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うそつきのなまえ

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上忍が待機する場所と言えば「人生色々」。
休息も情報収集もできれば、バカ騒ぎにもうってつけの場所。
いつだって人があふれるその場所は、ときおり個室さえも相席することがある。
カカシとアスマが、下忍の指導をこの先どんな方向で進めようか、なんて話をするために来た今日、困ったことに「人生色々」は満席で。
店員に、「あらかじめ、呑んで騒がない方だったら相席しても構わないと伺っておりまして」と案内された個室には、頭っから爪先まで毛布に包まって眠る忍が二人いた。
相当に深い眠りなのだろう。
けれど、少しだけこちらが入室したときに感じた、探るような、眼をむけるような気配。
あれは記憶がある。
暗部特有の、眠りながらも話は聞いてるっていう技術だ。
身体は深く休息を取るために泥のようになっているのに、意識だけはつらつらと周囲の情報を認識する状態。
暗部に入って、かなり初期の段階で身に着けざるを得ない習得技術だ。
ちなみに、医療班の上層、常に手術室に詰めっぱなしな方々も身につけていたので元・暗部なのかと疑ったら。
”ばーろぃ、もともとは綱手姫が医療班に身につけさせた非人道的な技術を暗部が採用しぃやがっただけでぃ!”
と、50がらみのいいオジチャンが涙目で教えてくれました。合掌。
そんなこんなで、この二人、少なくともどちらか一方は暗部なんだろう。
ま、真昼間に休息を取らざるを得ないって言うのは、夜間活動が基本の暗部に多いしね。
身体のどこも出さずに寝るっていうのも、やっぱり暗部に多いし。
そんなこんなでも、気にせず食事して食後のお茶頼んで、ついでに団子なんかも頼んで、愛煙家は煙草なんかものんで。
あーでもこーでもそーでもない、と自分たちでも意外なくらいイイ先生みたいに真面目に話し合って。
それでも結局、イイ先生って経験少ないから、「やっぱイルカ先生みたいなアドバイザーが欲しいよね」と二人して溜息ついたころ。
噂をすれば影が差す、なんて感じで、引き戸が開いてイルカ先生が顔を出した。
「あ、すみませんお二人とも。ちょっと人を探してまして。でも違うみたいでした!」
あ、と声をかけるが早いか、イルカ先生はまた閉めて、足音も無く気配が走り去った。
人生色々にいるって聞いたのになあ、なんてぼやく声がなきゃ、気取れる忍は何人いるのか。
うーんさすが。チャクラさえあれば、と今でも言われるお人は素晴らしい身のこなしだ。
と、ここで初めて、部屋の隅で丸くなっていた毛布が蠢いた。
「・・・んー。しー、しー起きろよ・・・。起きないとオレ寝ちゃうぞ?」
「・・・・・・・・バカ言うな。イルカさんに怒られるだろうが。ていうか、万八?」
「・・・え?あ、そっか相部屋してたか。ごめん千三。」
起き上がった暗部二人はまだ若かった。
眠気がとれないのだろう、舌足らずな口調はどうしても幼さを感じさせるが、二人とも成人をしていくつか、という年に見える。
多分オレよりは若いけど、とカカシは結論づけた。
恐らく、この二人はプライベートでも仲がいいのかもしれない。
身上を絶対機密とする暗部としてはあるまじきだが、術の相性などでバディを組むことの多い者や、もともと血縁だったもの、暗部に引き入れた者同士なんかでは在りうる光景だ。
”しー、しー起きろよ・・・”
なんて、幼馴染を呼ぶような稚さに思わず相手が暗部という手練だと忘れ、覆面の下で頬を緩ませる。
寝起きに思わず出てしまった、プライベートでの呼び方なのだろう。
ごめんと謝るやりとりに、相部屋になっていたことを忘れていた自然さに、少しほっとした。
暗部には結構、同じ里でもいつ抜け忍になるかしれたことかと、警戒を解かない輩も多い。
得てしてそこまで気にする輩が抜け忍になったりするから世の中不思議だが、大抵そういう忍は他人がいると休めないのだ。
それが、相部屋していたことを忘れる程度には気を落ち着かせ緩ませていたなら、少しは身体も休めただろう。
なにしろ後から来たのはこっちなので、迷惑になることは避けたかったのだ。
「せめて忍鳥が使えりゃなあ。」
「止めよ、って言ったのお前じゃん?」
「仕方ねーって。」
二人は毛布を畳みながら苦笑する。
どうやら眠気は覚めたらしい。
千三と呼ばれた方は黒髪を背中まで伸ばした総髪、万八と呼ばれた方は見事に真っ白な髪を少し刈り上げ気味の短髪だった。
二人とも小気味いいくらい、すらりと身体を成長させた風情で、幾つなんだろうと気になってしまう。
「忍鳥が駄目ってのは、ぜんたい如何してなんだ?」
銜え煙草の熊、ことアスマが会話の不思議に思わず口を挟んだ。
くるり、と対称になるように首をこちらに向けた二人は、もう一度顔を回して互いを見る。
うち片方の千三が、苦笑して答えた。
「コイツ、相性がすこぶる悪いんです。突かれるか逃げられるか、が多くて。」
ああ、いるね、うんいる。うちの生徒にもいるよ。金髪のやたら元気なのが。
「それで誰かに呼びに来て貰うしかないのネ。」
ぽそりと声を落とせば、万八が憮然としている。
「誰かじゃなくてあの人しかオレたちを見つけられないの、いつも。」
「へ?だってさっき気付かなかったじゃない。」
「相部屋してると思わなかったんでしょう。」
「あんたたちだし。」
あ、そっか。たしかに、休息に来てたんなら余計に相部屋してるとは思いがたいだろう。
イルカ先生、それなりに顔馴染みだから挨拶もそこそこでいいやと出て行ったみたいだったし。
それにしても、千三くん、なんか睨んでない、万八くんを。暗部としては色々と喋りすぎってことかね?
「二人とも見たこと無いね、暗部やって長いの?」
「・・・・・」
「・・・・・ちょっとなら喋ってもいんじゃね?」
「・・・・・・・・・・・ちょっとだけだぞ。」
・・・ナニ、今の意味深長なやりとり。
なんか気になるから名前絶対忘れないようにしよう。千三、万八、うん、覚えた。
「たしか、あんたが暗部を辞めたころにオレが入ったって聞いてる。」
万八くんがオレを見て言う。へえ、ってことは顔を合わせたことは無いんだ?
「千三くんは?」
「あー・・・気がついたら解部にいたんで。記憶だと1歳とかから?絵本と術書を交互に読むのが一日の日課で。」
「仕事としてやり始めたの何時だって言ってたっけ?」
「報酬にお八つを貰い始めたのが4歳だったかその辺。金銭になったのが就学と同時で。」
「暗部にオレが誘ったのって10歳くらいだよな。口説き落とすの苦労したなー。」
アスマがあんぐりと口をあけて、煙草を落としかける。
オレも呆れて頬をかく。
え、ナニこの天才児たち・・・。なんか凄くない?ていうか、あれ?
―この二人って幼馴染かと予想してたんだけど、年どうなってるの?え?もしかして変化の術使ってる?
オレが暗部止めたのって、いつだったっけ。そんな最近でも昔でもないと思うんですけど。ビンゴブックに載ったの、暗部止めてからよ?
熊は熊だから気付いてないけど、結構、この子たち今も若いよ、十代だよ?
下手すると、ローティーンよ?アカデミーに通ってる歳か、もしくは・・・
うちの部下だよ??!
作品名:うそつきのなまえ 作家名:八十草子