アテナの聖闘士
「お嬢さま、ただいまフィンランドより7つ目の聖衣が届きました」
「100人の内みごと聖闘士となって日本へ帰ってくるのは、わずか10人という報告だったわね」
「いえ、それなのですが・・・・・・」
言いにくそうに言葉を返した大男――辰巳徳丸は、内心大きな焦りを覚えていた。
上司であり雇い主でもある少女にそのように報告したのは、他ならぬ彼自身なのだ。彼女はその気高さ故に嘘を嫌う。万一その逆鱗に触れれば、彼の首が文字通りに飛びかねない。
少女にはそれだけの力があるのだ。
「11人です。今朝になってわたくしのもとに連絡が入りました」
「そう・・・・・・それなら残る聖衣はあと4つ」
少女がすんなりと訂正を受け入れたことに、辰巳は安堵の息をもらした。
昔は気分屋なところが強く、辰巳も随分と手を焼いたものだが、最近は歳不相応なまでに落ち着きを見せるようになった。
やはり環境の急激な変化が、彼女に大人になることを強いているのだろうか。