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【腐:サクセラ】理解できるところまで

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「少し黙れって」
「堺さんが聞いたくせに」
情けない声が出た。情けねえ声出してんな、といつもだったら怒られるような声。
だから俺はどこかで堺さんの怒っている声を身構えて待っていて。けれど。
「それは、悪かったよ」
と幾分柔らかい声が吹き込まれてきたので驚いた。
耳元で囁かれるその声がくすぐったくて少し逃げるように頭を動かせば、堺さんの顔もついてくる。
なんとなくその動きに勇気付けられて、俺は口を開いた。
堺さんの顔が見えなかったのもよかったのかもしれない。
「・・・俺、男ですけど」
「知ってる」
即答だった。
なんだか今更ながら自分と堺さんの状態に顔が熱くなってくる。
俺が堺さんと抱き合ってるっていうことの意味。
「・・・大丈夫、スか?」
聞きながら自分でも馬鹿なこと聞いてんな、と思う。
それでも俺は他に聞きようがない。
「大丈夫っつーか大丈夫じゃないっつーか」
そうしたら、堺さんからは曖昧なような困ったような。それでも感じの悪くはない声。
「どっちなんスか」
緊張した。さすがに気持ち悪いと今言われたら立ち直れないような気がして。
一瞬の間があった。
堺さんが、腕で自分の上半身を持ち上げて俺の顔を覗き込んでくる。
ごくりと喉が鳴ったような気がした。
「お前、俺が男しかダメなんだって聞いたら引く?」
「は?」
頭が真っ白になった。
「はあ・・・あの・・・」
ぶわっと汗が噴出す。顔というよりは背中に。
「あの・・・?」
さーっと血が下がって今度は全身にめぐるように心臓がバクバクした。
「あー俺もこれ以上説明したくねえから。嫌だったら抵抗しろってこと」
堺さんの言葉が一周回ってやっと俺でも理解できるところに落ちてきたような気がする。
そして、堺さんが凄いことを俺に言ってくれたんだってことに考えが追いついた。
うれしいと思った。単純に。だから。
「あのっ」
「・・・なんだよ」
「俺、堺さんが好きです」
勢いで言ってしまったら、堺さんは俺の顔を見て、苦々しい顔をした。
「・・・お前そういうことよく恥ずかしげもなく言えるよな」
「はあ」
その言葉に、少しだけ気持ちが消沈してしまう。
俺にそう言われることはやっぱり迷惑なんだろうかとか。
ぐだぐだした考えに陥りそうになったら堺さんの顔が近づいてきた。
「まいいや・・・世良」
「は・・・」
返事は堺さんの口の中に吸い込まれた。
「自分の言葉に責任持てよ」
少しだけ離れた唇の隙間から漏れた言葉に、俺は息が出来なくなるくらいで。
今すぐここから逃げ出したくなった。

end