こらぼでほすと 一撃1
アスランから、調整して貰った青いトリィーを刹那は手にした。電源を入れると、自分と親猫の周辺をトリィートリィーと鳴きながら飛んでいる。
「気をつけて。」
青いトリィーを、ちょこんと頭に停まらせた親猫が、手をにぎにぎと開いたり閉じたりする。それを刹那は、目にして、ちょっと残念そうに目を伏せて、それから、きっちりと強い瞳で見上げて、「いってくる。」 と、宣言した。
今回は、人革連の北西部から南西部への旅をする。普段は、警戒が厳重な地域だが、今は、無差別テロが大都市で引き起こされた余波で、そちらに警備が集中している。この時期なら、最深部にも侵入しやすいからと選ばれた。ラボから海中へ、そのまま出て行くから、格納庫まで見送った。そろそろ深夜枠の時間で、この時間なら人目もない。夜明けまでに最深部近くへ入りこむ予定だ。
挨拶すると、黒子猫は、トリィーを引き連れるようにして、エクシアのコクピットに飛び込んでハッチを締めた。これで、しばらくは、黒子猫とは逢えない。
「ママ、さっさと管制室に戻って来んかっっ。」
格納庫に、虎の声が響き渡る。海中への侵入経路まで、エクシアは自力で移動させる。そこまでは、管制室のモニターで追えるから、虎は戻れと怒鳴っている。親猫のインカムにではなく格納庫全域にスピーカーで怒鳴っているので、整備責任者のマードックにも聞こえて苦笑しているのが、親猫の視界にも入っている。
「はいはい、叫ばなくても聞こえてますって。」
インカムに叫んで、親猫も引き返す。今のところ、危ないことはしないだろうとは思うが、利かん坊の黒子猫だから、それも確定ではない。心配するぐらいしかできないが、それぐらいはさせてもらおうと親猫も思っている。
管制室に入ると、すでに通路はオープンさせて、注水槽には海水が溜まっている。ここへ飛び込めば、、そのまま海中へと発進できるようになっている。
「ちび、くれぐれも無茶はせんようにな。」
「わかっている。俺のおかんのことは頼む。」
いちいち頼まなくてもいい、と、内心でツッコミしつつ親猫も、虎の側に近寄る。そのモニターには、ヘルメットをした黒子猫が映っている。
「まかせろ。・・・・・発進オーケーだ、ちび、グッドラック。」
「エクシア、刹那・F・セイエイ発進する。」
海水へ滑りだしたエクシアは、そのままエンジン全開で海中へと進んで行く。そこまでで、モニターは切れた。後は、レーダーの光点のみが黒子猫の存在を知らせるものだ。それを、じっと見ていたが、やがて、それも消えた。レーダーにひっかからないように隠蔽皮膜を被ってしまうと、そこからは察知できなくなるのだ。
・・・・・いってらっしゃい、刹那・・・・・・
見送ってから呟いて、親猫は、しばらく何も映さないレーダーを眺めていた。一ヶ月ちょっと、黒子猫と過ごしていたから、今日から居ないとなると、なんだか、ぽっかり胸に穴が開いたような気がする。
「虎さん、今夜は泊まりですよね? 」
レーダーレンジの調整をしていた虎に、親猫は声をかける。とても眠れないので、付き合って貰うつもりだ。
「付き合ってやるから、ちょっと待ってろ。・・・・そうだ、ママ。なんか旨いツマミを用意してくれないか? 普段、お父さんに出してるような大人用のとこを。」
「え? あれ、日本酒用ですよ? 虎さん。」
「かまわん、今日は吟醸酒でいく。」
「了解、準備します。」
親猫は、そそくさとラボから別荘へと登って行った。どうせ眠れないからのお誘いだ。酒盛りはする。そして、虎は、トダカが、「うちの娘さん、料理上手で晩酌が豪華になるんだよ。」 と、自慢されていた料理でも味見させて貰うことにした。なかなか、虎は、寺へもトダカ家へも出向く暇がなくて、親猫ニールのおつまみを相伴したことがなかった。ラボ担当だから、ここのところ忙しくしているからだ。
そんな感じで刹那が出かけて、二週間ばかりすると、組織から暗号通信が届いた。ちょうど、特区でゴールデンウィークと呼ばれる時期に、フェルトが降りてくると連絡が入った。
「うぉっしゃあーーっっ。じゃあ、みんなで、フェルト歓迎で遊ぼうぜ。」
「ちょうどいいや。カガリんとこへ行く予定だったから一緒に行こう。」
「でも、それだとママがおいてけぼりになるよ? アスラン。」
ゴールデンウィークは、カガリも何日か休めるというので、あちらの別荘で遊ぼうということに決まっていた。もちろん、年少組だけが参加。大人組は不参加だ。ニールは三蔵とハイネと留守番というか、のんびり休暇の予定になっている。フェルトだけ連れ出したら、ニールが行かないなら行かない、と、フェルトは暴れそうだ。
