From birthdays To Valentine!!
2月11日 「とある国の消失」
「信じたものは、都合のいい妄想と…」
「ギルベルトさん?」
月の綺麗な夜。
昼間、
「俺様、ヒマだから来てやったぜー!」
とか言いながらやってきたギルベルトさんとくつろいでいると、不意に彼が歌い出した。
「初音●クの消失ですか?」
「いや、たまにお前が口ずさんでるから覚えちまってな…」
そう言って銀髪をかきあげる。
その仕草もとてもサマになっていて…
――ずっと、憧れてたんですよ?
突然、日の当たる世界に連れ出された私。
日陰で生きてきた者にはそれは眩し過ぎた。
足掻いて、もがいて、追いかけた。
色々なモノを犠牲にしながら…
「なんかさぁ…ほんのワンフレーズなんだけど、自分を重ねちまうんだ」
自嘲的な笑みを浮かべ空を眺める彼。
「俺も、そうだったなぁって」
ギルベルトさんは「プロイセン」という国だ。
でも、今は「プロイセン」なんて国は地図にない。
すでに死んだ国なのだ。
「いっそ、この歌の奴みたいに消えて逝けたならいいのにな」
西と東が一緒になっても、彼は生きている。
こうして私と一緒に月を眺めている。
永遠の「消失」を待つだけの日々。
いつになったらこの複雑な感情と存在が消えるのか、
私には分からないけれど…そう遠くない未来であることは確かだ。
「…彼女は消えませんよ」
「え?」
「アンインストールごときで彼女が消えるはずありませんから
例え、本体が消えても、私たちの心には残るんです」
自分でも思うが妙に力の入った言い方だった。
「…その言葉は俺様に言ってくれたのか?」
「さぁ? それは知りません」
――素直になれば貴方はつけ上がるでしょう?
だから、こうでいいんです。
――貴方が消えるときくらいは、ホントの気持ち伝えますから。
作品名:From birthdays To Valentine!! 作家名:狼華