刹那。」
「えーーー僕は、そっちも食べたい。」
「明日のおやつだから食いに来い。」
 おやつは、スープカレーだが、夜食はホワイトシチューらしい。キラが、そっちも食べるなんていうので、ロックオンは止めた。大量に作ってあるから、一度で消化するな、と、いうことらしい。
「辛いけど大丈夫か? 生卵かヨーグルト入れるか? 」
「問題ない。・・・・ただいま・・」
「はい、おかえり。」
 それだけで、親猫の顔は緩む。よかった、と、悟空たちも食べつつ微笑む。三蔵ですら、少し頬を歪めている。
「おい、おまえも摘め。」
「いえ、後で食べますから。そろそろ、切り上げてくださいよ、三蔵さん。悟空、足りたか? もうちょっと食べとくか? 」
「帰ってから、夜食に食うから置いといて、ママ。・・・刹那、ママ、昼寝してないからな。早めに寝かせてくれ。」
「了解した。他に用事はないか? 」
「これといってはないよ。」
 刹那が戻ると言われて、やはり前回と同様に、親猫はそわそわして昼寝をしなかった。まあ、これは仕方が無い、と、悟空も諦めている。だから、早めに横にしてくれるように刹那に指示を出す。キラとアスランのほうも、ここでおやつを食べて、仕事に出て行った。
 残ったほうは、のんびりとした空気になる。刹那は、とりあえず空腹を満たすまで、はごはごとスープカレーを食べる。親猫のほうは、辛さを調和する飲み物を用意して、その横に座った。
「あんたは? 」
「俺は晩飯にするからな。」
「そうか。」
「まあ食え。」
「ああ。」
 すっかり日は落ちているので、外は真っ暗だ。もう少し早ければ、散り際の桜を拝めたのに、と、親猫は、そちらを眺めている。散る時は、一気に散ってしまうので、すでに桜の花は、ぽつぽつとしかついていない。刹那の誕生日も、スルーになってしまった。来年は、どうなるか、皆目見当がつかないので、来年の約束をしても叶うかどうかは怪しい。そんなことを考えていたら、ごくごくと、ラッシーを飲み干す喉の音がして振り向いた。
「お代わりは? 」
「もう、いい。・・・・少し話がしたい。」
「ああ。」
 真面目な顔で黒子猫が言うので、そちらに視線を移す。しばらく、黒子猫は親猫の顔を眺めてから、「頼みがある。」 と、切り出した。
「俺でできることなら。」
「・・・・あんたをニール・ディランディと呼びたい。俺が、ディランディさんちの子供だと、あんたが言うのなら、そのあんたもディランディさんに戻るべきだと思う。ここは、組織のコードネームが必要な場所じゃない。だから、そう呼んでもいいか? 」
 いきなり出てきた言葉に、親猫は、ちょっと驚いたが、苦笑して頷いた。確かに、ここでは、コードネームは必要ではない。完全に正体はバレているし、一民間人になったと、この間、切々と悟空にも説明されたところだ。弟に、コードネームを譲ると、刹那に言ったのだから、そう言われても仕方がない。
「まあ、そういうことになるだろうな。けど、コードネームは、そのまま生かしておいてくれよ? 」
「わかっている。あんたの弟を引っ張ることになったら、それを使わせる。・・・・テロリストの俺が、こんなことを考えるのは間違っているかもしれないが、それでも、あんたには死んで欲しくない。あんたは、俺の帰る場所で生きてて欲しいんだ。それも、ロックオン・ストラトスとしてではなくて、ニール・ディランディとして、だ。」
 これからも武力介入は続けていく。そこで、たくさんの親猫のような人間や自分のような人間は生み出されていく。それを、一々気にかけるな、と、親猫は諭したが、親猫だけは、ずっと気にかけていたい。それがあるから、刹那は帰ろうと思うのだし、自分の生き様を見守って欲しいと思っている。見ているだけの戦いは辛いだろうが、それでも、戦っていて欲しい。
「マイスターとしての資格は必要ないもんな。」
 地上から離れられない親猫は、自嘲するように吐き出して頬を歪めた。戦えない自分には、その資格は必要ではない。わかっているが、刹那との距離が開く気がして、寂しい気がするのも事実だ。
「そうじゃない。あんたは、今でも、俺たちのリーダーだ。だが、そっちのあんたは・・・・俺がイヤなんだ。俺は、おかんのあんたがいい。あんたは、ここ居ると、ロックオンじゃなくて、ニールだ。俺は、ニールのあんたのほうがいい。ここで、俺を見守ってるのが、あんたの仕事だ。それは、ロックオンのあんたじゃなくて、ニールのあんたの仕事だ。」
 いろんなものを隠していたロックオン・ストラトスは、ここで、本来のニール・ディランディに戻った。そちらのほうが、刹那は好きだ。隠していた時にあったものはなくなったから、もっと優しくて温かいものなったからだ。それだけはなくしたくない。
「ニールのあんたにも、俺と一緒に戦ってもらう。あんたは、俺を見守っててくれ。精神的に辛い戦いをさせるが、それに勝ってくれ。・・・・あんたが居ないと俺は何もなくなってしまう。あんたは、ここで生きて、俺の帰る場所である戦いをしてくれ。それだけでいいんだ。俺は、あんたをニールと呼んで帰ってくるから。」
作品名:こらぼでほすと 名前 作家名:篠義