「おまえら、仮にもホストだろ? そこいらを言いくるめて、こっちの都合で動いて貰うぐらいの技はないのかよ? 」
「じゃあ、悟浄さんやって。」
「やだね。こういうのは経験しないと身につかないだろ? 」
「ていうか、ママが連れて行けばよかったんだけどねー。」
ニールの身体は気圧変化に対応できないので、ヘリ程度の高度でしか移動できない。小型ジェットで一時間弱のオーヴだと、まあ間違いなく、その移動で体調が崩れるから行けないなんてことになっている。つまり、ニールは特区から出ることはできないのだ。
「こういう場合は、やはりニールから頼んでもらったほうがうまくいくのではないですか? キラさん。」
おかんのニールからのお願いなら、フェルトは不承不承でも聞いてくれるだろうと、レイは提案する。
「うん、そうだね。ママに頼んでもらおう。」
「せっかく降りてくるんだし、ちょっとは羽目外さないとな。ニールだって、そう言うよ、キラさん。」
組織で働いて、休暇に降りてくるのだから、フェルトも遊ばないと、と、シンも頷く。まあ、ちょっとニールとゆっくりして、後は全開で遊べばいい。前回、降りてきた時に、一緒に遊んでいるから、人見知りされることもないだろう。
「とりあえず、降下の連絡が入ったら、ニールにも知らせてあげてください。きっと喜びます。」
「ママニャン、ここんとこ、せつニャンがいなくて寂しそうだからな。」
具合が悪いということはないが、ちょっと寂しそうにしているので、この連絡で、気分も変わるだろうと、八戒と悟浄も頷く。店は休みだから、存分に遊べばいいという年少組の意見には、ふたりも賛成だ。
ホームセンターまで洗剤やトイペの安売りを買出しに出かけた寺の女房は、なぜだか、トマトときゅうり、枝豆、なすの苗なんてものを買ってきた。そして、それを裏の庭の一角に植えて水をやっている。
「なあ、ママ、うちの家計は逼迫しているのか? 」
それをせっせと世話しているのの横に立ち、寺の亭主が尋ねる。一応、生活費として自分のカードを渡して買い物してもらっているのだが足りないと思われているからの緊急措置かと思ったからだ。カードだから残高はわからないはずだが、そういう心配をされているのなら無用だ。悟空の学費分は別に確保してあるし、本職の収入もあるから、それほど困窮しているわけではない。
「気をつけて。」
青いトリィーを、ちょこんと頭に停まらせた親猫が、手をにぎにぎと開いたり閉じたりする。それを刹那は、目にして、ちょっと残念そうに目を伏せて、それから、きっちりと強い瞳で見上げて、「いってくる。」 と、宣言した。
今回は、人革連の北西部から南西部への旅をする。普段は、警戒が厳重な地域だが、今は、無差別テロが大都市で引き起こされた余波で、そちらに警備が集中している。この時期なら、最深部にも侵入しやすいからと選ばれた。ラボから海中へ、そのまま出て行くから、格納庫まで見送った。そろそろ深夜枠の時間で、この時間なら人目もない。夜明けまでに最深部近くへ入りこむ予定だ。
挨拶すると、黒子猫は、トリィーを引き連れるようにして、エクシアのコクピットに飛び込んでハッチを締めた。これで、しばらくは、黒子猫とは逢えない。
「ママ、さっさと管制室に戻って来んかっっ。」
格納庫に、虎の声が響き渡る。海中への侵入経路まで、エクシアは自力で移動させる。そこまでは、管制室のモニターで追えるから、虎は戻れと怒鳴っている。親猫のインカムにではなく格納庫全域にスピーカーで怒鳴っているので、整備責任者のマードックにも聞こえて苦笑しているのが、親猫の視界にも入っている。
「はいはい、叫ばなくても聞こえてますって。」
インカムに叫んで、親猫も引き返す。今のところ、危ないことはしないだろうとは思うが、利かん坊の黒子猫だから、それも確定ではない。心配するぐらいしかできないが、それぐらいはさせてもらおうと親猫も思っている。
管制室に入ると、すでに通路はオープンさせて、注水槽には海水が溜まっている。ここへ飛び込めば、、そのまま海中へと発進できるようになっている。
「ちび、くれぐれも無茶はせんようにな。」
「わかっている。俺のおかんのことは頼む。」
いちいち頼まなくてもいい、と、内心でツッコミしつつ親猫も、虎の側に近寄る。そのモニターには、ヘルメットをした黒子猫が映っている。
「まかせろ。・・・・・発進オーケーだ、ちび、グッドラック。」
「エクシア、刹那・F・セイエイ発進する。」
