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【腐:サクセラ】通じない

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「俺、堺さんのことが好きッス」
誰もいない、正確には俺と世良しかいないトレーニングルームでそう言われて俺は周囲を見回した。
誰もいない。
さっき自分でそう思ったくせにもう一度確かめる。
ベンチに座ったままの俺の前に立ちはだかるように存在する世良は、やや俯いて手が震えている。
笑いを。堪えているように見えないこともない、ような気がした。
「お前暇なのか?」
と問えば、世良が顔を上げる。
真っ赤な顔をして、さらに目元が赤くて口元が歪んでいて。
からかわれて怒ったときのような顔。
口を開いたら、何かまたいつも通り馬鹿なことを言いそうなものなのに。
何も言わないので。
「何の罰ゲームなんだ、それは」
と聞いてやった。
変な風に世良の顔が歪む。
笑いを堪えているような、泣きそうなのを堪えているような。
要は何かを我慢している。
いつもは調子いいことばかり口にするくせに、こんなときばかり噤んだままのそれ。
俺は手にしていたタオルで汗を拭いながら、このままじゃ体が冷えるな、と思う。
それでも今日は大分暖かい。
もう4月だもんな、と思ったら唐突に思い出した。
「なんだ、エイプリルフールか」
下らねえことやってんな、と付け足して立ち上がろうとしたら、立ったままの世良に両肩を手で押さえつけられた。
「違う、んス」
か細い声が頭の上から降ってくる。
「別に俺期待してるとかどうこうしたいとかそういうんじゃなくて・・・でもこう言っていること自体が堺さんに何か求めてるってとられても仕方ないっていうか」
もそもそと続く世良の言葉は曖昧でわかりづらい。
「お前は何が言いたいんだ」
眉間に皺を寄せつつ少し強めに声に出したら、肩に乗っていた世良の手が震えて指が皮膚に食い込んでくる。
痛くはない。
痛くはないが、意図が知れない。
「俺、は」
ばっと顔を上げた世良の目に涙が浮かんでた。
間抜けな俺はそのとき、世良は花粉症だったか、なんてことを思っていた。
同時に唇に柔らかい感触。
すぐに離れたそれが何かわからないほどには馬鹿じゃない。
「世良!」
立ち上がったところで全力で逃げの体勢に入っていたあいつに追いつくのはもちろん無理で。
俺は呆然としつつもこの一瞬で首筋に浮かんだ汗を拭った。
選手としては重い枷である年齢が、今の自分に落ち着きを与えていることはありがたいと思える程度には動揺していると。
自覚している自分をよそで感じながら混乱していた。

作品名:【腐:サクセラ】通じない 作家名:しの