海水へ滑りだしたエクシアは、そのままエンジン全開で海中へと進んで行く。そこまでで、モニターは切れた。後は、レーダーの光点のみが黒子猫の存在を知らせるものだ。それを、じっと見ていたが、やがて、それも消えた。レーダーにひっかからないように隠蔽皮膜を被ってしまうと、そこからは察知できなくなるのだ。
・・・・・いってらっしゃい、刹那・・・・・・
見送ってから呟いて、親猫は、しばらく何も映さないレーダーを眺めていた。一ヶ月ちょっと、黒子猫と過ごしていたから、今日から居ないとなると、なんだか、ぽっかり胸に穴が開いたような気がする。
「虎さん、今夜は泊まりですよね? 」
レーダーレンジの調整をしていた虎に、親猫は声をかける。とても眠れないので、付き合って貰うつもりだ。
「付き合ってやるから、ちょっと待ってろ。・・・・そうだ、ママ。なんか旨いツマミを用意してくれないか? 普段、お父さんに出してるような大人用のとこを。」
「え? あれ、日本酒用ですよ? 虎さん。」
「かまわん、今日は吟醸酒でいく。」
「了解、準備します。」
親猫は、そそくさとラボから別荘へと登って行った。どうせ眠れないからのお誘いだ。酒盛りはする。そして、虎は、トダカが、「うちの娘さん、料理上手で晩酌が豪華になるんだよ。」 と、自慢されていた料理でも味見させて貰うことにした。なかなか、虎は、寺へもトダカ家へも出向く暇がなくて、親猫ニールのおつまみを相伴したことがなかった。ラボ担当だから、ここのところ忙しくしているからだ。
そんな感じで刹那が出かけて、二週間ばかりすると、組織から暗号通信が届いた。ちょうど、特区でゴールデンウィークと呼ばれる時期に、フェルトが降りてくると連絡が入った。
「うぉっしゃあーーっっ。じゃあ、みんなで、フェルト歓迎で遊ぼうぜ。」
「ちょうどいいや。カガリんとこへ行く予定だったから一緒に行こう。」
「でも、それだとママがおいてけぼりになるよ? アスラン。」
ゴールデンウィークは、カガリも何日か休めるというので、あちらの別荘で遊ぼうということに決まっていた。もちろん、年少組だけが参加。大人組は不参加だ。ニールは三蔵とハイネと留守番というか、のんびり休暇の予定になっている。フェルトだけ連れ出したら、ニールが行かないなら行かない、と、フェルトは暴れそうだ。
「おまえら、仮にもホストだろ? そこいらを言いくるめて、こっちの都合で動いて貰うぐらいの技はないのかよ? 」
「じゃあ、悟浄さんやって。」
「やだね。こういうのは経験しないと身につかないだろ? 」
「ていうか、ママが連れて行けばよかったんだけどねー。」
ニールの身体は気圧変化に対応できないので、ヘリ程度の高度でしか移動できない。小型ジェットで一時間弱のオーヴだと、まあ間違いなく、その移動で体調が崩れるから行けないなんてことになっている。つまり、ニールは特区から出ることはできないのだ。
「こういう場合は、やはりニールから頼んでもらったほうがうまくいくのではないですか? キラさん。」
おかんのニールからのお願いなら、フェルトは不承不承でも聞いてくれるだろうと、レイは提案する。
「うん、そうだね。ママに頼んでもらおう。」
「せっかく降りてくるんだし、ちょっとは羽目外さないとな。ニールだって、そう言うよ、キラさん。」
組織で働いて、休暇に降りてくるのだから、フェルトも遊ばないと、と、シンも頷く。まあ、ちょっとニールとゆっくりして、後は全開で遊べばいい。前回、降りてきた時に、一緒に遊んでいるから、人見知りされることもないだろう。
「とりあえず、降下の連絡が入ったら、ニールにも知らせてあげてください。きっと喜びます。」
「ママニャン、ここんとこ、せつニャンがいなくて寂しそうだからな。」
具合が悪いということはないが、ちょっと寂しそうにしているので、この連絡で、気分も変わるだろうと、八戒と悟浄も頷く。店は休みだから、存分に遊べばいいという年少組の意見には、ふたりも賛成だ。
ホームセンターまで洗剤やトイペの安売りを買出しに出かけた寺の女房は、なぜだか、トマトときゅうり、枝豆、なすの苗なんてものを買ってきた。そして、それを裏の庭の一角に植えて水をやっている。
「なあ、ママ、うちの家計は逼迫しているのか? 」
それをせっせと世話しているのの横に立ち、寺の亭主が尋ねる。一応、生活費として自分のカードを渡して買い物してもらっているのだが足りないと思われているからの緊急措置かと思ったからだ。カードだから残高はわからないはずだが、そういう心配をされているのなら無用だ。悟空の学費分は別に確保してあるし、本職の収入もあるから、それほど困窮しているわけではない。
作品名:こらぼでほすと 一撃1 作家名:篠義